
2025.12.23
国内初! JR九州管内の駅構内、使用停止レールに太陽光発電システム設置
ウエストHDと共同で駅での太陽光発電・再生可能エネルギー利用を促進する実証実験を実施
九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)と太陽光発電設備開発の大手である株式会社ウエストホールディングス(以下、ウエストHD)は、駅構内で使用を停止しているレールにウエストHD が開発した太陽光発電システムを設置し、駅の照明などで使用する電気に再生可能エネルギー(以下、再エネ)を利用する実証実験を開始した。使用停止レールを有効活用した国内初の取り組みについて解説する。
使用停止レールの有効活用を模索
鉄道、特に地方交通では運行本数の減少や廃線により、使われていないレールが存在する。使用されなくなった線路や付帯設備は撤去や更地化にコストがかかることや、更地化した部分を別な用途に活用することが難しく、結果レールがそのまま残されるケースがある。
今回の実証実験は、使われなくなった駅施設で再エネ開発を行い、新たな価値の創出を目的とした、国内初の取り組み事例となる。
実証実験は、小倉(福岡県北九州市)と鹿児島を結ぶJR九州日豊本線の佐土原駅(宮崎県宮崎市)構内でウエストHDと協力して実施された。同実験は、国土交通省による「令和6年度鉄道技術開発補助金(鉄道脱炭素施設等実装調査)」に採択されている。

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実証が実施されている佐土原駅
(C)Taisuke / PIXTA(ピクスタ)

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佐土原駅構内の使用停止レールに設置された太陽光発電システム
基礎工事不要の画期的な設置技術
今回の実証実験では、佐土原駅で使用停止になっている1番線レールに、ウエストHDがJR九州と連携してレールへ接続できる専用の架台を設計・開発し、設置。
工事を担当したJR九州のグループ会社であるJR九州電気システムによりレールへ固定、そこにPV※システムが設置された。このシステムは「レールPV」と称されている。
※PV…光の照射で発生する光起電力を意味する言葉“Photovoltaic”の略。太陽光発電は光起電力を用いる発電方法で、太陽光発電そのものをPV、太陽光発電システムをPVシステムと称することがある

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レールPVの開発CGイメージ
画像提供:JR九州、ウエストホールディングス
使用停止レールに架台を金具で固定しPVシステムを設置することで、通常の太陽光発電を行う際に必要な基礎工事が不要になる。
設置においてレールの撤去などを行っていないため、PVシステムを解体することでレールを再び活用することも容易だ。そのため、例えば自然災害によって寸断されたままの路線や復旧作業中の長期不通路線にPVシステムを設置するなど、再エネを柔軟に獲得する技術としても期待される。
今回、佐土原駅に設置されたレールPVの発電出力は4.97kWで、年間想定発電量は約6,500kWh。この電力量は佐土原駅での消費電力の30%程に相当するという。駅の電力の再エネ利用による二酸化炭素 (CO2)排出量の削減量は年間5t-CO2と見込まれる。
本実証実験は、2025年10月1日より開始し、レールPVの取り付け状態、発電状態について年内を目途として検証を行い、検証後は継続して駅の電気へレールPVによる再エネを供給・自家消費して活用する予定。
使われる機会を失ったレールを、全く新しい視点で用いるカーボンニュートラル社会の実現に向けた実証実験。
今後得られる成果、フィードバックの活用に期待したい。

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text:サンクレイオ翼




