2019.5.7
大型トラック版Uber!? 運送業者と手軽につながるサービスが物流の仕組みにメス
重量貨物と大型トラックを直接つなぐマッチングサービス「ラクサガGO」
amazonをはじめとしたECショッピング全盛の時代。運送業界でさまざまな問題が浮き彫りになる中で、一般には知られることの少ない“重量物”運搬の世界でも似たような課題は多い。そんな中に登場したのが、重量物に特化した物流マッチングサービス「ラクサガGO」だ。重量貨物と大型トラックを直接つなぐこのサービスによって、物流の効率化は促進されるのだろうか。
(写真:ぱくたそ)
大型トラック版Uberが業界を救う一手になる?
日本では今、深刻なトラックドライバー不足が叫ばれている。総務省の調査によると、ドライバー人口は2007年から2017年にかけて約83万人をほぼ横ばいで推移。その一方で、EC(電子商取引)の増加などにより、ここ10年ほどで需要は爆発的に増加している。
2016年度に国土交通省が発表した資料によれば、2020年度に予想される需要量は約103万人で、それを約92万人の供給量でまかなわなければならないと予測していた。しかし、このままいけばさらに9万人ほど不足する計算になる。しかも、物流におけるトラックの積載効率(許容積載量に対して実際に積載する貨物の割合)は40%程度とも言われ、その効率性は非常に低いとされている。
この現状を解決する方法の一つとして注目を集めているのが、“トラック版Uber”とも呼ばれるインターネットを介した物流マッチングサービスだ。配送を依頼したい人と運びたいトラック、その双方をつなぐ懸け橋となるこのサービスによって、例えば、ある荷物を運んだときの帰路に別の荷物を運ぶことで空荷を減らし、物流の効率化を図れると、期待が集まっている。
実は、国内では既に複数のサービスが存在しているが、どれもが軽トラックから2tトラック程度までの軽量貨物向けのもの。同じように改革が必要とされている重量物運搬(印刷機器や医療系精密機器、資材や重量物など人が持ち運びできないほどの重量物)に向けたサービスはなく、出遅れているという。
それを背景にことし1月、4t以上の大型トラックに特化した物流マッチングサービス「ラクサガGO」がリリースされた。「ラクサガGO」は、専用アプリを介して、小型クレーン付き車両や重機トレーラーなど、大型の重量物を運搬できる大型トラックと、それを求める荷主を仲介し、業界の課題解決に貢献しようとしている。
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「ラクサガGO」は、荷物を送りたい荷主と運送業者がそれぞれ登録することで、必要に合わせてマッチングしてくれる。PCとスマートフォンに対応し、利用シーンも選ばない
業界内で生じていたすれ違いをオンラインでマッチング
サービスを運営する株式会社ラクサガの広報によれば、「業界へのヒアリングや、ラクサガ独自の調査による統計では、大型トラックの積載効率は40%以下」であるという。小型トラックをさらに下回る効率となる大きな理由は、重量物を扱える運送業者のほとんどが中小企業であり、デジタル化が全く進んでいないことが挙げられるそうだ。
大型物流の配送プロセスは、まず荷主がブローカー(仲買人)に電話で連絡し、配送元と運送業者をつなげてもらうというのが主流。ブローカーを通さない場合は、数ある運送業者に1軒ずつ電話で問い合わせて、トラックの空き状況を確認する必要があるという。
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荷主がサービス上に登録した案件に対し、ドライバーが入札することでマッチングする。基本的にサービスサイト上で検索や依頼などが完結。大型配送に特化している分、その可否を確認する手間も省けるのだ
また業界には、自社ホームページなどを持たず、新規客が電話で問い合わせることが難しい小規模な運送業者や個人事業主のドライバーも多いという。それらは、トラックに空きがあることもしばしばで、最適なマッチングが図れていないことが業界全体の問題にもなっているそう。
加えて、コストの問題もある。重量物運搬の場合、荷物を運ぶのは片道だけで、帰りは空荷になることが一般的なのだが、配送料には復路の燃料費や人件費も含まれる。そのため費用が通常より高額になることが多いという。空荷の状態で復路を走るのは、積載効率を下げる大きな原因の一つだ。
ラクサガGOでは、これらの問題を解決するため、荷主と配送業者をリアルタイムにオンライン上でつなげるプラットフォームを提供。配送料にオークションシステムを取り入れたことで、運搬する側から見積りを提案できる形となり、双方が納得する金額交渉ができる。これは荷主、ドライバー双方ににとって大きなメリットがあるシステムと言えるだろう。
また、利用開始時も荷主、運送業者共に、メールアドレス一つで登録が可能と気軽だ。運送料の支払いもラクサガGOが仲介するため、特に個人事業主のドライバーにとっては安心できる材料になるだろう。
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これまでの重量物運搬業界には、荷主、運送業者、個人ドライバーそれぞれに多くの課題があり、ラクサガGOはそれらを解決することを目指している
物流の効率化が環境問題に貢献する可能性
一見、大型物流というと、一般ユーザーには直接の関係性はないようにも感じるが、「当初はB2Bをメインに考えていたのですが、通常の宅配便では送れない荷物に困っている一般の方からの依頼も多いんです」と、前出のラクサガ広報は意外な受け入れられ方に驚いたという。
それに大型、小型問わず、運送業界における新たなサービスが拡大すれば、人類共通の課題である環境問題にも寄与する可能性が高い。物流の効率化を図ることで、トラックの積載効率が向上し、運送に必要なトラック自体の数が減少。そうすれば、二酸化炭素排出量の減少にも期待できるだろう。
今後、物流の量はさらに増えていく。それは、輸送のために必要となるエネルギーも増えていくということだ。ある業界の課題を解決できるサービスが、世界が抱える課題解決にもつながる可能性がある。業界全体で利用者が増えていけば、その効果はきっと大きくなっていくはずだ。
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text:石井 良 画像協力:株式会社ラクサガ