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スポーツマネジメントの極意

DeNAのA.ラミレス監督が考える理想のチームを作る方法

横浜DeNAベイスターズ監督 アレックス・ラミレス【前編】

トップアスリートを率いる監督やコーチなどから、チームの能力・エネルギーを最大限に引き出すマネジメントの方法論を学ぶ新連載。記念すべき第1回は、横浜DeNAベイスターズを就任3年目にして優勝候補へと躍進させたアレックス・ラミレス監督。選手時代の明るいキャラクターから一転、奇抜とも言える作戦を実行しながらも、その采配は実にロジカルで、早くも名将と呼ばれるほどの結果を示している。弱小から強い球団に導いた、ラミレス流のチームマネジメント術に迫った。

名選手から名監督へ――ラミレス監督の快進撃が始まった

2018年シーズンのプロ野球が開幕して数週間。連日さまざまな関連ニュースが取りざたされており、日本での野球人気の高さを改めて実感させられる日々だ。そんな中、野球ファンや球界外からも注目されている人物がいる。2016年から横浜DeNAベイスターズ(以降、DeNA)を率いるアレックス・ラミレス監督だ。

現役時代は日本プロ野球(NPB)で13年間プレーし、通算打率.301、通算380本塁打、1272打点を記録。タイトルでも首位打者1回、本塁打王2回、打点王4回を獲得し、さらに8年連続100打点達成の日本記録も保持するなど、長年にわたってハイレベルな活躍を続け、球史に残る選手としても知られている。

そのラミレス監督は就任して最初のシーズンに、前年最下位だったDeNAを3位にまで押し上げるなど、いきなりその手腕を発揮。翌2017年は同じく3位と好成績を残し、クライマックスシリーズでは同2位の阪神タイガース、セ・リーグを2連覇した広島東洋カープを破り、日本シリーズにも進出した。

就任1年目、2年目と結果を残し、いよいよ勝負となる3年目の2018年。ふたを開けてみると、17年ぶりとなる8連勝をマークするなど開幕早々から快進撃。開幕前の順位予想でもDeNAを優勝候補に挙げるプロ野球解説者もおり、さらなる躍進が期待されている。

2017年シーズンに実行した「8番投手」に代表されるように、一見奇策に見える作戦をとることでも話題になるラミレス監督。反発や批判が容易に予想される作戦をとりながらも、結果は残す。チームを勝たせるためのエネルギーコントロールができているからこそ、結果がついてきているということだろう。それは2016年の監督就任以前から、チームの課題が明確に見えていたことから始まっていた。

監督として最初にしたことはレギュラー選手を確立すること

就任以前、それまで毎年のように最下位争いをしていたDeNAを、なぜ1年目から3位に押し上げることができたのだろうか。チームを立て直すために、ラミレス監督が就任時にまず手を付けたのはチームの軸となる選手を見極めることだった。

「私は選手として横浜DeNAベイスターズでプレーしていたころから(2012~2013年)、チームにあるいくつかの問題点や課題が分かっていました。もちろん、そのときは選手なのでその問題点を変えることはできません。その後、監督になってまずすべきだと感じたのは、しっかりとスターティングメンバーを確立することでした。2015年の成績を見てみると、出場したほとんどの選手がレギュラーという形ではなく、1つのポジションで2~3人の選手が使われていた状況だったのです。まずは、ここから解決しようと思いました」

2016年当時、レギュラーと呼べる選手は筒香嘉智選手、梶谷隆幸選手、ホセ・ロペス選手ら3~4人のみ。安定的にチームのパワーを最大化させるためには、土台の確立が不可欠だろう。そこで、まずは投手を除く8つのポジションで、レギュラー選手を確立することを最優先事項とした。

「初年度から、いかにレギュラーを作るかにフォーカスして、7つのポジションでレギュラーを作ることができたと思います。残りのポジションは競争、そしてレギュラーをバックアップする選手も確保でき、使い勝手も良くなった。この点は成功したと思っています」

親会社やGMとの関係性がチーム成績に作⽤する

レギュラーを決めるのは監督の権限が強いが、実は全権を握っているわけではない。DeNAは横浜DeNAベイスターズという親会社があり、さらにGM(ゼネラルマネージャー)制も取り入れているため、監督の一存ではチーム内の全てを決めることはできないのだ。プロ野球において、この球団とGMとの対立やあつれきに悩まされる監督も少なくない。しかし、ラミレス監督は持ち前のコミュニケーション能力を生かして、この関係性も良好なものとした。

「当初、球団やGMからは、チームを変えてほしいという意向がありました。監督をやる中で決められることは多くありますが、選手をコンバート(ポジション変更)する場合は担当コーチとの相談も必要になりますし、二軍に落としたり、一軍に上げたりするのにも許諾が必要というルールは確かにあります。そのようなときに、それまでにコミュニケーションをしっかり取れていることが、現在までうまくいっているのだと思います。これがチームにとって良い方向に作用しているのです」

球団やGMとの折り合いがつかず、自分の思うようなチーム作りができないまま、1~2年で解雇されてしまう監督もいる中で、それぞれの立場にいる人たちと密なコミュニケーションをとりつつチーム作りを進められるのは、ラミレス監督の力の一端でもある。また、監督一人の力だけでは勝てるチームを作ることができないのもプロ野球界の厳しいところ。こういった面で、ラミレス監督は、親会社からの大きなバックアップを得られていると言ってもいいだろう。

「もちろん、その通りです。私にはたくさんのアイデアがあり、それらのアイデアを球団に話して功を奏したこともありますし、球団やGMの意向をくんで進めたことがうまくいったこともあります。こうして球団・チーム全員が一つになれた結果、2年連続でAクラス、昨シーズンは日本シリーズに進出することができたのです」

ラミレス監督がこれまで結果を残すことができたのは、彼自身のコミュニケーション能力の高さが大きく影響しているようだ。トップダウンで自らの理想を突き詰めていくタイプではなく、親会社、GM、コーチ、選手とさまざまな立場の人間とうまく意思の疎通を図りながら、理想とするチームを作り上げていく。多方に広がる個々の考えやエネルギーを収束させて、チームの機能を最大化させていくスタイルなのだろう。

そのスタイルが現代野球、ひいては現代社会のさまざまなシーンに合うスタイルと言えるかもしれない。そんなラミレススタイルの具体例を、後編ではひもといていきたい。


<2018年4月25日(水)配信の【後編】に続く>

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