2024.8.7
ガスの脱炭素化に貢献!「メタネーション」を3分解説!
ガスの脱炭素化に向けて、水素と二酸化炭素からメタンを合成する技術
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 今回のテーマは「メタネーション」。ガスの脱炭素化の方法の一つとして注目される技術とはどのようなものなのか? 最低限知っておきたい「メタネーション」のポイントを解説します。
水素と二酸化炭素からメタンを合成
メタネーションとは、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)から都市ガス原料の主成分であるメタン(CH4)を合成する技術のことです。メタネーションによって製造されたメタンを、合成メタンやカーボンニュートラルメタンと呼びます。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、電力の脱炭素化だけでなく、ガスの脱炭素化も重要な取り組みです。
日本の最終エネルギー消費の約7割は熱などによるものです。現在、産業部門(工場など)における蒸気加熱から、民生部門(家庭や業務)における給湯や暖房といったさまざまな温度帯の熱需要を満たしているのは天然ガスです。天然ガスは他の化石燃料と比べてCO2排出量が少ないといった特徴がありますが、カーボンニュートラルに向けてガス自体の脱炭素化の方法として注目されているのが、メタネーション技術です。
既存インフラを有効活用
合成メタンは、十分に低炭素化された水素と発電所や工場などから分離回収されたCO2を合成して製造(メタネーション)したもので、水素利用の一形態です。
合成メタンは従来の天然ガスを代替しますが、利用する際に燃焼によってCO2を排出します。しかし、合成メタンの燃焼時に排出されるCO2は、製造時に用いられる分離回収されたCO2と相殺され、天然ガスの消費を合成メタンが代替することでCO2の削減効果を得ることとなります。
わざわざ手間と費用をかけて水素にCO2を結合してメタンを製造するメリットの一つとして、既存の都市ガスインフラをそのまま利用できることが挙げられます。
都市ガスの主原料である天然ガスの主成分はメタンであるため、合成メタンはその特性から既存のインフラ(LNG船やLNG受入設備、都市ガス導管、ガス消費機器など)をそのまま使うことができます。
水素の場合は新たに輸入設備やパイプライン、消費機器を整備しなければなりませんが、このコストは非常に大きくなります。合成メタンは、このコストを回避できるのです。
第6次エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)では、既存インフラへ合成メタンを2030年に1%注入(年間28万トン)、2050年に90%注入(年間2500万トン)してガスの脱炭素化を目指すと掲げられています。
コスト低減・高効率化に向けた技術開発
日本では、「メタネーション推進官民協議会」の下で合成メタン導入促進に向けた議論が行われ、大手ガス会社を中心に、国内でのメタネーションの実証プロジェクトや、海外でのメタネーション・輸入プロジェクトが計画されています。
メタネーションの課題の一つはコストです。メタネーションは、水素製造に加えてCO2分離回収とメタン合成のプロセスをともなうことから、その製造コストは水素より高くなります。
現在、原料となる水素製造コストの低減に向けた技術開発や、CO2回収技術の研究開発、合成メタンの大量生産技術の実証やメタネーションの高効率化の研究が進められています。
また、合成メタンを利用する際のCO2排出量の取り扱い方(CO2の帰属をどうするか)について、現時点では明確なルールが存在していません。
国内では経済産業省や環境省で議論が行われるとともに、民間企業が中心となり国際的なルールの整備や合成メタンの普及に向けた国際団体が設立されることとなりました。
メタネーションは、カーボンニュートラルの実現に向けた技術として、引き続き注目されます。
参考:
・柴田善朗、大槻貴司「カーボンリサイクル燃料の炭素源に関する試論 (1) -CO2再排出等のメタネーションに関わる誤解の解消と長期的視点-」日本エネルギー経済研究所(2021年4月)
https://eneken.ieej.or.jp/data/9535.pdf
・経済産業省「メタネーション推進官民協議会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/methanation_suishin/index.html
・経済産業省資源エネルギー庁「ガスのカーボンニュートラル化を実現する『メタネーション』技術」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/methanation.html
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