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未来のダクトは段ボール製! 軽量で30年持つエコダクトの秘密

安全性向上やCO2排出量削減、工事の省人化などに貢献するエコ素材

昨年10月の所信表明演説で、「2050年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標」を宣言した菅義偉内閣総理大臣。CO2削減に向けた取り組みは次のレベルを目指す時代となってきた。その中で、建築業界で注目を集めているのが高い耐久性を誇る不燃段ボールダクト「エボルダン(R)」だ。今回は、建築・設備のライフサイクルにおいて、CO2削減実現の期待が高まる建築材料の詳細をお届けする。

温室効果ガス削減に向けて求められるイノベーション

近年、頻発している異常気象との関連性が指摘されている地球温暖化──。

仮にこのまま地球温暖化が進行した場合、2100年には2000年ごろと比べて地球の平均気温が最大4.8℃上昇するという試算も報告されている。この最悪のシナリオが実現してしまった場合、日本においてもさらなる台風の大型化や水不足、もっといえば生態系にまで深刻な影響を及ぼすかもしれない。

そんな地球温暖化の原因とされているのが温室効果ガス。中でも影響が最も大きいといわれるのがCO2だ。しかし、化石燃料を主たるエネルギー源としている現状では、産業分野はもちろん、私たちが日常的にエネルギーを使用する際にもCO2は排出されてしまう。一方で、こうした現状の打破を目指す国や企業の積極的な取り組みもあり、現在CO2排出削減に向けてさまざまな分野においてイノベーションが起こっている。

そんな中、建築現場においてLCCO2(ライフサイクルCO2/企画から廃棄までの期間に排出されるトータルのCO2排出量)を大幅削減する不燃段ボールを用いたダクトが徐々に浸透し始めているという。

それが株式会社竹中工務店、山田ダンボール株式会社、協立エアテック株式会社の3社が共同開発した「エボルダン(R)」だ。

2020年1月に竣工した横浜市新庁舎のダクトにも採用されたエボルダン

紙とアルミだけのシンプルな構成ながら高断熱性と不燃化を実現

2004年にそれまで金属が常識だったダクトの新たな素材として、リサイクル再生紙を使った不燃性段ボールダクトを開発した3社。

この不燃性段ボールダクトは、可燃性で湿気に弱いという段ボールのネックを2層構造の段ボール表面にアルミニウム箔をラミネートすることで克服。断熱性が高く、軽量で加工運搬がしやすいといった紙の特徴を最大限に引き出した新素材を作り上げた。

その後、さらなる性能向上を目指して改良に着手した3社。

そして誕生したエボルダンは、新たに3層構造の採用によって断熱性能が向上。さらに、ダクト部材の継ぎ目のジョイントを改善することで耐圧性能が600Pa(パスカル)から1000Paに高められており、金属ダクトと比べても遜色のない気密性、不燃性、防湿性、耐圧性を実現している。

エボルダンの断面構造。外ライナ(ボール紙)~5mm波板~中ライナ~3mm波板~中ライナ~5mm波板~外ライナで構成され、その外側両面に厚さ30µm(マイクロメートル)のアルミニウム箔がラミネートされる

また、紙とアルミニウム箔のみのシンプルな構造で変形が容易なエボルダンは、運搬時は平板で運搬し、現地で簡単に組み立てることができる。これは運搬回数の減少に寄与し、製造および輸送時のCO2排出量を約61%も削減するという。

加えて、従来の金属ダクト比で約1/3にまで軽量化されたことで、地震による大きな揺れが発生した場合でも、天井内部材の損傷や落下時の被害を最小限に食い止めることが可能とのこと。

目黒セントラルスクエアでの施工例。高い断熱性能を備えるエボルダンは在来工法で必要だったグラスウール保温材の施工が不要で、工事現場の省人化にも貢献

まさにいいことずくめに思えるエボルダンだが、素材が紙である以上どうしても気になるのは耐久性。いかに優れた材料であっても、短い期間で交換しなければならないようでは、維持コストの増大につながり普及は困難だ。

昨年11月17日、そうした不安を払拭するように3社は、一般財団法人 化学物質評価研究機構が行った耐久性能評価結果を公表。試用期間が30年を経過した後でも製品性能を保持することが実証されたという。

鉄筋コンクリート造マンションの法定耐用年数が47年。その中で、30年以上の耐久性能の証明は、金属ダクトから不燃段ボールダクトへ切り替える大きなきっかけとなるかもしれない。

今後さまざまな建物に採用され、エボルダンが持続可能な社会を推進する一助になることに期待したい。

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