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CO2排出量の大幅削減にも期待! JR東海が架線電圧低下を防ぐ世界初の新技術を開発

ソフトウェアを改良し、車両搭載機能で電圧低下を抑制

利用者の増加とともに運行本数も増している新幹線だが、安定運行のためには架線電圧が維持されていなければならない。これまでは地上側の電力設備を強化する方法で対策していたが、車両搭載機能で電圧低下を抑制する世界初の技術が開発された。今回は、列車の安定運行に寄与する新技術を紹介する。
TOP画像:ニングル / PIXTA(ピクスタ) カルーセル画像:JR東海

高密度ダイヤのリスクを解消する世界初の新技術

旅行やビジネス、お盆や年末年始の帰省など、移動手段として欠かすことのできない新幹線。

国土交通省の「新幹線旅客輸送量の推移」によれば、1965(昭和40)年には約3096万人だった輸送人員は、2019(令和元)年には約4億1550万人と大幅に増加。これは日本の総人口の約4倍となる計算だ。

利用者数の増加を受け、各鉄道会社は輸送力の増強に努めており、東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)では2020年3月から「のぞみ12本ダイヤ」(1時間当たり)がスタートしている。

しかし、高密度ダイヤで新幹線を運行させると架線電圧の低下を招くため、安定運行に必要な電圧を維持する対策が必要になる。

そのため従来は変電所の増設や電力補償装置の導入など、地上の電力設備を増強することで架線電圧を維持し、高密度ダイヤを実現していた。

東海道新幹線沿線に21台設置されている電力補償装置

画像提供:JR東海

運行本数の増加によって発生する電圧の低下を抑制する電力補償装置。高密度ダイヤの安定運行を支える存在といえる

画像提供:JR東海

JR東海は今年6月16日、架線電圧の維持を車両側で実現する機能を開発したと発表。

車両側で架線電圧を維持する仕組みは、世界初の技術となる。

車両側で電流をコントロールし、電圧低下を防ぐ

今回開発されたのは、N700S車両に搭載する主変換装置のソフトウェアを改良することで、架線電圧を維持できるという技術だ。

これにより、これまで地上の電力補償装置などで実現してきた架線の電圧低下を抑制する機能を車両で実現できる。

電圧低下を抑制する仕組み。対策をしていない場合は列車の本数が増えるにつれて電流の位相が遅れて電圧の低下が発生(図中央)。一方、今回の技術を用いると電流の位相の遅れが小さくなり電圧の低下が抑制される(図右)

画像提供:JR東海

今後は一部のN700Sの一部の営業車に順次この機能を搭載し、2023年2月まで機能確認試験を実施していく予定だ。

仮に東海道新幹線の全編成に導入が完了すると、現状の約1割の変電所と約半数の電力補償装置が不要になると見込んでいる。

また、年間約2000万kWhの電気使用量を低減できることから、約3億円の電気料金と約1万トン相当のCO2排出量の削減につながると期待している。

安全・安定した列車運行が世界でも注目されている日本の鉄道──。

さらなる安定運行を目指す鉄道会社の取り組みに今後も期待したい。

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