
2025.5.14
世界初! アンモニアから生成した水素を活用したアスファルトプラント開発に着手
日工がアンモニアからオンサイト変換した水素を加熱・乾燥工程に利用
プラントを中心とした建設機械のメーカー・日工株式会社(兵庫県明石市)は、アンモニア(NH3)から生成された水素(H2)を利用した水素バーナー対応型アスファルトプラントの開発に世界で初めて着手した。燃焼特性上の課題を抱えるアンモニアを水素と窒素(N)の混合ガスにオンサイトで変換し燃料として利用、本格事業化を目指す今回の取り組みを解説する。
(<C>カルーセル画像:sammy_55 / PIXTA<ピクスタ>)
アスファルトプラントでのCO2削減を目指して
アスファルトプラントは、アスファルト合材を製造する施設を指す。アスファルトを骨材、フィラーなどと混合、生産された合材は耐久性に優れ、道路舗装などに重用されている。
このアスファルトプラント国内シェアの80%を有しているのが日工だ。
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アスファルトプラントの一例。冷めると固まってしまうアスファルト合材は、短時間で現場に運ぶ必要があるため、全国各地に多数のプラントが設置されている
(C)sammy_55 / PIXTA(ピクスタ)
日工は2050年のカーボンニュートラル実現を目指す中、自社事業で排出される二酸化炭素(CO2)の削減に取り組んでいる。
同社のアスファルトプラントからは年間 約115万tのCO2が排出され、この量は日本国内のCO2総排出量の0.1%に相当する。
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アスファルトプラントにおける加熱・乾燥工程。ドライヤーの燃料に重油を使用する装置構成のため、燃焼時にCO2を排出する
資料提供:日工株式会社
また、2021年に閣議決定された「地球温暖化対策計画」では、2030年度までの温室効果ガス46%削減が求められている。こうした背景から、国内では発電、製鉄など化石燃料からのエネルギー転換が困難とされた事業でもCO2削減に向けたさまざまな施策が始まっている。
アンモニアと水素、それぞれの特性を組み合わせて活用
日工は、アスファルトプラントでのCO2排出の主な要因である燃料を転換するための技術開発を実施。その過程で、CO2を排出しないアンモニアと水素それぞれの特性を生かすことでの課題解決に取り組んできた。
水素は近年、CO2を排出せず高い燃焼性を有するクリーン燃料として注目を集めているが、燃焼時に窒素酸化物(NOx)が多く発生する。同社はバーナー内部と周辺部品の最適化で低NOx化を実現したが、液化水素の運搬、貯蔵には-253℃の極低温を維持する必要があり、コスト面で課題が残っていた。
そこで着目したのがアンモニアだ。アンモニアは燃焼速度が遅いため、大型燃焼炉と同様にNOx発生を抑える技術や設備が求められるが、貯蔵性や搬送性に優れた特性を持つ。
日工は、これらの特性を組み合わせて活用するべく、アンモニアから変換した水素を利用したアスファルトプラント実装に向けた開発に動きだした。
2024年2月、アンモニアから生成された水素と窒素の混合ガスを使用した燃焼試験を実施し、500kWの水素バーナーでの専焼が可能であること、燃焼時に発生するNOxもプラントの規制値以下に抑えられることを確認した。
この過程を経て日工は、最小限の付帯設備でアンモニアから水素にオンサイト変換する方式を採用。低NOxかつ水素バーナーをフル活用できる環境を整え、アンモニアの高い貯蔵性と水素の高い燃焼性を両立、次世代エネルギー利用を実現させる。
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アスファルトプラントでの加熱・乾燥工程でアンモニアから変換した水素を燃料として使用する場合の装置構成
資料提供:日工株式会社
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アンモニアから生成された水素と窒素の混合ガス燃焼火炎
画像提供:日工株式会社
日工は2025年3月に前田道路株式会社(東京都品川区)と共同で実証実験を実施。
実験を通じてシステムの実用性や効果を検証し技術向上を図り、2027年までにアスファルトプラントへの実装を予定している。
アンモニアがより一般的な燃料として流通する未来を見据え、同社はアスファルトプラントでの次世代エネルギーへの転換を推進、早期のカーボンニュートラル実現を目指し突き進む。
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text: サンクレイオ翼