2017.5.11
走るロボカー「ロボネコヤマト」が宅配の未来を変える?
自動運転による“無人配達”の実証実験がスタート
配達の時間だけでなく、なんと場所まで指定できる! ヤマト運輸とDeNA(ディー・エヌ・エー)が、次世代の宅配サービス「ロボネコヤマト」の実証実験を始めた。両社が見据えているのは、自動運転による無人配達の実現。果たして、ユーザーにとってどんなメリットがあるのか?
配達時間&場所をピンポイントで指定!
ショッピングサイトやネットワークの進化で“ワンクリックで欲しい商品が当日中に届く”ことが常識になりつつある昨今、宅配最大手のヤマト運輸がさらなる“便利過ぎる”プロジェクトを立ち上げた。
ライフスタイルの変化などにより、多様化している受け取りニーズに対応するために、IT大手のDeNAと連携して“望む時に望む場所で荷物を受け取れるサービス”を開発。しかも、将来的に自動運転で荷物を届けることも目指す「ロボネコヤマト」の実証実験をスタートさせたのだ。
ヤマト運輸の広報戦略部によると、4月17日から開始した実証実験が行われているのは、国家戦略特区(規制改革などの施策を集中的に推進するエリア)である神奈川県藤沢市。対象エリアは、藤沢市の鵠沼海岸1~7丁目、辻堂東海岸1~4丁目、本鵠沼1~5丁目だ。およそ1万2000世帯にあたる約3万人がサービスを利用できるという。
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イエロー×ブラックの車体が目をひく「ロボネコヤマト」の専用車両
実験で使われるのは、車内にロッカー型の保管ボックスを設置した専用の電気自動車。ヤマト運輸の施設から「目的地に自動で出発!」が最終的な目標ながら、今回の実験ではドライバーによる有人運転で荷物を届けるという。
ただし、荷物の受け取りスタイルはなかなかに斬新だ。
「将来的な自動運転を見越して、荷物はお客様自身が車両から取り出すスタイルにしています。そのため、ドライバーは運転に徹して荷物の受け渡しなどには関与しません」(ヤマト運輸広報戦略部)
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配達車が到着したら、ユーザーは後部ドアを開けてタッチパネルにスマートフォン上のQRコードをかざす
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車内の保管ボックスが開いて荷物を受け取れる仕組み
「ロボネコヤマト」では、ユーザーは大きく分けて2つのサービスを使うことができる。
まずは、なんと“10分刻み”で配達時間帯を指定して荷物を受け取れるオンデマンド配送サービス「ロボネコデリバリー」だ。
「お客さまが“望む時”に“望む場所”で荷物を受け取ることができるので、対象エリア内であれば最寄り駅や会社などでも受け取りが可能です。スマートフォンで荷物の現在地や到着予定時刻の確認することもできます。主に共働き夫婦や一人暮らしの方にとって使い勝手の良いサービスを目指しています」(同社)
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スマホに表示される地図をタッチすれば受け取り場所を指定できる
これまでのサービスでも配達時間をおおむね2時間単位で選ぶことはできたが、「自宅で受け取る」という大原則に縛られて前後の予定が入れにくかったのも確か。
それが、恋人とデートの待ち合わせをする感覚で受け取りの時間と場所をピンポイントで指定できるのだから、ユーザーのメリットは大きい。
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日頃子供と遊んでいる公園を受け取り場所に指定することも可能
また、冷凍や冷蔵商品にも対応しており、荷物が到着する3分前にスマートフォンにメールやプッシュ通知で知らせてくれる。
まさに“至れり尽くせり”な、便利過ぎるサービスである。
地元商店への“おつかい”も代行!
2つ目の「ロボネコストア」は、複数の地元商店の商品を自宅や外出先からまとめて注文できる買い物代行サービスだ。
こちらも冷凍・冷蔵商品に対応しており、荷物の到着時刻はスマートフォンからリアルタイムに確認できるという。
「現在は、本鵠沼商店街、鵠沼海岸商店街、プチモールひがし海岸などの商店街を中心に、約20店舗がインターネット上の仮想モールに出店しています。小さな子供を持つ家庭やお年寄りの方が主なユーザーと考えています」(同社)
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「ロボネコストア」の画面
配達対応時間は8~21時だが、店舗の営業時間に準じる。利用料金は、注文総額が3000円未満の場合324円で、3000円以上の場合は無料となる。配送は前述の「ロボネコデリバリー」を利用する。
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実験では日産の車両を使用するが、どの企業の自動運転技術を取り入れるかは未定だという
慣れ親しんだ地元店の商品を店舗まで行かずに購入できて、時間も場所も細かく指定して受け取れるなんて…藤沢市民がうらやましいではないか!
これらのサービスを通じて受容性を検証するほか、利用者からの要望を集めるのが実証実験の目的だ。また、2018年をめどに一部の配送区間で自動運転を導入する予定。それが、人手不足に悩む運輸業界にとって大きなメリットになることは明白だ。
「宅配ドライバーには体力やコミュニケーション能力、安全に荷物を届ける運転技術などが求められます。ただ、今後自動運転技術が確立すれば、例えば接客を得意とする女性やシニア層の方々など、今まで車両の運転がネックとなって宅配の業務に従事しにくかった人へ雇用の幅が広がる可能性はあると考えています」(同社)
もちろん、「ロボネコヤマト」のプロジェクトが成功するかどうかは、ユーザー側が指定した受け取り時間や場所などの“約束を守る”ことが重要だ。人手という貴重なエネルギーのムダ使いを防ぐためにも、日頃から身勝手な理由で再配達のリクエストを繰り返すのは控えたいところ。
便利な世の中を実現できるかどうかは、日本人のモラルにかかっている。
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text:浅原 聡