2024.1.9
CO2に価値が付く?「カーボンプライシング」を3分解説!
CO2排出量の削減を促す一手。CO2排出に価格を付ける政策手法
エネルギーの注目キーワードを3分で理解!今回のテーマは「カーボンプライシング」。GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けて日本でもカーボンプライシング制度の導入が決定されましたが、カーボンプライシングとはそもそもどのようなものなのか。最低限知っておきたい「カーボンプライシング」のポイントを解説します。
CO2に価格を付けて排出削減を促す政策手法
カーボンプライシング(carbon pricing)は、CO2排出に価格を付け、排出者に排出削減を促す(行動を変容させる)政策手法です。
政府によるカーボンプライシングの他、「インターナル・カーボンプライシング」(企業が自主的に自社のCO2に対して価格を付け、投資判断などに活用)や、「クレジット取引」(CO2排出削減の価値を証書化し取引を行う)などがあります。
また、政府によるカーボンプライシングは、「明示的カーボンプライシング」(CO2排出量に応じて価格を付ける政策)と「暗示的カーボンプライシング」(CO2排出量削減を促す効果のある政策)に分類されます。
世界銀行の報告書での定義によると、炭素税や排出量取引制度は明示的カーボンプライシングに、エネルギー税や補助金などは暗示的カーボンプライシングに分けられます。
CO2排出に課税する炭素税
2023年には、世界の温室効果ガス排出量の約23%が炭素税や排出量取引の対象となっています。
炭素税(carbon tax)は、CO2排出に対して課税を行う制度です。欧州諸国を中心に、1990年代から導入が始まりました。
地域や国によって制度はさまざまですが、欧州諸国では財源調達や所得再配分、経済安定化といった機能を実現するために導入されており、税収は政府の政策課題に充当されています。
日本では、2012年から地球温暖化対策税が導入され、石油や天然ガス、石炭といった全ての化石燃料の利用に対して、CO2排出量に応じて課税されています。
国によって炭素税の水準や制度の仕組みはさまざまですが、各国で多様な優遇措置や特例措置、免税措置が採用されています。
なお、炭素税は一般的に適切な税率の設定や排出削減総量の担保が容易でないという課題もあります。
排出上限を設定して市場を通じて排出権を取引するETS
排出量取引制度(Emissions Trading System: ETS)は、対象となる排出源の排出上限をあらかじめ設定し、排出する権利を有償または無償で排出源に割り当て、市場を通じて取引する制度です。
2002年に英国が産業部門を対象とした制度を導入し、2005年にはEU加盟国と近隣国を含むEU排出量取引制度(EU ETS)が開始されました。
アジアにおいても、韓国で産業部門を対象とした制度が2015年に、中国で電力部門を対象とした全国規模の制度が2021年から開始されています(2017年に制度樹立を宣言)。
なお、各国・地域のETSでは、製造業や電力といった産業・エネルギー転換部門に限定された制度となっており、国際的な競争にさらされている部門には負担軽減措置(無償割当など)が導入されています。
このようにETSは排出上限を設定するため、排出削減量を担保できるというメリットがある一方で、適切な割当量および規制対象者への公平な割当分配が難しいのが特徴で、排出権が市場で取引される場合、価格が乱高下するという課題もあります。
参考:
・World Bank (2023) “State and Trends of Carbon Pricing 2023”
https://openknowledge.worldbank.org/entities/publication/58f2a409-9bb7-4ee6-899d-be47835c838f
・環境省「カーボンプライシング」
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cp/index.html
・日本エネルギー経済研究所「温室効果ガス排出削減のためのカーボンプライシング等の政策手法に関する調査」(令和2年3月31日)
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000066.pdf
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