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鉄の5倍の強度で重量は5分の1! 環境に優しいセルロースナノファイバー製の車が世界を救う?

“木でできた車”をはじめ、次世代FCVやガスタービンエンジン搭載車が登場した「東京モーターショー2019」をエネルギー視点で振り返り

10月24日から11月4日にかけて開催され、延べ130万900人が来場した国内最大の自動車の祭典「第46回 東京モーターショー2019」。100年に1度の変革期を迎えたといわれている自動車業界は今後どう変わっていくのか? 出展された注目のクルマを7台ピックアップしてご紹介する。

次世代素材「セルロースナノファイバー(CNF)」の活用で軽量化を目指す

環境省が初出展・初公開したコンセプトカー「NCV(Nano Cellulose Vehicle)」。

植物から取れるセルロースを化学的・機械的に処理。数nm~数十nm(ナノメートル)に微細化した次世代素材のナノ繊維・セルロースナノファイバー(CNF)を、電子レンジ用の食品トレイやおもちゃで一般的に用いられるポリプロピレン(PP)をはじめ、ポリアミド(PA)6やポリカーボネート(PC)などに混ぜて成形することで、部品単体では最大50%程度、車体全体で質量10%ほどの軽量化を実現している。このナノ繊維を用いることにより、鋼鉄の1/5の軽さで5倍の強度を持ち、温度上昇による物体の長さや体積が膨張する割合を温度当たりで示した線膨張率はガラスの1/50程度などと性能面でも優れる。

また、素材の製造段階から廃棄・リサイクルまで、トータルのライフサイクルでCO2排出量を10%程度削減する見込みだという。

ボンネットやルーフ、ドアなどのボディー外板とフロアの一部がCNFにより造られている

京都大学が代表事業者を務め、計22の大学・研究機関、アイシン精機やトヨタ紡織などの企業で構成。2016年10月26日より、環境省の産学協同プロジェクト「NCVプロジェクト」として研究開発がスタートした。

国土の多くを森林が占める日本にとって調達しやすい資源だけに、同省では今後もコストダウンを図り、2020~40年にかけてCNF素材の採用を拡大したい考えだ。

次の“MIRAI”はFCV普及の起爆剤!?

トヨタが販売するFCV(燃料電池自動車)「MIRAI」。未来のエネルギーとして期待される水素を燃料に、CO2を排出せずに走行できるFCVだが、その次世代コンセプトモデル「MIRAI Concept」が展示された。

デザインも変更され、エクステリアはトヨタのアイデンティティが強く感じられるセダン

2020年末に発売を予定する“NEXT MIRAI”の開発最終段階モデルとなる同車は、FC(燃料電池)スタックをはじめ搭載するFCシステムを一新。

水素搭載量が拡大され、航続距離を約30%向上させた。利便性が増したことで、今後のFCVの普及拡大につながるか注目だ。

ガスタービンエンジンを採用した電動SUV

ダイナミックなバギータイプの「MI-TECH CONCEPT(マイテックコンセプト)」を発表した三菱自動車。

その個性的なエクステリアデザインもさることながら、新たなプラグインハイブリッド(PHEV)システムに注目したい。

左右のタイヤを逆回転させればその場で180度回転できるなど、運転の可能性も広がる「MI-TECH CONCEPT」

発電エンジンとして用いられるのがガスタービンエンジンで、サイズや重量あたりの出力が大きいのが特徴。これによりガソリンエンジンと比べて小型・軽量化できる。

加えて、ガソリンの他にも軽油、灯油、アルコールなどを燃料にできるのもポイント。地域によって抱える問題が異なる中で最適な燃料を選択すれば、環境・エネルギー問題に対して柔軟な対応が可能になるという。

将来の市販化を目論む日産のコンセプトカー

日産は“最新技術でクルマを移動手段からワクワクさせる存在への進化させる”という同社のビジョン“ニッサン インテリジェント モビリティ”を具現化した電気自動車(EV)「ニッサン アリア コンセプト」を出展した。

新たな日産デザインの方向性を示したEVクロスオーバーコンセプトモデル「ニッサン アリア コンセプト」

前後輪に高出力の電動モーターを配する“ツインモーター4輪制御システム”を採用する「ニッサン アリア コンセプト」。

瞬時に緻密なトルクコントロールを可能にするこのシステムによって、高次元の発進・加速性能だけでなく、悪路走行での優れたトラクションコントロールを実現したという。今回のプレスカンファレンスに登壇した日産のグローバルデザイン統括役のアルフォンソ・アルバイサ専務執行役員は、「これまでのコンセプトカーと違い、近い将来、実際に運転できるクルマ」と語っており、今後の市販化にも期待大だ。

欧州で先行販売がスタートするEVを世界初公開

内燃機関(エンジン)に強いこだわりを持つマツダが、世界に先駆けて初の量産EV「MAZDA MX-30」を公開。

ちなみにこの車は、2030年時点で生産する全ての車両に搭載するとしている電動化技術“e-SKYACTIV(イー・スカイアクティブ)”を備えた第1弾となる。

将来的な日本導入も検討されている「MAZDA MX-30」

モーターのスペック(最高出力/最大トルク)については現時点で非公表となるが、搭載する駆動用バッテリーは、総電圧355V、総電力量(バッテリー容量)35.5kWhのリチウムイオン電池で構成。航続距離は欧州のWLTPモードで約200kmとなる。

日産「リーフ」の航続距離が最大約570kmであることを考えれば、少々頼りなく思えるスペックだが、これはバッテリーを作る過程で排出されるCO2を勘案し、あえて小型のバッテリーとしたことによるものだ。またマツダはEVを展開する上で、万が一の電池切れに備えるレンジエクステンダー(航続距離延長装置)として、将来的には発電エンジンとしてロータリーエンジンを搭載する計画を持っている。

今回、初の量産EVが登場したことで、いよいよファン待望のロータリーエンジン復活の時が迫っているのかもしれない。

レクサスとメルセデスが示した未来の車の形

最後に近未来感にあふれる2台のコンセプトカーをまとめてピックアップ。

まずは創業30周年を迎えたレクサスの今後の電動化戦略を占う「LF-30 Electrified」だ。足回りには各ホイールに配されたモーターがそれぞれ直結する“インホイールモーター”を採用。これにより、それぞれのホイールを独立して制御が可能で、ガソリンエンジン車と比べてエネルギーの高効率化にも貢献するという。

ボディ4隅のタイヤから発生したエネルギーが、キャビンからドライバーへ流れていくようなイメージを持たせた意匠を採用したという「LF-30 Electrified」

続いてはアジアプレミアとなったメルセデス・ベンツの「VISION EQS」。

前後の車軸に電動モーターを搭載し、その総出力は約350kw、最大トルクは約760Nmを誇る。0から100km/hまでの加速に要する時間はわずか4.5秒で、そのパフォーマンスはスーパースポーツカー並みといっても過言ではない。

メルセデス・ベンツのEVブランドであるEQに登場した「VISION EQS」。ラグジュアリーとサステナビリティの未来を示唆した1台だ

加えて航続距離はWLTPモードで最長700kmの走行が可能。そしてEVのネックとなる充電についても、バッテリーを80%まで充電するのに必要な時間は20分程度と使い勝手も考慮されている。

市販間近の車から今後の方向性を示唆するものまで、幅広く登場した今回の「東京モーターショー2019」。

車離れが叫ばれる昨今ではあるが、こうした車が走っている未来を想像すれば、不思議とワクワクした気持ちがあふれてこないだろうか。

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