2020.8.12
再エネ利用に革新! リチウムイオン電池を超える画期的な蓄電池を古河電工グループが開発
安全・空調レス・高容量な電力貯蔵用電池が誕生
未来のエネルギーの担い手として期待される自然由来の再生可能エネルギー。今後、化石燃料に代わるエネルギーとなるためには、優れた電力貯蔵用蓄電池の誕生が待望されている。そんな中、長年実用化が困難とされてきたバイポーラ型蓄電池の量産化にめどが立ったと発表された。再生可能エネルギーの可能性を広げる新たな蓄電池の詳細をご紹介する。
INDEX
リチウムイオン電池比でトータルコスト1/2を実現
台風の大型化や記録的な大雨、干ばつなど、世界規模で発生している甚大な自然災害。これらの原因として指摘されているのが、地球温暖化だ。
18世紀に英国で起こった産業革命によって大量生産・大量消費という生活様式を確立して以降、豊かさを享受してきた人間社会。しかし、エネルギー源となる化石燃料の乱用によってCO2排出量はそれまでと比べて飛躍的に増加した。その結果、年々高まり続ける大気中のCO2濃度によって地球温暖化が進行し、さまざまな環境問題の起因になっている。
この状態が続くと、いずれ地球は生物のすめない星になってしまうというシミュレーションもある。昨今の異常気象に真摯(しんし)に向き合い、今こそ低炭素社会への転換を進めなければならない。
そこで、化石燃料に代わるエネルギーとして期待されているのが、太陽光発電に代表される再生可能エネルギー。温室効果ガスを排出せず環境負荷が小さいクリーンエネルギーの普及は、持続可能な社会を実現する上で重要なファクターといえる。
一方で、自然由来のエネルギーであるが故に、発電量がその日の天候や時間帯などに左右される面が大きく、出力が不安定という課題が残る。
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エネルギー政策としてさまざまな議論がされている中、再生可能エネルギーの大量導入時代には、ピークシフトなど長周期用途に対応する0.2CA(充放電電流/この場合5時間で満充電ないし全放電)の電池が欠かせない
画像提供:古河電気工業・古河電池
そんな再生可能エネルギーであっても安定して電力を供給する手段として、生産できるときにできるだけ電力を生産し、余剰発電分を蓄電池に貯蔵する方法がある。
しかし、リチウムイオン電池をはじめとする現状の蓄電池ではリサイクル性や安全性、コスト面で課題が残り、いずれもベストの選択肢とは言い難いのが現状だ。
そうした中、古河電気工業と古河電池は、「鉛箔の薄箔化と長寿命化の両立」「樹脂プレートの成形と接合技術」「鉛箔と樹脂という異なる材料の接合」といった技術的な問題から、長年実用化が困難とされてきたバイポーラ型蓄電池の開発に成功。2021年度中にサンプル出荷、2022年度より製品出荷を開始予定と発表した。
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1枚の電極基板の表と裏に、それぞれ正極と負極を有するシンプルな構造が特徴のバイポーラ型蓄電池(イメージ)。電池サイズ(予定)は縦300×横300×厚さ250(各mm)、容量50Ah、定格電圧48V。電池寿命も15年(4500サイクル)と長寿命化
画像提供:古河電気工業・古河電池
古河電気工業のメタル・ポリマー技術と古河電池の電池・加工技術を結集して開発されたバイポーラ型蓄電池。
従来の電力貯蔵用の鉛蓄電池と比べて使用する金属材料を削減しており、大幅な低コスト化を実現。さらに、体積あたりの電力貯蔵量は約1.5倍、重量エネルギー密度は約2倍とエネルギーの高密度化にも成功した。
加えて、電力貯蔵用リチウムイオン蓄電池との比較でも、安全性の観点から一定の距離を設ける離隔距離の規制がないため設置面積あたりのエネルギー量で勝る上、製造コストの安さから消費電力あたりの単価は50%以下。温度管理設備も簡略化できるため、トータルコストを1/2以下に抑えられるという。
両社は今回開発したバイポーラ型蓄電池について、「リサイクルシステムが確立されている鉛蓄電池の利用拡大はSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けても有効であり、複数組み合わせることでメガワット級までの蓄電池容量に対応できる」としている。今後は古河電池独自の充放電性能と寿命を大幅に高めた鉛バッテリー「UltraBatteryTM」の技術を融合し、さらなる充放電の大電流化と高速化に対応する次世代バイポーラ型蓄電池を開発していく計画だ。
電力貯蔵用蓄電池としてまさに理想的といえるバイポーラ型蓄電池の誕生。
再生可能エネルギーの利用を拡大する、大きな援護射撃になることを期待したい。
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text:安藤康之