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既存の石油製品を代替。「合成燃料(e-fuel)」を3分解説!

CO₂とH₂から製造する石油製品の代替燃料

エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 今回のテーマは「合成燃料(e-fuel)」。運輸部門の脱炭素化に向けて商用化が期待される代替燃料とは、どのようなものか。最低限知っておきたい「合成燃料(e-fuel)」のポイントを解説します。

二酸化炭素と水素から製造する燃料

合成燃料は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を合成して製造する燃料のことです。炭化水素化合物の集合体で、ガソリンやジェット燃料、軽油といった既存の石油製品を代替できる燃料です。

合成燃料は、発電所や工場などから分離・回収されたCO2や大気中のCO2と、脱炭素化された水素を原料として製造されます。水素は化石燃料から取り出すこともできますが、化石燃料を分解して水素を取り出し、再び炭化水素を合成するのはエネルギーと経済性の両面で非効率であることから、再生可能エネルギー電力の水分解で製造するグリーン水素を使うことが一般的です。

このように、合成燃料は製造から使用までを見たときに、大気中のCO2を増やすことがない燃料といえます。

エネルギー密度が高く、既存インフラを活用できる

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、さまざまな部門で脱炭素化の取り組みが進められていますが、合成燃料は特に運輸部門、中でも電動化などが難しいとされる大型トラックや飛行機、船舶向けの代替燃料としても注目されています。合成燃料は、常温時に液体であり、体積当たりのエネルギー密度が高く、取り扱いが容易という特徴があるからです。

一方、電池や水素は体積当たりのエネルギー密度が低いため、仮に重い車両や機体で長距離を移動する重量車や飛行機で利用する場合には、同じ距離を移動する際、液体燃料よりも大きな容量の電池や水素が必要となります。

合成燃料は、既存のガソリンや軽油の代わりに従来の内燃機関自動車に使用することや、タンクローリーやガソリンスタンドなどの既存インフラを利用することも可能です。

例えば、水素の場合は新たに輸入設備やパイプライン、消費機器を整備しなければならず、そのコストは非常に大きくなります。その点で合成燃料は、特に脱炭素化に向けた移行期において、市場へ円滑に導入できると期待されています。

課題はコストの低減

合成燃料の課題として、製造コストが挙げられます。合成燃料の製造コストは、約300円~700円/Lと化石燃料と比べると高いのが現状です(2024年12月2日時点のレギュラーガソリン小売価格(全国平均)は175.4円/L)。製造コスト低減には、製造効率の向上、水素製造コストやCO2分離・回収コストの低減が重要となります。

日本は、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月)で合成燃料の2040年までの商用化を目標に掲げ、グリーンイノベーション基金(GI基金)などを通じて、高効率かつ大規模な製造プロセスを確立するための技術開発を進めてきました。GI基金を受けた事業として、2024年9月にはENEOS株式会社による合成燃料製造実証プラントが完成し、実証運転を開始しています。

さらに、2023年6月には「合成燃料の商用化に向けたロードマップ」が改定され、2025年に合成燃料の製造を開始し2030年前半までの商用化を目指すとしています。商用化に向けて、政府はビジネスモデル構築の在り方や必要な環境整備について検討し、今後、具体的な導入目標や導入ロードマップが提示される予定です。まずは、合成燃料の初期需要をどのように開拓するかが注目されます。

参考:
・資源エネルギー庁「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会 2023年中間とりまとめ」(2023年6月30日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/e_fuel/pdf/2023_chukan_torimatome.pdf
・エネルギー・金属鉱物資源機構「カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは?そのメリットから製造方法まで解説!」
https://www.jogmec.go.jp/publish/plus_vol06.html

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