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外部電源不要! 糸で編み上げる無給電圧力センサを京都工芸繊維大学が開発

電磁波の利用で自動運転車のハンドル用センサなどへの活用に期待

京都工芸繊維大学の研究グループが、外部から電力供給せずに動作可能なテキスタイル(編物)型圧力センサを2023年1月に開発した。糸だけを用いて1回で編み上げられ、手触りもよく、電気自動車(EV)や自動運転車のステアリングハンドル用のセンサなどへの活用が期待されている。軽量で通気性がよく、洗濯も可能なアイテムの詳細を紹介する。

軽量かつ通気性に優れた圧力センサ

近年、目覚ましい進歩を遂げている自動運転システムの技術開発により、部分的な自動運転が可能になりつつあるが、いまだドライバーの介在が必要なのが実情だ。

そこで重要になってくるのは、ドライバーがハンドルを握ったか握らないかを検知するハンズオン/オフの機能であり、この検知にはセンサが欠かせないものとなる。

自動運転はいまだドライバーの介在が必要だ

(C)metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

京都工芸繊維大学 繊維学系の石井佑弥准教授、Yu Annie助教らの研究グループはこれまでに、健康やスポーツをサポートする衣料としてウェアラブルエレクトロニクス分野やIoT分野への応用展開を見据えて、導電性糸と絶縁性糸のみを用いて1回で編み上げることが可能な静電容量方式のスペーサーファブリック型圧力センサを開発。

スペーサーファブリックとは、ニット生地の一種で、2枚の表面層をパイル糸でつないだものであり、クッション性に優れ、自動車用シートやリュックサック、布団、中敷きなどに使われている。

その進化版となる今回の研究では、同じ構造を用いて異なる動作システムのセンサの開発を行った。

開発した圧力センサをハンドルに装着し、出力電圧を測定、検証した

資料提供:京都工芸繊維大学プレスリリース(図2)、2023年1月19日、「無給電動作可能なファブリック型タッチ/圧力センサを開発」より転載

新たなセンサは、ダブルベッドの横編み機により1回で編み上げた5層構造のスペーサーファブリック構造。

表面および裏面のそれぞれの2層は、編み機の表裏のベッドで編まれる2層の編み構造となっている。

開発した圧力センサに指が接触し、押し込んだときの出力電圧検出回路(a)と出力電圧(b)。キャパシタ両端に生じる電圧を計測すると、指が非接触の場合には若干の電圧を出力し、指が触れると出力電圧が大きく増加。押し込むとさらなる増加が見られた

資料提供:京都工芸繊維大学プレスリリース(図1)、2023年1月19日、「無給電動作可能なファブリック型タッチ/圧力センサを開発」より転載

中間層のスペーサー層のモノフィラメントは、表面および裏面のそれぞれの2層の編み物を接続し、スペースを形成。絶縁性の綿糸が導電性の銀メッキ糸の前面に出るようにプレーティングすることで、表裏それぞれの最表面に絶縁性糸層が現れ、内側に導電性糸層が現れる5層構造を実現している。(上図左参照)

編み上げたセンサのシートを約W20×D20(mm)のサイズにカットし  特性を評価したところ、平均重量は約0.50gと軽量で、材料費は約89円と安価に見積もることができた。

見積もった材料費の約99%が導電性糸の材料費のため、どのような導電性糸を用いるかで材料費は大きく変わるという。

無給電状態でのセンシングが可能

開発したセンサは、環境中に常時放散されている電磁波を利用できるため、外部電源不要の無給電状態であるにもかかわらず、出力される直流電圧値の大小により人のタッチと押圧を検出するタッチ/圧力センサとして動作することが示された。

指と接した金属円盤端子を用いた接触と押し込みの定量実験

資料提供:京都工芸繊維大学プレスリリース(図3)、2023年1月19日、「無給電動作可能なファブリック型タッチ/圧力センサを開発」より転載

人の指による圧力印加(人の指で押すこと)では印加圧力値の定量評価が困難だったため、指と接した金属円盤端子を用いた接触と押し込み の定量実験も実施。

印加圧力は40kPa(Pa/パスカル=空気圧などの圧力の大きさを示す単位。kPaはPa=N/m2の1000倍)程度で、上下の導電糸層がショートし出力電圧が0.0Vとなる過度の押し込み状態の特性が見られる(上図右グラフ参照)が、スペーサー糸の直径などを変化させることで開発したセンサの硬さや厚みも変化させることができるため、この出力電圧が0.0Vとなる印加圧力値はカスタマイズも可能であることが分かった。

近年、自動運転技術の開発が進められる中、人による運転と自動運転の切り替えは、ドライバーがハンドルを握ったかどうかの感知が重要になってくる。

そうした中で、今回開発されたセンサは、無給電状態での感知が可能なだけでなく、糸で編み上げているため軽量で、通気性もよく、洗濯も可能。省電力化や検知システムの簡素化、ドライバーの快適性の向上への貢献に大いに期待ができそうだ。

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