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2024.10.7
楽しい瞬間とエネルギー! EMIRAビジコン2025テーマ「エンタメ×エネルギー」に込められた期待
エンタメを通して、エネルギーをドキドキワクワクしながら楽しく考えたい!
「EMIRA」と「早稲田大学パワー・エネルギー・プロフェッショナル育成プログラム(PEP)」のタッグにより、学生コンテスト「EMIRAビジコン2025エネルギー・インカレ」が開催される。第6回となる今回のテーマは「エンタメ×エネルギー」。どんなビジネスアイデアが求められているのか、テーマ設定に関わったPEPプログラムコーディネーターの林 泰弘教授に聞いた。
未踏の領域に踏み込んだ、挑戦的なテーマ
省エネ、節電、脱化石燃料──。
エネルギーに関する話題は、堅くて生真面目になりがち。研究者の発想も常に堅く、「柔」「楽」「笑」からどうしても遠ざかってしまう。そうした観点から、今回のテーマ「エンタメ×エネルギー」について林教授は「私たちにとっては未踏の領域」と話す。
「理工系の研究は再生可能エネルギー(以下、再エネ)で発電した電力を上手に蓄電し、いかにして効率よく活用するかなど、真面目な内容になりがちです。これまでになかった発想からエネルギーを生み出したり、エネルギーを身近に考えたり、有効活用できる研究はできないものか。それには柔軟な発想が必要ですし、そこにドキドキワクワクする瞬間や笑いがあってもよいはずです。心躍るようなエネルギーの活用、楽しみの中で生まれるエネルギーのような、今までにない発想を若い人たちから聞いてみたいとずっと考えてきました。今回のテーマは、そんな未踏の領域であり、私たちにとっては挑戦なのです」
このテーマでビジネスアイデアを練るには「エンタメ(エンターテインメント)」の定義についても広く捉え、柔軟に考えることが望まれる。
「エンタメというと映画や漫画、音楽、ゲーム、舞台などを発想すると思います。しかし、今回はそうした枠を飛び越えて『人々が楽しいと感じる瞬間』『家族の小さな楽しみ』など、身近な物事でもよいのです。
例えば、私が最近楽しいと感じた瞬間は、歌舞伎俳優の中村獅童さんとボーカロイドの初音ミクが共演した歌舞伎のコラボレーションを鑑賞したときでした。ペンライトを持って熱狂する観客たちの中で、私の隣席者は涙ぐみ、私もすごく興奮しました。同時に『この熱狂や感動をエネルギーとつなげられないか?』とも考えました。今回のテーマは、そんな体験が原点になっています」
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コンサート、舞台、スポーツ競技など会場で観客が生み出す「熱狂」をエネルギーに変換、蓄えることができたなら? そうした着想からのアイデアも今回求められている
(C)OrangeBook / PIXTA(ピクスタ)
エネルギーには「つくる」「使う」「ためる」の3要素がある。そして、エンタメは人が集まる場でもある。人が集まる場はエネルギーを使う場であるが、つくる場、ためる場であってもよい。そんな「エンタメ×エネルギー」を考えることはできないか──。難しいテーマではあるものの、自由な発想が許された、コンテストそのものを楽しむ機会でもある。
林教授は「今回、企画立案で最も難しいのは、マネタイズかもしれません」と考え、これまでのビジコンとは異なる発想で考えることを強く推奨する。
「企画やイベント自体で収益を得られなくても問題ありません。例えば、その理念に共感した企業がスポンサーになるという考え方でもよいでしょう。または、クラウドファンディングを取り入れた企画も考えられます。今回、私たちが求めているのは、従来のエネルギービジネスにはなかった発想、着眼点です」
楽しみながら、自然に人の熱量とエネルギーを結びつけたい
近年、エンタメは「推し」「沼る」という言葉が重要なキーワードになっている。そうした人間のエンタメに魅了される、ハマる感情を上手に活用したビジネスも考えられる。林教授は、既存の活用例として携帯ゲームアプリ「PicTrée(ピクトレ)~ぼくとわたしの電柱合戦~」のようなものが「発想のヒントになるのではないでしょうか」と話す。
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『PicTrée(ピクトレ)~ぼくとわたしの電柱合戦~」は「V(ボルト)」「A(アンペア)」「W(ワット)」の3チームに分かれ、チームの仲間と協力して電力アセットを撮影、電線をつないだ長さを競う
(C)Copyright 2024 Greenway Grid Global. All Rights Reserved. (C)2024 Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.
