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人気駅弁「峠の釜めし」の容器から建築用タイルを製造!

埼玉工業大学がサーキュラーエコノミー社会に対応した再利用技術を開発

埼玉工業大学(深谷市)工学部生命環境化学科環境物質化学研究室の本郷照久教授(兼クリーンエネルギー技術開発センター長)の研究チームは、陶器製の容器から内装⽤タイル材を作製する技術を開発。株式会社 荻野屋(群馬県安中市)の駅弁「峠の釜めし」の釜から建築用タイルを製造、食後の容器の有用的な再利用を可能にした。

駅弁の容器を資源化! サーキュラーエコノミーに貢献

「峠の釜めし」は1958(昭和33)年より国鉄(現・JR東日本)信越本線の横川駅(安中市)で発売。長い列車旅の際、「温かい弁当を食べたい」という乗客の声をもとに、荻野屋は栃木県で生産される陶器・益子焼の土釜を容器に採用した。以来、これまでに累計約1億8千万個が食されたという駅弁を代表する人気商品となった。

「峠の釜めし」

(C)trikehawks / PIXTA(ピクスタ)

荻野屋は近年、食後の釜の回収を進めているものの、年間回収率は30%ほどにとどまっている。

また、使⽤経路不明の釜は回収後に粉砕処分されるため、使⽤済みの釜を新たに活⽤するアイデアが求められていた。

横川駅などに「峠の釜めし」の釜の回収箱を設置

(C)tarousite / PIXTA(ピクスタ)

この課題に、本郷教授の研究室は物質化学ベースの研究からアプローチ。新規リサイクルシステムの開発によって、ごみとして処分される廃棄物を未利用資源として活用。サーキュラーエコノミーの社会実装に貢献すべく、タイル材としての利用と技術開発を模索した。

古くから建築材料として重宝されるタイルは、国内では良質な粘⼟資源が枯渇しつつある。中には閉⼭した鉱⼭も存在しているのが現状である。また、⼀般的なセラミックタイルは焼成に900~1300℃の⾼温処理が必要であり、近年は製造過程のエネルギー消費による環境負荷が問題視されている。

こうした背景から、同研究室は「峠の釜めし」の釜の再利⽤と環境負荷の低減を両⽴する技術を開発した。

高温処理を行わず、陶器を良質なタイル材に!

今回、開発された技術は「使用済み陶器製弁当容器からのジオポリマータイルの作製」と題して学術雑誌「環境資源工学」にて発表。高温の熱処理や特殊な化学薬品を使用する複雑な処理工程を必要とせず、サーキュラーエコノミー時代に対応した環境負荷を低減させる技術である。

開発過程では、まず「峠の釜めし」の釜の成分を詳細に分析。その結果、釜は石英とムライトの結晶粒子が焼き固まって形成されていることが分かった。

この釜を環境に優しいタイルとして再利用するために、「メカノケミカル処理」(粉末状にした釜に機械的エネルギーを加え、結晶の一部を非晶質化する処理)と「ジオポリマー化反応」(非晶質化した粉末にアルカリ活性剤を加え、60℃で反応を進める)の技術を適用した。

メカノケミカル処理装置。研究では結晶の一部を非晶質化し、後の化学反応を促進させた

画像提供:埼玉工業大学

これらの過程を経て、内装用として十分な強度を持つタイル状の硬化体を作製。この手法により、高温焼成を必要とせず環境に優しいタイル製造が可能となった。製造されたタイルは、曲げ強さがJIS A 5209規格で定められた屋内用タイルの要求を満たし、最大で48.3 N/mm2に達した。

本研究の処理プロセス。ジオポリマー化反応は製造時のCO2排出を抑え環境負荷の低減に貢献

画像提供:埼玉工業大学

今回の技術はさまざまな材料での応用も可能であり、廃棄される陶器類や耐火れんが、瓦などへの幅広い適用も期待される。

また、処理に際し多様な形態に固化させることもでき、タイルの他、れんが状の建材、ブロック、パネルなどの製造にも今後活用が想定される。

本郷教授の研究室は、これらの再利用技術と製品バリエーションの開発を目指して、さらなる研究を推進させる。

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