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雪国育ちのバナナ誕生! 焼却炉の余剰エネルギーを使った新たなモデルケースへ

ふるさと納税にバナナ和紙製造も!地域を巻き込んで新産業の創出を目指す

若者の果物離れが叫ばれて久しい昨今。若者だけでなく国民全体のフルーツ消費が下落傾向にあるが、国産のマンゴーやシャインマスカットといった高級果実、希少品種の需要は極めて高い。そうした中、今後は新たな希少フルーツ・国産バナナに注目が集まるかもしれないという。これまでの常識を覆す日本生まれのバナナが普及しつつある背景に加え、日本で初めて焼却炉の熱エネルギーを有効活用して作られた新潟県柏崎市生まれのバナナを紹介する。

夢の国産バナナ普及へ

バナナ、リンゴ、ミカンの3つの果物の共通点が何かお分かりだろうか? 

正解は、総務省が行っている「家計調査」において、長きにわたり果物の購入金額年間ベスト3の座を占めてきたということだ。

2017~19年に行われた調査の平均によると、2人以上の世帯で最も購入されたのはバナナの年間4849円。追ってリンゴが4802円、ミカンが4354円となっている。ちなみに、ほかのフルーツはいずれも3500円未満で、この結果は2009年以降、毎年ほぼ同様の値となっている。

国内生産が盛んなリンゴやミカンと比べ、99%以上を輸入に頼っているバナナ。主な輸入国はフィリピンやエクアドルなどで、その総数は98万7000トン(2017年)にも及ぶ巨大市場だ。

農林水産省「果樹をめぐる情勢」より、2017年度のデータ。購入金額ベスト3のうち、バナナだけが輸入頼みだというのがよく分かる

出典:農林水産省

海外から日本に輸入されるバナナは青くて硬い未成熟の段階で収穫・出荷され、追熟を施したものが一般的。しかし、近年では樹上で完熟した国産バナナが少しずつ手に入るようになってきたという。

ことし8月に初出荷を迎えた「越後バナーナ」もそのうちの一つ。新潟県柏崎市という雪国でバナナを生産できる秘密は、技術革新と日本初の取り組みにあった。

個包装、そして箱詰めされた越後バナーナ。普及しつつあるとはいえ、国産バナナはまだまだ貴重な存在

焼却炉の熱も収穫後の株も再利用

越後バナーナを生産するのは、鋳物砂の製造販売や産業廃棄物の焼却処理を手掛けるシモダ産業株式会社。

同社では以前から焼却時に発生する熱エネルギーを有効活用できないかと模索しており、その答えがハウスを使ったバナナ栽培だった。

1日約47トンの処理能力を誇る焼却施設。3年前に新設した際から、大量に発生する熱の活用方法を探していた

昨年、同社内に農業部門の「シモダファーム」を設立。幅約8×長さ約72×高さ約5(各m)のハウスを焼却炉近くに2棟設置し、8月にはバナナの苗約200本を定植した。

そもそもバナナの生育には、一年を通して20℃以上の生育環境が望ましいとされている。そのため日本では生産が難しいとされていたが、種子をいったん凍結させて耐寒性を上げる凍結解凍覚醒法(R)という特許技術を岡山県のD&Tファームが確立。2018年には特許を取得したこともあり、国内での栽培が徐々に盛んになってきているという。

ただ、東南アジアや中米のように露地栽培されるケースはまれで、ハウスを使用する方法が一般的。特に冬季の温度が下がる地方で栽培するには、ハウス内の温度を一定に保つ方法が課題となっていた。

ハウス内に植えられたバナナ。専任スタッフが無農薬栽培で育てている

そこでシモダファームでは、焼却施設から発する温かい排水をハウス内に循環させることでその問題を解決。積雪することが珍しくない環境でも、年間を通して24℃以上を保つことに成功した。

焼却施設から発生する熱エネルギーを有効活用する方法はサーマルリサイクルと呼ばれ、温水施設(プール)で活用されている事例は珍しくない。しかし同社によれば、この方法を取り入れてバナナの栽培が行われるのは日本初の事例になるという。

仮にサーマルリサイクルを行わない場合、同社の環境で冬季のハウス内を24℃以上に保つには600リットル以上の重油が必要と試算されているので、その恩恵は非常に大きい。

サーマルリサイクルを活用したバナナ栽培の概略図(上)と、ことし2月のハウスの様子(下)。周辺が積雪してもハウスに積もることはない

これにより一年を通して安定した栽培管理が可能となり、年間約3万本の収穫を目指しているという。

ちなみに、同社が栽培するバナナはグロスミッチェル種といい、高い糖度と食べられるほどの薄い皮が特徴。流通量が極めて少なく、幻のバナナと呼ばれている品種だ。

その理由は、一般的に出回っているキャベンディッシュ種と比べて病気に弱いため。しかし、ハウスで栽培することから安定した品質管理が可能になる点や、凍結解凍覚醒法(R)によって病気に強くなる点なども加味され、国産のバナナに採用されるケースが多い。

同社が推奨している越後バナーナの食べ方。皮ごと食べられるバナナと言われただけでも試してみたくなる

出荷された越後バナーナは新潟県内の高級フルーツ店で購入できるほか、柏崎市のふるさと納税返礼品にも採用。

さらに栽培後の株は伐採され、同市の和紙工房でバナナ和紙としてよみがえる計画だ。

古皮を使用したバナナ和紙の試作品。収穫後の株を使った場合は、また違った風合いになる予定

国産の高級バナナ栽培が各地で普及しつつある昨今。

日本初のサーマルリサイクルを活用したバナナが出荷されたことにより、焼却炉の余剰エネルギーを有効活用したい企業にとってのモデルケースになっていくのかもしれない。

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