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クロネコが独居老人のセーフティーネットに!ヤマト運輸が高齢者見守りサービスを開始

IoT電球のオンオフを検知して操作履歴を自動送信。遠隔で人の暮らしの異変を察知するヤマト運輸の地域密着型サービス

年々増加傾向にある高齢者の一人暮らし。それに伴い増えているのが、緊急時の対応の遅れや認知症の進行、孤独死といった社会問題だ。そうした中、ヤマト運輸株式会社が社内の人材を有効活用し、世界初のSIM内蔵型電球を使った独居高齢者の見守りサービスの実証実験を進めている。

高齢者をIoT電球で見守る

超高齢化や家族形態の変化、都市への人口集中などにより、増加傾向にある高齢者の一人暮らし。内閣府が発表した『令和2年版高齢社会白書』(2020年7月31日)によると、65歳以上の一人暮らしの人口は、1980年の時点で男性が約19万人、女性が約69万人、2015年では男性が約192万人(65歳以上の人口に占める割合の13.3%)、女性が約400万人(同21.1%)と急増していることが分かる。

高齢者は若い人に比べると体力面や健康面からけがや病気の不安が大きい。一人暮らしでは、緊急時の対応が遅れるといった危険もはらんでいる。

そうした社会課題の解決を目指し、ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)は、2020年6月22日より、ハローライト株式会社(以下、ハローライト)が開発したIoT電球「HelloLight」を用いて、一人暮らしの高齢者の見守りサービスの実証実験を開始した。

実験が行われているのは、東京都多摩市にあるヤマト運輸ネコサポステーション。ネコサポステーションとは、ヤマト運輸を中核とするヤマトグループの会員向け生活支援サービス「くらしのネコの手サポート ネコサポ」の提供や、地域や暮らしの情報提供などを行うコミュニティ拠点のこと。

人や物、情報が集まる便利なコミュニティー拠点として活躍するネコサポステーション

資料:ヤマト運輸株式会社

スーパーで注文した商品を届けてくれたり、電球の交換や家の掃除をしてくれたりと、家事全般のサポートを行うほか、地域交流イベントやセミナーなども開催。生活に役立つ情報提供の場として地域に溶け込んでいるネコサポステーションが新たに手掛けたのがIoT電球「HelloLight」を利用した試みだ。

「HelloLight」は、内部構造にSIM(ID番号で識別できるICカード)や通信システムが組み込まれており、一つ一つの電球ごとに識別と通信ができる。それにより、点灯、消灯などの操作状態を検知して任意のメールアドレスに変化を通知することが可能となる。

つまり、各家庭に備えられた電球の変化を検知することで、人が動いている状態なのか、もしくは何らかの異常状態なのかが遠隔でも分かるようになる。この通知をネコサポステーションのスタッフが確認し、一人暮らしの高齢者の安全を見守ろうというのが実験の趣旨だ。

見守りサービスのイメージ。親族が遠方に住んでいても、ネコサポのスタッフがサポートしてくれる

資料:ヤマト運輸株式会社

今回、ヤマト運輸は多摩市在住の会員で、一人暮らしの高齢者100世帯を目標に「HelloLight」の設置を進めている。利用者の親族や知人などの登録者と共に、ネコサポステーションでも通知を受信。連携を取りながら必要に応じてスタッフが現場へ急行したり、地域包括支援センターや警察・消防へ連絡をするなどの対応にあたるという。

ヤマト運輸の経営資源と新技術で地域の課題解決を

これまでヤマトグループは、自治体や企業などと連携して地域の課題解決を目指すさまざまなプロジェクトに注力してきた。

地方が抱える問題の一つに、福祉の現場における深刻な人材不足がある。ヤマト運輸の担当者は、「ここに見守りサービスが大きな効果を発揮する」と語る。

「支援を必要としている高齢者さんが年々増加し、現状、地域包括支援センターの職員さんたちだけではとても手が回らない状況だと聞いています。そこでネコサポステーションのスタッフや弊社の配送スタッフが“見守り”をすることによって、実質的に自治体が行う生活支援サービスを手助けすることができます」

今回の実験では、日本中で荷物を配送するヤマト運輸の人的リソースをベースに、「HelloLight」を活用することで、これまでできなかった遠隔による見守りが実現できた。

「実験開始から2カ月。既に多くの反響を頂きました。サービスを利用する高齢者さんからは、『これまで何かあったときのことを考えると不安が大きかった。でも、ネコサポステーションのスタッフの方や、いつも荷物を持ってきてくれる配送スタッフの方とは顔なじみ。そういう信頼関係を築いた人が緊急時に駆け付けてくれることが分かっているのは、大きな安心につながる』とのご意見を頂いています」

ネコサポステーションは東京都・多摩エリアに3店舗、千葉県・松戸エリアに1店舗がある。店内にはスタッフが常駐し、荷物の発送や受け取りをはじめ、暮らしのサポートサービスを提供している

写真:ヤマト運輸株式会社

他にもこのサービスが支持される要因の一つとして、ヤマト運輸の担当者は「HelloLight」の導入のしやすさについても言及する。

「IoT電球と言っても、難しい送信設定や、モデム、ルーターなどの複数の機器を用意する必要がなく、普通に電球交換をする要領ですぐに使えるんです。これは本当に画期的。高齢者の方に余計な面倒をかけず、すぐにサービスをご利用いただける点も喜ばれています」

ヤマト運輸が目指す日本全国の地域支援&活性化の未来

ヤマト運輸は、実験を継続しながらデータを取得し、今後サービス化を目指していく方針だ。

「もちろん申し込み数や要望に応じて設置数の拡大も検討中で、その中で実用性や持続可能性を見極めていく予定です」

2020年8月からは多摩市エリアだけではなく、千葉県松戸市内でのサービス展開を開始。最終目標は、日本全国の地域活性化や地域住民への生活支援を、各自治体やパートナー企業と連携しながら続け、広めていくことだという。

「そのためにも、この実験も含め、配送や家事支援、相談、地域活性化を目的としたイベント開催といったサービスを進めつつ、ネコサポステーションを他地域へ展開し、それぞれの地域でパートナーと共に実績を築いていきたい」と同社の意気込みと思いは大きい。

物産市や手芸教室、企業コラボイベントなどを定期的に開催。こうしたイベントで“なじみの顔”になっておくことも見守りサービスの土台になる

写真:ヤマト運輸株式会社

一人暮らしの高齢者や支援を必要とする人が、“電球を替えるだけ”で今よりも安心して暮らすことができる。誰でも使えるテクノロジーによって、人と人のつながりを強くするネコサポステーションの試みは、今の時代に求められているリアルサービスの在り方なのかもしれない。

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