2020.10.2
三角形がスタイリッシュ! おひとり様専用の三輪自動車「Solo」登場
生活スタイルを見直すきっかけに! 助手席や後部座席の必要性を問うチャレンジングな一台
自動車といえば四輪というのが、ある程度世界での共通認識になって久しいが、自動車の歴史を紐解けば三輪型が隆盛を極めた時代もある。タイではいまだに三輪自動車のトゥクトゥクが活躍している事実からもその有用性は色あせていないと言えるだろう。そうした中、新たな三輪自動車がデビューを間近に控えているという。近年の当たり前を打ち破り、巨大マーケットを狙った注目の一台を紹介する。
実は無駄がいっぱいの通勤スタイル
およそ60年前、日本で一大ブームとなった車がある。ダイハツ社製の軽オート三輪「ミゼット」だ。
三輪の名のとおり一つの前輪と二つの後輪から構成されており、車体後部に多くの荷物を載せられる優れもの。その高い完成度と大量生産による価格の安さから爆発的ヒット製品となり、社会現象にまで発展した。
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戦後の高度経済成長期を支えた象徴の一つでもある「ミゼット」。日本のみならず、世界にも輸出された
(C)Seaside / PIXTA(ピクスタ)
しかし、四輪車の台頭とともにそのブームは衰退し、わずか十数年という短命で生産終了。その後は自動車といえば四輪がスタンダードとなり、今もなおその事実が揺らぐことはない。
そうした中、再び三輪自動車ブームを巻き起こすかもしれない車が話題になっているという。
「Solo」と名付けられた三輪自動車を開発したのは、カナダ・バンクーバーに本社を構えるElectra Meccanica(エレクトラ メカニカ)。1959年にイタリアで創業した自動車メーカーだ。
2012年にスタートしたSolo開発プロジェクト。背景には、同社のマーケットである北米ならではの事情があった。
世界一の自動車保有大国・アメリカを含む北米では、通勤の際に自家用車を使う人が約1億1900万人。そのうち、1億500万人が一人で通勤しているといわれ、その割合は約9割にも上る。
この点に注目した同社。一般的な4~5人乗りの車を一人で運転すれば当然エネルギー効率は悪く、燃料費や維持費など削減できる部分が多いと考えたのだ。
そこで、主に通勤のシチュエーションで活躍する車の開発を決断。エネルギー削減やサステイナブルの観点からEV(Electric Vehicle/電気自動車)に絞り、開発をスタートした。
日常使いにぴったりの機能が充実
通勤時の新たな選択肢として開発されたSolo。最大の特徴は、一人乗り三輪自動車という部分にある。
一人乗りに特化した同車には助手席や後部座席がなく、全長約3.1、幅約1.46(各m)と非常にコンパクト。幅に関してはフロント部分のサイズを示しており、単車輪の車体後方は前方よりさらに細くなっている。
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前方から見たSolo。奇抜な三角形デザインが目を引くが、その実用性は高い
同車は従来のガソリン車(部品数およそ3万点)に比べて、部品数を99%も削減することに成功。パーツ数の減少に伴って構造がシンプルになり、故障する確率を格段に低下させたという。これにより、維持費の削減につなげている。
一方、走行面に関しても不足はない。
最高時速は80マイル(約128km)で、60マイル(約96km)到達までの時間はわずか10秒。後輪には前輪よりも大きくて太いタイヤを使用することで、一輪での安定した後輪駆動を可能にしている。
バッテリーにはニッケル酸リチウムを使用したリチウムイオン二次電池を使用。1回のフル充電約3時間(220V使用時)で100マイル(約160km)の走行が可能なため、毎日の通勤に困ることもない。なお、バッテリーは5年間の保証付きだ。
安全性能も折り紙付きで、世界各国での基準を満たすように設計されている。
また、コンパクト設計ながら機能面も充実。後方トランクの容量は約140リットルで、日常の買い物であれば十分すぎるサイズだ。
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通勤以外の日常シーンでも用途は幅広い。一人での外出が多い人にうってつけ
ほかにもシートヒーターや後方カメラ、雪や雨滴の付着を防ぐヒーテッドドアミラーなども搭載しており、ドライバーが快適に運転するための機能が充実している。
提携する中国の二輪車メーカー・Zongshen(ゾンシン)グループで製造が行われており、現在は予約販売を実施中。価格は1万8500ドル(約195万円、10月2日現在、1ドル105円で計算)で、北米での平均的な新車販売価格のおよそ半額となっている。
なお、北米ではことし11月の納品を計画中。将来的には、日本を含めた世界市場への販売も視野に入れているという。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、マイカー通勤に変更した人も多いとされることし。主に北米の通勤者をターゲットにしたSoloだが、世界各国でマイカー通勤をする人に注目を浴びる結果となったのは言うまでもない。
新しい生活スタイルが求められる中に登場したSoloによって、より省エネで効率的な通勤スタイルが実現されていくのかもしれない。
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text:佐藤和紀