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体操競技で採点システムの導入により審判をサポート!王者・内村や“ひねり王子”白井の高難度の技も

正確なリアルタイム判定で世界標準作りに挑戦!競技スピードの効率化も図る

米メジャーリーグの判定要求制度「チャレンジ」をはじめ、サッカーの審判補助システム「GLT」(ゴール・ライン・テクノロジー)や「VAR」(ビデオ・アシスタント・レフェリー)制度など、近年スポーツの世界で続々と導入されているビデオ判定。人間の目では瞬時の判断が難しい場合に有効な手立てだが、半面、一度プレーが中断されるため、どうしても試合時間が長くなりタイムロスが生じているのが現状だ。この問題を解決し、スポーツや審判を支えるエネルギーともいえるリアルタイム判定の実現に向けた取り組みを紹介する。

採点支援システムにより審判をサポート

総合エレクトロニクスメーカーである富士通株式会社は10月8日、体操競技における採点支援システムの実用化に向けて、競技を統括する団体・国際体操連盟(本部:スイス ローザンヌ)と共同で取り組むことを発表した。


採点支援システムの取り組み

2016年以降、株式会社富士通研究所と日本体操協会と共に体操競技の採点支援技術の共同研究に取り組んでいる富士通。

今回発表された体操競技における「3Dセンシングプロジェクト」の責任者を務める富士通の藤原英則氏は、開発のきっかけについて「選手の技が高度化されてきており、人の目だけでは判断しづらい部分も出てくる。われわれはその部分をテクノロジーの目で見て、少しでも審判の方のサポートになることができれば」と語っている。

10月2日から10月8日にかけてカナダ・モントリオールで開催され、個人総合6連覇中だった内村航平が予選で棄権、同決勝で白井健三が銅メダルを獲得した「第47回 世界体操競技選手権大会」において、採点システムの開発に必要な競技データの取得を国際大会では初めて実施した。

今後、富士通と国際体操連盟は競技データの取得を進め、東京五輪が開催される2020年の実用化を目指してシステム開発を継続。来年カタール・ドーハで開催される「第48回 世界体操競技選手権大会」において、採点支援システムのテスト使用が予定されている。

3Dレーザーセンサーで選手の動きを捉えて採点を支援

採点システムの根幹をなすのが、 独自に開発された3Dセンシング技術。

この技術は、自動車モニター向けに開発を始めた「3Dレーザーセンサー」と、リハビリ用に開発を行っている「骨格認識ソフト」を融合、発展させて誕生した、“人の動きを認識”するセンシング技術だ。

3Dレーザーセンサーで人の動きを立体的に捉えて採点をサポートする

まず3Dレーザーセンサーが1秒間に230万点のレーザーを選手に向かって発光。レーザーが返ってくるまでの時間から選手の体の位置や体勢を正確に把握する。

そして、そのデータから骨格の位置を推定し、関節の曲がり具合や体をひねった回数などを導き出し、日本体操協会が培った技や採点に関する体操のノウハウを基に開発された“技のデータベースと照合”させることで採点を支援する。

「3Dレーザーセンサー」「骨格認識ソフト」「技のデータベースとのマッチング」という3つの技術を組み合わせることで、リアルタイムで正確な採点を支援するのがこの採点支援システムだ。

採点支援システムのイメージ画像

これまでにも選手の体にマーカーを装着して動きを捉える「モーションキャプチャー」という技術が存在していたが、選手はマーカーを装着すると違和感があるため本来の演技ができないという。

しかし、マーカーの装着に選手が違和感を感じて本来の演技ができないという、大会での使用が困難な致命的な問題点があったのだ。

しかし、3Dセンシング技術はマーカーを装着する必要がないため演技に支障がなく、加えて装置も小型スピーカーのような外見のため、観戦の邪魔になることもないのだ。

選手の動きを捉える3Dレーザーセンサー

採点が難しいとされる体操競技での実用化が実現すれば、今後フィギュアスケートなどさまざまな競技への流用も期待できる。

一つ一つの技を正確に認識できるようになることで審判の負担を軽減すると共に、選手の技術研鑽(けんさん)も望みが持てる。それにより観戦者は選手が魅せる極限の演技に一層酔いしれることになるだろう。

採点型の競技にとってまさに革命ともいえるこの技術開発。新たなステージへと導く可能性を秘めたこのプロジェクトが、今後のスポーツ競技を支える力になっているはずだ。

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