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慶大の光ネットワーク研究施設に、Beyond 5G時代の次世代情報通信インフラを見据えた古河電工の空孔コア光ファイバを敷設

超低遅延情報通信ネットワークを実現する“脱ガラスコア光ファイバ”とは

慶應義塾大学と古河電気工業株式会社(以下、古河電工)は、慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センター(神奈川県川崎市)に「空孔コアファイバケーブル」を敷設し、複数のビル間を結ぶ超低遅延ネットワークキャンパスの実験を開始した。来る次世代情報通信インフラの社会実装に向けて注目の本取り組みについて解説する。

次世代情報通信インフラ時代の到来に向けて

世界中でデータ通信が日常的に行われ、通信容量も増大していく情報通信インフラ。近年は自動運転やロボットのリモート操縦、金融などの高速取引等のサービス実現における低遅延性(通信方式等の改良により、情報を遅れることなく伝えられること)の確保も重要視されている。

こうした産業・社会活動基盤の変化を見据えて、2030年代には次世代の情報通信インフラ「Beyond 5G(6G)」の導入が見込まれている。Beyond 5Gは「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」といった5Gの特徴をさらに高度化させ、「超低消費電力」などの新たな機能の実現が期待されている。

この「Beyond 5G時代」到来に向けた最先端の光のメトロ/アクセス技術の研究拠点として、総務省の支援のもと産学連携施設として2023年に開所したのが、慶應義塾大学新川崎タウンキャンパス内の「慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センター」だ。

同センターは、自動運転やリアルハプティクス(感覚通信)など最先端のアプリケーションを備えている。

国内外の諸機関が実験を行うオープンラボとして機能する同センターでは、これらの実験も行える超低遅延ネットワークをキャンパス内に構築。総務省「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発」プロジェクトの課題II「大容量・高多重光アクセス網伝送技術」の一環として、この環境を整えるために敷設されたのが、古河電工が開発した次世代光ファイバ「空孔コアファイバ」だ。

エネルギー密度1000倍! 限界を打ち破る次世代光ファイバ

空孔コアファイバは、本来は光が閉じ込められない空気の中=空孔に、新たな原理で光を閉じ込め伝播する革新的な光ファイバだ。

従来のガラスコア光ファイバと比較して30%以上の低遅延化(信号伝送遅延のほぼ限界)を実現。

Beyond 5G時代に向けた超低遅延の光通信ネットワークの実現を可能にする。

ガラスコア光ファイバ(左)との断面比較。コア(光の通り道)の空孔を、空孔配列構造によるクラッド(コアに光を閉じ込める障壁)が包み込む

資料提供:古河電気工業株式会社

空孔コアファイバによる遅延特性の改善度。空気中を光が通過することで信号伝送速度の限界に近い光遅延を実現した

資料提供:古河電気工業株式会社

加えて、空孔コアファイバは伝送できる波長数を大幅に増やす「超多波長」により通信チャネル数を10倍以上に増やすことが可能、ハイパワー耐性は従来のガラスコアファイバと比較して1000倍に向上。これにより光ファイバによるIoTへの電力供給など適用範囲の大幅な拡大を実現できる。

また、映像配信や携帯電話基地局において、アナログ信号をデジタル信号に変換せず直接光ファイバで送っても波形のゆがみが生じない特徴から、電子回路の大幅簡素化による省電力化も期待できる。

空孔コアファイバの実用化には段階的な導入・実装を進める上での従来の光ファイバとの互換性を持たせる必要があり、世界的な課題となっていた。古河電工グループのOFS研究所(米国ニュージャージー州)はこの問題を世界で初めて解消、空孔コアファイバを実用に近いレベルでケーブル化した。

慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センターにおける空孔コアファイバケーブル網のイメージ図

資料提供:古河電気工業株式会社

空孔コアファイバ敷設により同センターの超低遅延ネットワークの通信伝達速度は、従来の約1.5倍となり、世界で初めて実用に近い環境で、世界中の研究者が空孔コアファイバを用いた実験も行えるネットワークを構築した。

慶應義塾大学は同センターを活用し、複数のコンピュータリソースをタイトに結合したリソースプール実験、さらには、Local 5Gと組み合わせたネットワークコントロール型自動運転、感覚通信であるリアルハプティクスなどの超低遅延性の応用実験を実施。

また、古河電工は敷設された空孔コアファイバケーブルの特性を計測・評価し、同ケーブルの実用化を推進していく。

社会・経済活動を支える情報通信インフラ──。

その持続的な維持・発展にも貢献するBeyond 5G時代へ向けた産学連携の取り組みに期待したい。

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