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天然素材の撥水構造を再現! 東レがフッ素フリーの撥水ストレッチ素材を新開発

バイオミメティクスを応用し、繊維そのものが水をはじく構造に

東レ株式会社は、撥水(はっすい)ストレッチテキスタイル「DEWEIGHTTM(デューエイト)」を開発した。この繊維は、バイオミメティクス(生物模倣)の発想から生まれたマルチラフネス構造により、有機フッ素化合物(PFAS)を使用せず優れた撥水性を発揮。近年、人体への影響が懸念されるPFAS不使用という観点からも注目される新素材の詳細を解説する。

社会課題である撥水素材の有機フッ素化合物

梅雨の長雨以外にも、ゲリラ豪雨や線状降水帯といった異常気象など突然の雨に遭遇する機会が多い中、「雨の日でもおしゃれをして、快適に出掛けたい」という声と共に、撥水素材の需要もさらに高まっている。

従来、多くの撥水素材は生産工程において生地への撥水剤の塗布や含侵(がんしん:素材に液体を染み込ませる技術)によって撥水機能を与えてきた。この際、撥水剤としてフライパンなどで食材のこびり付きや焦げ付きを防止するコーティング剤「フッ素加工剤」としても知られるPFASが使われてきた。

PFASとは数千種類存在する有機フッ素化合物の総称だが、人体に蓄積することによる有害性が指摘されているものもあり、世界的に使用の規制が進んでいる化学物質でもある。

PFASフリーな撥水加工で優れた撥水性を発揮する繊維の開発は、着用快適性に加えて安全性や環境への配慮を実現させる。東レはこの課題に取り組み、解決の糸口を自然界に見いだした。

ヒントは自然の中に! マルチラフネス構造で撥水

ハスの葉やチョウの羽はサイズの大きい凹凸構造の上に、さらに微細な凹凸構造が形成される。この「マルチラフネス構造」は、生体と水滴の間にわずかな空気の層が複雑に作り出され、水滴を除去するという。

このように自然界でみられる生体からヒントを得た「バイオミメティクス」の発想を基に、東レはマルチラフネス構造をテキスタイルで再現する研究に取り組んだ。

そしてマルチラフネス構造を実現させたのが、同社の有する「NANODESIGN(R)」技術だ。

従来の合成繊維技術では繊維の細さや形に制限があったが、東レでは独自にポリマーの流れを分割し、細分化に成功。繊維の形状やナノレベルでの精密さ、多様性をコントロールし、繊維にさまざまな機能を付加できるようになった。

「DEWEIGHTTM」外観(左)、マルチラフネス構造が確認できる表面(中央)、さらに糸束の断面はスパイラル構造が確認できる

資料提供:東レ株式会社

織物生地を作るには原糸が必要だが、「DEWEIGHTTM」は繊維断面を精密に制御した原糸と、形態の異なる2種類のスパイラル構造を発現させる高次加工技術によって、天然素材のようなマルチラフネス構造を作製。優れた水滴除去性(生地の表面に付いた水が染み込まず、滑らかに転がり落ちる撥水性能)を、PFAS不使用で実現させた。

撥水性に加えて、適度なストレッチ性や天然素材のようなナチュラルな質感、肌離れの良いさらっとした着心地を兼ね備えており、アウターからボトムスまでタウンユース向けに適した素材に

画像提供:東レ株式会社

同社では、2025年春夏シーズンからアパレル素材としてメンズ・レディース向けに「DEWEIGHTTM」を用いたアウターやボトムスのアイテム展開を予定し、2025年度には20万m、2027年度には50万mの販売を目指す。

今後も防水・防風などアウトドア環境での使用を想定した開発にも取り組むという同社。

制限されがちだった悪天候でのファッション性の追求、その可能性が環境に配慮しながら広がりを見せる機運が高まっている。

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