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人や車が乗ってもOK! 道路埋め込み式の太陽光発電システムがドイツで誕生

従来型ソーラーパネルの常識を覆し、街中で安全かつ効率的に再エネを作る取り組み

BMWにメルセデス・ベンツ、ケルヒャー、ブラウン、ライカなど、枚挙に暇(いとま)がないドイツの有名企業。いずれも高い技術力を誇る世界的メーカーで、各社製品が日常にもたらす貢献度は限りなく大きい。そのドイツ・ベルリンにあるスタートアップ企業・ROCSUN社が開発した再生可能エネルギーの新技術に注目が集まっている。世界全体で取り組むべき課題に対し、一つの答えになり得るかもしれない新しい太陽光発電のカタチを紹介する。

太陽光発電が新たなステージへ突入

最近になってよく耳にするようになった「SDGs」──。この言葉を正しく理解しているだろうか?

外務省によると、SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略語のこと。日本語でいうならば“持続可能な開発目標”となり、17のゴールと細分化された169のターゲットから構成。SDGsの前身であるMDGs(Millennium Development Goals)の対象が主に発展途上国だったのに対し、SDGsは先進国も積極的に取り組むべき課題が分野ごとに定義され、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて“2016年から2030年までの国際目標”と明記されている。

この17のゴールには貧困や飢餓の解消、海洋や陸上資源の保全などに加え、エネルギーに関する分野もある。気候変動や生産・消費と合わせて考えた場合、近年その比率を増やしつつある再生可能エネルギーにかかる期待は大きい。

「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために定められたSDGsの17項目。各分野単独でなく、多角的な取り組みが求められている

出典:外務省

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2018年に世界で作られた電気の約3分の1が再生可能エネルギー由来によるものだという。中でも、太陽光発電と風力発電の伸びが顕著で、この傾向は今後も続いていく見込みだ。

IRENAによれば、日本の太陽光発電量(2018年)は世界一の中国に次ぐ第2位の年間5万5500MW。次いで、アメリカ、ドイツの順番になっている。

そうした中、ドイツの太陽光発電量が飛躍的に伸びるかもしれない新技術が、ベルリンのスタートアップ企業ROCSUN社によって開発された。それが、道路に埋め込み可能なソーラーパネル「PowerGround」だ。

ソーラーパネルと聞いてまず思い付くのは、広大な空き地や山の斜面、屋根の上など、人が立ち入らない場所に設置されたものではないだろうか。しかし、PowerGroundはその根本部分を覆し、街中の道路に埋め込むという全く新しい手法の太陽光発電コンセプトを作り上げた。

当然、道路に埋め込むことを可能にするため、さまざまな技術や工夫が施されている。

PowerGroundのプロトタイプ。従来のソーラーパネルと異なり、下部のコンクリート部分と合わせて使うのが特徴だ

道路への設置を可能にした高い耐久性の秘密

まず気になるのが、人や車が踏んでも壊れないその堅牢さだ。

1枚のサイズは100×100cmの正方形。厚みは7cmで、下部のコンクリート部分と組み合わせて使う2層構造になっている。透過性と堅牢性を兼ね備えた強化ガラスでソーラーパネルの表面を覆うことで、発電しつつ3.5tまでの重さに耐えられるように設計されている。

表面を覆う強化ガラスの種類によって2種類のタイプを開発中で、より安価なスタンダードモデルは交通量が少ない場所向け。セラミックを使用し、より傷に強いソリッドモデルは交通量の多い場所に向いているという。

また、どちらもその表面にはスリップを防止する加工が施されており、イギリスの安全衛生庁が実施する床滑り抵抗試験「R-Rating of Floors」でR11を取得。これは上から3番目の評価で、表面が濡れた際にもスリップしにくいことを証明している。

プールサイドに設置されたPowerGroundの使用想定図。国際的な防じん・防水規格の最高クラス「IP68」を取得しているので、安全性は折り紙付き

さらに、人や車への安全性を確保するために、120V未満の低電圧を使用。こちらも、国際的な基準である「Protection class」でクラスIIIを取得し、感電に対する安全策を講じている。

以上の点などから、ドイツ建設技術研究所(DIBt)が「ROCSUN社のPowerGroundを道路に埋め込む際、特殊な建築許可を得る必要がない」と、ことし6月に発表。国の機関からお墨付きをもらったこともあり、今後の導入に大きな弾みをつけた形だ。

なお、気になるソーラーパネル自体のスペックだが、1枚につき36個の高性能単結晶電池セルを搭載し、180Wp(ワットピーク)の発電容量を実現。パネル2枚ごとに1つのインバータを取り付け、交流電流に変換する仕組みで、作られたエネルギーは既存の送電網に供給できるほか、蓄電池にためることも可能。しかも基本的にはメンテナンスが不要で、30年以上の耐用年数があるという。

新しく道路を建設する際はもちろん、既存のアスファルトにも簡単に導入することができるPowerGround。ROCSUN社によれば、道路の照明や街頭広告用のエネルギー源に使われるほか、電動自動車やバイクの充電スポットなどに使用していく予定。

現在想定されている価格は、スタンダードモデルで1枚当たり約€1200(日本円で約14万2820円※8月8日現在)。来年の春にもドイツ国内での利用がスタートする予定だという。まずは、EU圏内での導入実績を積み、その後は北米やアジアにも進出する計画とのこと。

官民含めた世界全体としての取り組みが必要とされるSDGs。設置自由度が飛躍的に広がり、メンテナンスフリーなこの太陽光発電システムが、エネルギーや気候変動の分野に寄与する影響はとても大きいのかもしれない。

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