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キヤノンがプラスチックの新たな選別技術でリサイクルをさらに促進

黒色プラスチックの高精度選別でサーキュラーエコノミーを加速

キヤノン株式会社は、プラスチック片のリサイクルに際し、分別のための判別が難しい黒色プラスチック片とその他の色のプラスチック片を高精度に同時選別できる「トラッキング型ラマン分光技術」を開発したと今年7月に発表。プラスチック片の選別の効率化とリサイクル量の増大・推進に貢献する技術として、実用化が期待される。その詳細を紹介する。

プラスチック片を無駄なく分別、資源を最大限に生かす

プラスチックをリサイクルするには、ABS※1、ポリプロピレン(PP)などの種類や色を正確に選別する必要がある。種類の選別は主に近赤外分光法※2が用いられるが、この方式では、家電製品や自動車の内装に多く使用されている黒色プラスチック片は可視光を通さず反射しないため選別できない。このため黒色プラスチック片を含む廃プラスチックは、大半がサーマルリサイクル※3されていた。

黒色プラスチック片の計測は、レーザー光を照射するラマン分光法で行えるが、散乱する光が少なく、他の色のプラスチック片に比べて計測に時間を要する。このため黒色プラスチック片の選別、リサイクルの拡大・推進には、計測を高速化し多量の処理を可能にする必要があった。

※1…アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)からなるプラスチック。熱と衝撃に強い特徴を有する
※2…物体に近赤外線を照射し、反射や透過など物体特性に応じた光の吸収を測定し樹脂の種類を特定する方式
※3…廃プラスチックを焼却した際の熱エネルギーを再利用すること

ラマン分光法の仕組み。レーザー光を照射された物質が発する散乱光には、物質の情報組織を含むラマン散乱光が含まれ、これを解析することで物質の素材を特定できる

画像提供:キヤノン株式会社

キヤノンはこの課題に対して、ラマン分光法と同社の計測・制御機器を組み合わせた「トラッキング型ラマン分光技術」を確立させ、解消の糸口を見いだした。

独自の技術で計測・制御機器を新たに開発

トラッキング型ラマン分光技術による選別では、まず高速搬送するベルトコンベヤーへ投入されたプラスチック片の位置や色の明るさ、大きさを、画像認識システムが識別。この情報を基に非接触測長計がベルトコンベヤーの移動速度を正確に計測する。

トラッキング型ラマン分光技術のイメージ図。画像認識システム(a)でプラスチック片の位置や色の明るさを判別。ガルバノスキャナー(b)でレーザー光をプラスチック片一つ一つに照射。独自開発の分光ユニットでラマン散乱光を計測する

画像提供:キヤノン株式会社

次に、ガルバノスキャナーに取り付けられた専用ミラーによってレーザー光がプラスチック片一つ一つへ正確に追従しながら照射され、反射光や散乱光が生じる。これを受光ユニットで採取、散乱光は独自開発の分光ユニットでラマン散乱光として計測する。

非接触測長計(左)とガルバノスキャナー(右)

画像提供:キヤノン株式会社

分光ユニットのイメージ

画像提供:キヤノン株式会社

最終段階では別途に独自開発された識別ソフトがラマン散乱光を解析する。このソフトは設定を変更することで、さまざまな種類のプラスチックの高精度な選別が可能となる。

黒色と他の色のプラスチックで計測時間に差が生じる課題は、照射前に対象一つ一つの形状や色の明るさを識別することでレーザー光の走査時間を変更、多色のプラスチックが混在していても選別に必要な時間を、照射対象ごとに調整でき、リサイクル可能なプラスチック片の高生産性と高精度の選別の両立を実現させた。

今回の技術確立により資源循環が促進され、サーキュラーエコノミーの拡大・推進へ、キヤノンは大きな一歩を踏み出したといえる。

この技術が広くリサイクル事業者に取り入れられることで、再利用可能なプラスチックの量が増え、持続可能な未来への取り組みが加速していくことを期待したい。

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