2023.7.6
「ヒートポンプ」を3分解説!
CO2削減にも貢献。熱を集めて必要な場所で利用する技術
エネルギーの注目キーワードを3分で理解!今回のテーマは「ヒートポンプ」。身近な家電製品でも利用されているヒートポンプに注目が集まっています。最低限知っておきたい「ヒートポンプ」のポイントを解説します。
熱を集めて運ぶヒートポンプ
ヒートポンプは、熱を発生させずに、元々ある熱を取り出し必要な場所に移動させる技術です。
熱には、高い温度から低い温度へ移動する法則があり、液体や気体は、圧力を上げれば温度が上がり、圧力を下げれば温度が下がるという性質があります。
この性質を利用したのがヒートポンプで、冷媒という物質を媒介にして熱を運んでいます。
ヒートポンプの歴史は、1850年ごろに製氷用冷凍機から始まり、冷蔵庫や冷房など主に冷熱用途として利用されてきました。
その後の技術開発によって、特に寒冷地での暖房や給湯、蒸気など加熱用途での普及も拡大しています。
現在、ヒートポンプはマイナス100℃から100℃程度の温度帯で利用することが可能です。
さまざまな場所で利用されるヒートポンプ
ヒートポンプは、家庭用だけでなく業務用の製品も展開されています。
身近な例は、家庭用空調(冷暖房)や冷蔵庫、家庭用ヒートポンプ式給湯器ですが、業務用空調をはじめ、冷凍・冷蔵倉庫、ショーケース、業務用給湯器、衣類乾燥機など、さまざまな製品でヒートポンプが利用されています。
また、ヒートポンプの仕組みは、化石燃料を燃焼させて熱を発生させるものではありません。
例えば、周囲の空気、地中に蓄えられた熱、近隣の水源や工場の排熱などの熱源から熱を取り込み、電気で冷媒を圧縮します。
-
出典:東京電力エナジーパートナー株式会社
日本で販売されている最新のヒートポンプエアコンの場合、1の電力(投入エネルギー)で7の熱エネルギーを得ることができます。
そのため、CO2排出量の削減という観点からも注目が集まっています。
さらに、ヒートポンプは、工場排熱や地下鉄・地下街の冷暖房排熱、外気温と温度差がある河川や海水、下水など、これまで利用されてこなかったエネルギー(未利用エネルギー)を活用する技術の一つとしても期待されています。
気候変動対策とエネルギー安全保障の観点からの期待
ヒートポンプは、暖房分野の脱炭素化に向けた中心的な技術として注目されると同時に、化石燃料価格の高騰による影響を軽減するという観点からも重要な手段として位置付けられています。
世界の天然ガス需要のうち、建物の暖房用途は6分の1、特にEU(欧州連合)では同用途が天然ガス需要の3分の1を占めます。
そのような中、EUでは気候変動対策とロシアからの化石燃料輸入削減の取り組みとして、建物におけるヒートポンプの現在の普及率を倍増すること、また、2027年までに少なくとも追加的に1000万台のヒートポンプを導入する目標を掲げています。
国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、APS(※)では、世界のヒートポンプの容量は2021年の1000GWから2030年には約2600GWに急増し、建物の暖房需要全体に占める割合は現在の10分の1から5分の1近くまで拡大すると見込んでいます。
世界から期待が寄せられるヒートポンプ。普及拡大には、初期投資の補助や製造能力の拡充、熟練労働者の確保といった課題に取り組むことも必要です。
※Announced Pledges Scenario、各国政府が表明した長期的な目標が予定どおりかつ完全に達成されることを想定したシナリオ。
参考:
・一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター『ヒートポンプ・蓄熱システムを学ぼう』
https://www.hptcj.or.jp/study/tabid/102/Default.aspx
・International Energy Agency, “The Future of Heat Pumps”
https://www.iea.org/reports/the-future-of-heat-pumps
-
この記事が気に入ったら
いいね!しよう -
Twitterでフォローしよう
Follow @emira_edit
photo:photoAC