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カーボンニュートラルの達成に不可欠な技術。「CCS」を3分解説!

CO₂を分離回収し、地中深くに貯留することで大気への放出を防ぐ技術

エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 今回のテーマは「CCS」。脱炭素化が難しい分野での活用が期待されるCCSとは、どのようなものか。最低限知っておきたい「CCS」のポイントを解説します。

脱炭素化が困難な分野への導入の期待

「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」は、工場や発電所からCO2を分離回収し、地中深くに貯留することで大気への放出を防ぐ技術です。

例えば製鉄やセメント、化学、石油精製など脱炭素化が難しい分野において、化石燃料や原料を使用しつつも脱炭素化を進める手段として、CCSの導入が期待されています。

日本では、「GX推進戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)」(2023年7月閣議決定)において2030年までのCCS事業開始に向けた事業環境を整備することを掲げ、「第7次エネルギー基本計画」(2025年2月閣議決定)でも同様の内容が確認されました。

また、2023年3月に策定された「CCS長期ロードマップ」では、2050年時点のCO2の年間貯留量を1.2~2.4億トンとする目標が掲げられ(※)、事業環境の整備に向けて2024年5月に「CCS事業法」が成立しています。

※先進的CCS事業を支援し、2030年までに年間貯留量600~1,200万トンの確保にめどをつけることを目指すとしています。

事業化に向けた基礎となる法律(CCS事業法)

CCS事業法(二酸化炭素の貯留事業に関する法律)は、CCSを事業として安全かつ適正に運営するための基礎となる法律です。日本初となる北海道苫小牧市でのCCS大規模実証試験事業の成果を基に、同法では「試掘・貯留事業」と「CO2導管輸送事業」について規制が定められました。

試掘・貯留事業は許可制となり、許可を受けた事業者に試掘権や貯留権が設定されます。貯留事業者には貯留層の温度や圧力などのモニタリングが義務付けられるとともに、モニタリングに必要となる費用の積み立ても義務付けられました。CO2が安定した後は独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下、JOGMEC)に管理業務を移管することが可能です。貯留業者には、移管後の必要資金として拠出金の納付が義務付けられます。

また、導管輸送事業は届出制となりました。導管輸送事業は、自然独占が発生することを想定して、正当な理由なくCO2排出者からの輸送依頼を拒むことや、特定のCO2排出者を差別的に取り扱うことが禁止されるとともに、料金等の届出義務が課されています。

事業化への課題と2030年に向けた動き

CCS事業法がゼロから作り上げられたことは、CCSの事業化に向けて大きな一歩となりました。

しかし、まだ課題も残ります。まず、実際にCCSを事業として成り立たせるビジネスモデルが十分確立していません。事業者の初期投資の回収、CO2の回収や貯留を行う操業費の安定的な確保ができるような仕組みが必要となります。

また、回収コストや輸送コストの低減、そのための最適な技術開発、国内での貯留適地の確保、そして、CCSに対する国民の理解促進や人材育成が今後求められます。

現在、日本では「先進的CCS事業」として国内貯留5件、海外貯留4件を選定し、JOGMECが2023年度より支援を開始しました(※)。これらの事業は2026年度までに事業者による最終投資決定を予定しており、これらを通じて2030年までの年間貯留量確保を目指しています。

※JOGMECが令和6年度に選定した「先進的CCS事業」
https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240628011/20240628011.html

さらに、日本にとって海外のCO2貯留有望地を活用することは、非常に重要な選択肢となります。特にアジア大洋州地域では、マレーシアやインドネシア、豪州などにおいて日本企業がCCSの共同調査や事業化に向けた検討を行っているところで、今後は国内・海外でのCCS事業化に向けた支援措置の具体化が注目されます。

参考:
・小林良和「新たなCCS事業法制の意義」日本エネルギー経済研究所ポッドキャスト
https://creators.spotify.com/pod/show/ieej-jp/episodes/CCS-e2idg07
・経済産業省「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)について(概要)」2024年8月
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/carbon_dioxide/pdf/001_03_00.pdf
・経済産業省「CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ」2023年3月
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/ccs_choki_roadmap/pdf/20230310_1.pdf
・JOGMEC「先進的CCS支援事業の概要」
https://www.jogmec.go.jp/ccs/advancedsupport_002.html

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