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世界初! NTTがドローンによる雷の誘発・誘導に成功

“空飛ぶ避雷針”が街やインフラを守る雷被害ゼロ社会の実現への第一歩

日本電信電話株式会社(以下、NTT)は2024年12月13日、ドローンを使用し雷を誘発・誘導する実験に成功。ドローンの耐雷化技術と電界変動を利用した雷誘発技術の有効性を、世界で初めて実際の雷で実証した。雷の発生メカニズムの研究に寄与し、雷被害低減への貢献が期待される本実験を解説する。
(<C>メーン画像左:Nori / PIXTA<ピクスタ>)

雷を発生させ、安全な場所へ誘う技術を考案

落雷は、時に私たちの生命を脅かし生活に大きな被害をもたらす。中でも通信設備への落雷は、インフラ破損が社会活動へ多大な影響を及ぼしかねない。

NTTグループは、避雷針等を活用して通信設備への落雷対策を講じている。しかし避雷針が雷を受ける範囲は限定的であり、風力発電の風車や屋外イベント会場など設置が困難なケースもある。また、雷は発生メカニズムが十分に解明されていないため、被害全ての解消には至っていない。

1888(明治21)年、電気学術の調査・研究と広報・普及を目的に創立された学会である一般社団法人 電気学会の技術報告「高度情報社会の雷害問題の実情と研究課題」(2002年)では、通信設備への落雷による被害額は、全国で年間1000~2000億円相当に上ると推定。こうした背景からもNTTは、重要インフラや街への落雷そのものをなくす技術の実現を目指し研究を進めてきた。

そこで着目されたのが、近年発展著しいドローンを「耐雷化」させ、ドローンで雷を積極的に誘発、安全な場所へ誘導する「ドローン誘雷」の手法だ。

ドローン誘雷には、雷が落ちてもドローンが飛行し続ける耐雷化と、雷雲下で飛行するドローンへ雷を積極的に誘発させる必要がある。

そこでNTTは、ドローンに雷が直撃しても誤作動・故障せず、市販のドローンにも具備できる耐雷ケージを設計。さらに雷を誘発するためドローンと地上間を導電性ワイヤで接続、地上側の高耐圧スイッチでドローン周囲の電界強度を変化させる手法を考案した。

実証実験に用いられた耐電ドローン。耐雷ケージは金属製シールドで、雷が直撃した際に流れる大電流を迂回(うかい)、ドローン本体に雷電流が流れることを防ぐ

画像提供:NTT

ドローンで人々を守る、雷被害のない街づくり

2024年12月~2025年1月、NTTが考案した手法によるドローン誘雷実証実験が、島根県浜田市山間部の標高約900m地点、実際の雷雲下で実施された。

実験では、大気電界を測定する装置「フィールドミル」で地上電界を観測。雷雲が接近し、付近の電界強度が高くなったタイミングで、耐雷ケージを具備したドローンを高度約300m(標高約1200m)まで飛行させ誘雷を試みた。

実験イメージ。フィールドミルで電界強度の上昇を確認した時点で、導電性ワイヤでつないだ耐雷ドローンを高度約300mまで飛行させ、地上スイッチでドローンと地上を導通させた

資料提供:NTT

さらに、2024年12月13日、雷雲の接近を確認しドローンを飛行させたところ、導電性ワイヤへ大電流が流れ込んだ。このことでドローンによる雷誘発を確認。さらに地上の電界強度に大きな変化も確認された。

2024年12月13日の地上電界強度の推移。雷誘発直前に導電性ワイヤと地面の間に2000V以上の電圧が生じ、ドローン周囲の電界強度の急激な変化が確認された

資料提供:NTT

この結果、ドローンによる誘雷に世界で初めて成功。ドローンは誘雷時に耐雷ケージの一部が溶断したものの、誘雷後も安定した飛行を続け本体の耐雷性も確認された。

NTTがドローン誘雷で目指すソリューションのイメージ

資料提供:NTT

NTTでは今後は、ドローン誘雷の成功率を上げるための高精度な発雷位置予測、および雷の発生メカニズムに関する研究開発を推進する予定であり、さらに誘雷した雷のエネルギーを蓄積・活用する研究開発にも取り組んでいくという。

社会を守りながらエネルギーを生み出す──。

NTTの挑戦にいやが上にも期待が高まる。

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