
2025.9.29
サントリーがカルコパイライト太陽電池で稼働する自動販売機を設置
PXPと共同で次世代型太陽電池の利活用に向けた実証実験を開始
サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)と太陽電池ベンチャーの株式会社PXP(神奈川県相模原市)は、2025年7月より世界初※となるカルコパイライト太陽電池で稼働する自動販売機の実証実験を開始した。1年間にわたりカルコパイライト太陽電池の実用性や電力供給能力を検証する。
※サントリー、PXP調べ(発表日時点)
屋外耐久性、耐衝撃性に優れたカルコパイライト太陽電池
屋外の自動販売機に太陽光パネルを設置する場合、従来のパネルは硬く分厚い結晶型のシリコン太陽電池と、太陽電池を覆う強化ガラスなどの部材により重量がかさみ、架台や屋根など付帯設備が必要となる。また、付帯設備のための設置場所や、自動販売機1台につき設置できるパネルの数にも限りがある。
こうした中で普及が期待されているのが、軽量で柔軟性に優れた「次世代型太陽電池」だ。
次世代型太陽電池は、材料となる鉱石に応じてペロブスカイト結晶構造の材料を発電層に用いた「ペロブスカイト太陽電池(有機物半導体系)」、カルコパイライト(黄銅鉱)と同様の結晶構造を持つことに由来する「カルコパイライト太陽電池(無機化合物半導体系)」などがある。カルコパイライト太陽電池は軽量で曲げることが可能、かつ屋外耐久性、耐衝撃性に優れるといった特徴がある。
サントリーは、自動販売機設置場所の拡大、および自動販売機の災害時の電源としての活用を想定し、次世代型太陽電池による自動販売機稼働の実証実験を実施。実験には、国産フィルム型次世代太陽電池の研究開発と量産化に取り組むPXPが開発したカルコパイライト太陽電池をモジュール化した太陽光パネルが採用された。
四面に太陽光パネルを貼り付けた自動販売機を公園に設置
2025年7月より開始された実証実験では、サントリーが自動販売機の提供、実証用地への設置、実用性の確認・検証を、PXPがカルコパイライト太陽電池の技術提供・電力供給能力の検証を担う。
実証用地は神奈川県相模原市南区の市立相模原麻溝公園に設置。カルコパイライト太陽電池の他に副電源も使用されている。
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市立相模原麻溝公園に設置された実証実験用の自動販売機
画像提供:サントリーホールディングス株式会社
カルコパイライト太陽電池を使用した太陽光パネルの自動販売機への活用は、今回の実証実験が世界初の試みとなる。カルコパイライト太陽電池の特徴を生かし、付帯設備なく自動販売機本体に直接太陽光パネルを設置することを実現させた。
さらに太陽光パネルの設置箇所も自動販売機の両側面、背面、上面と4面が可能なため、従来型太陽光パネルを搭載した自動販売機と比較し、発電量の増大が見込まれている。
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後方から写した実証実験中の自動販売機
画像提供:株式会社PXP
実証実験では、カルコパイライト太陽電池の自動販売機稼働における実用性や電力供給能力を1年間にわたり検証予定。将来的には、これまで電源が確保できず自動販売機の設置が困難だった場所への設置、災害時に自動販売機を電源として利活用することを視野に入れている。
サントリーは実証実験の結果を踏まえ、工場や建物など自動販売機以外でのカルコパイライト太陽電池の活用拡大も検討していく。
カーボンニュートラル社会の実現に向け、サントリーの取り組みが加速し始めた。
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text: サンクレイオ翼