「プレーヤーが現実の世界の街中で、電柱やマンホールなど電力アセットを撮影し、その電力アセット同士をつないだ長さを競うゲームですが、プレーヤーが楽しみながら撮影したものが、結果的に電力ネットワーク側の業務に役立つわけですよね。撮影された写真から『この電柱が壊れている、ヒビが入っている』という状態が見つかれば、修復の必要があると分かります。電力会社のメンテナンス業務に大いに役立っていると思います。このように、自分の推しや沼ったものを収集するドキドキワクワク感を利用したアイデアはとても面白いと思います」
また、林教授は「“お笑い×エネルギー”で何かアイデアが出てくるとうれしい」と話す。そのヒントとして考えられるのが「エネルギーハーベスティング(環境発電)」だ。エネルギーハーベスティングとは、身の回りにある熱や振動など、さまざまな形態で環境中に存在するエネルギーを電力に変換する技術である。
「エネルギーハーベスティングは早稲田大学でも研究されています。今の段階では本当に突飛な発想なのですが、この技術を使って笑いから得られる振動で発電する装置があれば、楽しい瞬間がエネルギーに変換されるので、やらされているという感覚もなく、つらいと思うこともないですよね。振動がエネルギーに変換される椅子に座り、ただ笑っているだけでスマホが充電されるアイデアなどが考えられるでしょう。そこから得られるエネルギーはわずかかもしれません。でも、人の自然な行動がエネルギーに転換される、これも今回のテーマのヒントの一つにはなると思います」
振動で得られるエネルギーは笑いに限らない。例えば、踏む力でもよい。
「2006年と2008年にJR東日本が、乗客が改札通路を歩行する際に生じる振動を利用した床発電システムの実証実験を行った事例があり、同様の技術を活用したハウスメーカーもあります。今回のテーマであれば、こうした技術を活用したフロアを作り、ダンスフェスティバルやスポーツイベントを開催するアイデアもあると思います」
理工系はもちろん、人文社会学系の学生の参加も期待
エンタメには「動」のエンタメもあれば「静」のエンタメもある。
例えば、アートや創作の世界でエネルギーを活用するアイデアがあってもよい。エネルギーの見える化を図り、アートによるアイコンの作成、またはアートによる「擬人化」も面白い。
エネルギーの見える化は、これまでもゲームや漫画の中で見られてきた。例えば、格闘ゲームやRPGでは体力、攻撃力などプレーヤー能力の数値化が該当する。また、漫画でも「ドラゴンボール」ではキャラクターの戦闘力を数値化し、瞬時に測定・表示する「スカウター」が登場する。これらは仮想のエネルギーではあるものの、アートや創作によって現実の世界にエネルギーの新概念をひもづける発想が生まれる可能性もある。
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格闘ゲームにおける「HP」などは、そのキャラクターが蓄えている体力=エネルギーをアイコン化したもの。この着想をエンタメ×エネルギーのアイデアに生かせる可能性もある
(C)しごとの / PIXTA(ピクスタ)
「再エネを種類ごとに擬人化するのも面白いですね。太陽光、風力、地熱などを推しのアイドルとして具現化することで、再エネへの新たな興味・関心が掘り起こされるかもしれません。さらに、仮想空間で擬人化したアイコンが現実の世界の発電量に応じて成長し、姿や形が変わる『再エネ育成シミュレーション』のような発想も考えられます。そのアイコンを教育コンテンツに活用するなどビジネスへの応用もいろいろ考えられるはずです。『省エネを学ぶ』イベントもこのようなアイデアでドキドキワクワクしながら学べたら、子どもたちも興味を持ってくれるのではないでしょうか」
そもそもエンタメは幅が広く、パーソナルな楽しい瞬間も含めたらその領域は際限なく広がる。また、アイデアはエネルギーに直接関係するものでなく、前述のような教育やリサイクルによる省エネなど、間接的に関係するものでもよく、自由な発想が受け入れられる。
「分野やジャンルを問わず、自由な発想が求められていますので、どんなアイデアが飛び出してくるか全く想像できません。そのため、理工系学生だけでなく、人文社会学系の学生の参加を大いに期待しています。アートや創作は文系の学生が得意とする分野だと思いますので、人文社会学系の学生が考えた企画を、理工系学生が技術面でフォローするようなチームでの参加が理想かもしれません」
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「エンタメには、漫画やアニメ、ゲームなど大学生の同人・サークル活動をきっかけにプロデビュー、ビジネス化された例も多くあり、今回はサークルでの参加もありだと思います」(林教授)
これまでのビジコンの中でも、より柔軟な発想が求められる「EMIRAビジコン2025」。
どんなとっぴなビジネスアイデアが届くか、とても楽しみだ。
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text:EMIRA編集部 photo:渡邉明音
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