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過酷な環境にも適応! リコーが3Dプリンター製マイクロ水力発電装置を開発

下水処理場に設置可能、高強度かつ軽量な装置の短期間作製を実現

株式会社リコーは、下水処理における消費電力低減の取り組み・研究において、3Dプリンター製マイクロ水力発電装置を開発し、数kWの発電に成功したと2023年4月に発表した。従来の金属製マイクロ水力発電装置と比較して、機器の軽量化と作製期間の短縮を併せて実現した今回の研究の詳細を解説する。

年間電力費約1100億円、下水処理の知られざる課題

下水処理では、ごみや砂を沈殿させた下水の汚れを微生物の力で分解するプロセスがある。この際、タンク内に酸素を送り込み微生物を活発に働かせる目的で、約75kWh/1000m3の電力が必要で、年間電力費は約1100億円に相当()する。そのエネルギーコスト低減は省エネ観点からも研究・本格実用化が急務とされている。

そこで活用が期待されるのが「マイクロ水力発電」だ。これは上下水道水、農工業用水など水の“未利用エネルギー”を活用した水力発電で、一部の下水処理施設でも設置されている。

だが、水車効率が低く出力が小さいこと、発電装置の機器コストと設置コストが高いこと、機器重量が大きく現場に負担を与えること、さびやすい環境で現行の発電装置の使用が難しいなど、普及への課題が山積しているのが現状だ。

※国土交通省「下水道政策研究委員会 脱炭素社会への貢献のあり方検討小委員会報告書」参照

下水処理施設におけるマイクロ水力発電装置の活用イメージ図

画像提供:リコー

こうした課題の解決を目指し、マイクロ水力発電機の開発や、地域との協業で「電力の地産地消」を推進するリコーは技術実証・応用研究に取り組んでいる。

今年3月には国土交通省が主導する下水道応用研究の分野で同社による提案が採択され、下水道施設における創エネルギー化技術の検討が実施された。

バイオマス材料製の羽根で金属並みの強度を実現

技術の検討は、リコーの社内スタートアップで3Dプリンターを活用し独自形状の水力発電用プロペラの作製実績を持つ「WEeeT-CAM(ウィットカム)」が研究代表をつとめた。低落差型マイクロ水力発電専門メーカーのシーベル株式会社、シミュレーションの研究を行う金沢工業大学機械工学科の山部 昌・瀬戸雅宏研究室の産学連携により行われた。

検討に使用されたマイクロ水力発電装置は、シーベルが水車形状を設計。リコーの3Dプリンターテクノロジーを用いて、バイオマス由来の材料を使用した3Dプリンター製の羽根を組み込んだ。

また、1つの装置に発電機を2機搭載し、高効率な発電を可能にした。

今回作製したマイクロ水力発電装置(イメージ)。青い筒状の2つの水車にバイオマス由来材料製の特殊な水車羽根が用いられた

この装置を、一般的な3Dプリンター材料で作製した場合と比較したところ、水車の羽根は金属製に匹敵する2倍以上の強度を実現。水中に長期間漬けていても強度が維持され、従来のマイクロ水力発電装置にも使用できることが分かった。

また、本装置は下水処理場の既存の水路に水車をそのまま置ける開放型タイプで、水力発電用のバイパス水路など施設側の新設工事などは不要となり工事コストも削減できる。

性能を検証するため、静岡県内にある下水処理場にて実証実験を実施。処理水を河川に放流する部分にマイクロ水力発電装置を設置した。実験では数kWの発電を実現した

今後は、この装置で発電した電気を処理場内の防災拠点での非常用電源やモビリティのバッテリーシステムへの活用、さらに海外の新興国や欧米などでの導入も視野に検討を継続するという。

3Dプリンターとバイオマス、最先端技術の組み合わせによる社会課題の解決、そのさらなる発展に期待したい。

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