2024.4.17
次世代の電力供給方法!「スマートグリッド」を3分解説!
情報通信技術を活用した、電力を双方向で制御・最適化する電力網
エネルギーの注目キーワードを3分で理解!今回のテーマは「スマートグリッド」。情報通信技術と電力を組み合わせた次世代の電力供給はどのようなものなのか。最低限知っておきたい「スマートグリッド」のポイントを解説します。
ICTを活用した次世代の電力網
スマートグリッド(Smart Grid)を直訳すると「賢い電力網」となり、日本では「次世代送配電網」を指します。
これは、情報通信技術(ICT)を活用して、あらゆる電源からの電力の流れを供給側、需要側が相互に連携して監視・制御し最適化する電力網のことです。
あらゆる電源には、従来の大規模集中型の発電設備だけでなく、再生可能エネルギーや蓄電池、電気自動車のような分散型エネルギーリソースも含まれます。
従来の電力網は、大規模集中型の発電所から需要家に向けて電気を送るという流れが一般的でした。
しかし、再生可能エネルギーの大量導入により電源の分散化が進み、分散電源から需要家や電圧の高い系統へ電気を送る流れへ変化するとともに、供給力が季節や時間帯によって大きく変動するようになってきています。
そのため、電源だけでなく需要についても最適化に向けた取り組みとして、供給側と需要側が相互に連携して電気の流れを制御する電力網の重要性が高まっています。
米国で注力されるスマートグリッド
スマートグリッドという言葉の定義は幅広いものですが、注目されるようになったのは2000年代に入ってからです。
特に米国では、当時、送電設備への投資額が減少傾向にあり、送配電網の増強や信頼性の向上が課題として認識されていました。
そうした中、2003年7月には、スマートグリッドに関する最初の報告書と言える「Grid 2030」が発表され、将来の電力需要に応じるため、老朽化し混雑した送配電網の近代化に向けた方策が示されました。
また、2003年8月には、約5000万人が影響を受けた、北米大停電(米国北東部およびカナダ五大湖周辺での広域的な供給支障)が発生します。
さらに、2007年12月にエネルギー自立・安全保障法が成立し、スマートグリッドが独立した項目として位置付けられました。
オバマ政権下(当時)でもスマートグリッドへの投資補助プログラムが実施され、スマートメーターの設置に重点が置かれました。
バイデン政権下では、超党派インフラ法に電力網の近代化に対する投資が盛り込まれ、2022年1月には米国エネルギー省が電力網建設に関するイニシアチブ(Building a Better Grid Initiative)を発足しました。
電力の使用量を“見える化”する「スマートメーター」
スマートグリッドに不可欠な技術が、「スマートメーター」です。
日本では2014年度からスマートメーターの導入が始まり、工場やオフィスで使用される高圧用のスマートメーターは2016年度に導入を完了しました。
家庭などで使用される低圧用のスマートメーターは、2024年度末までに導入を完了する予定です。
スマートメーターは、家庭や工場などの電力使用量を毎日30分ごとに計測し、通信機能を利用してリアルタイムに電力会社へ送信します。
これによって電気の使用量が「見える化」され、家庭などでより効果的な省エネルギーの取り組みを行うことが可能になりました。
現在日本で導入されているスマートメーターは第一世代と呼ばれ、検定有効期間が10年とされています。
2025年度から新たなメーターへの順次交換が開始されることを受け、経済産業省は2022年5月に次世代スマートメーターの標準機能を取りまとめました。
また、スマートメーターが収集した膨大な電力データを、一定のルールの下で事業者に有償提供するサービスが2023年10月から開始されました。
データを用いた新たな研究やサービスの展開も期待されます。
参考:
・栗原郁夫「スマートグリッドの現状と今後の展望」『日本原子力学会誌』Vol. 54, No. 11(2012)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjb/54/11/54_732/_pdf
・高山丈二「スマートグリッドの導入に向けた動きと我が国の課題」『レファレンス』2010年12月
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3050315_po_071902.pdf?contentNo=1
・経済産業省資源エネルギー庁「次世代スマートメーター制度検討会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/index.html
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