2022.9.29
「水素混焼・アンモニア混焼」を3分解説!
水素やアンモニアを燃料として火力発電で利用する
エネルギーの注目キーワードを3分で理解!第26回のテーマは「水素混焼・アンモニア混焼」。発電部門における水素やアンモニアの利用に向けた取り組みはどのようなものなのか。最低限知っておきたい「水素混焼・アンモニア混焼」のポイントを解説します。
カーボンニュートラルに向けた水素・アンモニアへの期待
日本が2021年10月に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、カーボンニュートラルに向けて水素を新たな資源として位置付け、社会実装を加速させることが言及されました。
水素やアンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないという特性から、燃料としての利用が期待されています。
特に発電部門では、火力発電からのCO2排出量を実質ゼロにしていくため、天然ガスや石炭といった従来の燃料を水素やアンモニアへ置き換える方法を模索。日本を中心に実証事業や技術開発が進められています。
その具体的な活用方法が「混焼」です。一つの燃料だけを燃やす「専焼」に対し、混焼は複数の燃料を混ぜて燃焼させること。
ガス火力発電では天然ガスに水素を、石炭火力発電では石炭にアンモニアを混ぜ、既存の発電設備を利用して発電します。
エネルギー基本計画では、2030年までに、ガス火力発電への30%水素混焼や専焼、石炭火力発電への20%アンモニア混焼の導入・普及を目標として掲げており、2030年度の電源構成のうち水素・アンモニアを1%と位置付けました。
火力発電における水素混焼の現状
2021年6月に改訂版が発表された「グリーン成長戦略」では、発電部門における水素・アンモニアの成長戦略が定められました。
その中で水素は、2024年までに大型専焼発電の技術開発を行うとともに、2030年までに混焼・専焼を含めた水素発電の実機実証を行うとしています。
実証事業の例として、三菱重工業株式会社は、発電用大型ガスタービンの開発において30%の水素混焼試験を成功させているほか、米国のマクドノフ・アトキンソン発電所(天然ガス火力)での水素混焼実証にも参画。2022年6月に20%の水素混焼でも天然ガスと同水準の温度・排ガス、そして保守影響での安定的な燃焼を成功させました。
また、川崎重工業株式会社は2022年3月、発電出力5MW以上の大型ガスエンジンにおいて、水素を30%までの割合で天然ガスと混焼し、安定した運用を実現できる燃焼技術を開発したと発表。
同社は、同年8月から30MW級ガスタービンに搭載する水素30%混焼を可能とする燃焼器の販売を開始しています。
火力発電におけるアンモニア混焼の今
アンモニアの成長戦略では、より具体的な工程が示されました。
2024年までに石炭火力発電所の実際の発電機でのアンモニア20%混焼の実証を行い、2025年から30年代半ばにかけてアンモニア混焼に向けた設備改修、30年代中頃から20%混焼開始というものです。
既に日本では、小規模な試験炉においてアンモニアを20%混焼した場合の安定燃焼と、大気汚染物質であるNOx(窒素酸化物)排出量の抑制に成功しています。
2021年度からは株式会社JERAの碧南火力発電所(石炭火力)において、アンモニア20%混焼の実証事業が開始。より大規模となる同発電所4号機での20%混焼は、当初予定を1年前倒しして2023年度から実施される予定です。
日本政府は今後、アンモニア混焼の技術を、比較的新しい石炭火力発電所が多いアジア諸国へ展開していきたい考えです。
水素もアンモニアもいずれは専焼を目指して、まずは混焼に向けた技術の実証が進められています。
水素発電やアンモニア発電を実現するには、初期費用の削減に加えて、大量の水素やアンモニアの安定的な供給確保、市場の創出が不可欠です。
参考:
・経済産業省「第6次エネルギー基本計画」
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005-1.pdf
・三菱重工業「水素発電ハンドブック」
https://power.mhi.com/jp/catalogue/pdf/hydrogen_jp.pdf
・川崎重工業プレスリリース
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20220316_1.html
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20220802_1.html
・JERAプレスリリース
https://www.jera.co.jp/information/20220531_917
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