2024.10.24
花王と豊田自動織機、倉庫でのトラック積み込みの完全自動化を実現
自動運転フォークリフト×次世代倉庫運用で物流の2024年問題改善
花王株式会社は株式会社豊田自動織機との協働で、豊橋工場(愛知県)の次世代倉庫にて自動運転フォークリフトによるトラックへの積み込み作業の実用化に日本で初めて成功。2024年10月より本格導入・稼働を開始した。少量多品種を生産する工場から次世代倉庫内への製品入庫~出庫、トラックへの積み込みまでをオートメーション化し、業務効率向上と労働力不足に対応。その詳細を解説する。
入庫、仕分け、出庫を全て自動化した次世代倉庫が完成
昨今、物流業界では「物流の2024年問題」※を背景に、業務の効率化・オートメーション化の必要性が高まっている。
花王では「豊橋コネクテッド・フレキシブル・ファクトリー」構想を進める中で、労働環境改善、能率的で柔軟な働き方の実現などを目指している。
この構想は、生産・物流機能一体型運営による無駄のない製品の供給、リードタイム短縮、物流コスト低減、CO2排出の抑制を図り、自動化を進めるもの。同時に、ヘアケア・スキンケアなど多様化するニーズへ対応し、特徴的な商品を必要な数だけ届けることで、資源や環境への負担を削減し、循環型社会に貢献していく。
※「物流の2024年問題」に関する記事:物流の2024年問題~持続可能な物流の未来に向けて~
-
2023年3月に完成した花王豊橋工場の次世代倉庫
画像提供:花王株式会社
-
工場から製品を入庫、仕分け、出庫までを自動化し、柔軟な物流体制への対応を進めている
画像提供:花王株式会社
しかし、出庫後のトラックへの積み込み作業は、荷物や車種ごとの異なる規格への対応、停止位置の誤差調整、長距離輸送に耐え得る荷崩れ防止の養生も必要なことから、経験豊かな有人によるフォークリフト運転技術が必要であった。
自動運転技術×AIで実現したオートメーション化
2021年、花王は積み込み作業の自動化に向けて、豊田自動織機と協働を開始。2024年7月、豊田自動織機が開発した「トラック荷役対応自動運転フォークリフト」を採用し、豊橋工場での積み込み作業の自動化に成功した。
トラック荷役対応自動運転フォークリフトは、対象物にレーザー光を照射、反射光を測定し対象物までの距離を測定する「3D-LiDAR(ライダー)」センサーを用いてトラック位置を検出、ガイドレスでの自動運転を行う。搭載AIが画像認識・ディープラーニングを行い、マーカーレスでパレット位置・姿勢検出も可能だ。
-
トラック荷役対応自動運転フォークリフトは荷役位置を判断しながらトラックへのアプローチ走行経路を自動生成。停車位置や積荷の姿勢が一定でない状況下でも荷役を行うことができる
画像提供:花王株式会社
花王は、ロボットフレンドリーな倉庫環境の構築、製品入庫からトラックへの積み込みまでをスムーズに進める自動化オペレーションを設計。さらに、トラック輸送にも対応した業務プロセスの構築や倉庫内の設備を制御するITシステム(WCS:Warehouse Control System/倉庫制御システム)との連携を行った。
次世代倉庫のポテンシャルを発揮するため両社は仕様検討を重ね、最後の課題として残っていたフォークリフトによる商品のトラック積み込み作業の現場での実用化に至った。花王と豊田自動織機は引き続き、さらなる効率化を目指し協働を続けるという。
また、花王は豊橋工場以外にも、国内外の生産・物流拠点への自動運転フォークリフトの導入も検討中。
業界内でも広く活用されるよう知見を広げ、労働力不足や能率的で柔軟な働き方への対応という社会課題の解消を進めていく。
-
この記事が気に入ったら
いいね!しよう -
Twitterでフォローしよう
Follow @emira_edit
text:サンクレイオ翼