2018.1.16
電池不要の自動ドア開閉用スイッチが持つ可能性
自ら発電し通信に必要な電力を得る!高効率な特性を生かして他への用途利用をも模索
センシング技術(センサーなどによりさまざまな情報を計測・数値化する技術)を応用した製品やアプリケーション開発を手掛けるセンサーメーカーのオプテックス株式会社が2017年12月12日、押す力を利用して通信に必要な電力を自ら発電する(エナジーハーベスティング)技術を搭載した“電池不要の自動ドア開閉用スイッチ”を開発、2018年1月より北米での発売開始を発表した。業界初となるこの最新アイテムの詳細を紹介する。
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TOP写真:イメージ画像
(c) Andersen Ross www.fotosearch.jp
省施工&省メンテナンス性が不可欠な自動ドアの開閉用スイッチ
日本では古来から特有の「引き戸文化」の影響もあり(諸説あり)、自動ドアに関してもスライドタイプ(引き戸)が普及しているのが現状だ。また、道路や通路に隣接する人通りの多い建物や施設では、自動ドア開閉用スイッチが設置されていることが多い。これは無駄な開閉を減らし、空調効率を高めるとともに室内の快適性と省エネに効果を発揮している。
対して北米では、扉が手前や奥側に開閉するスイングタイプ(開き戸)が主流だ。しかし、大きく重いドアや回転式の自動ドアは、障害者や高齢者にとってドアの開閉や通り抜けの際に大きな障壁となっていた。そこで、ドア横などに開閉用のスイッチを設置し、全ての人が建物にアクセスしやすいよう工夫が施されている。
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スイングタイプの自動ドアイメージ
(c) Andersen Ross www.fotosearch.jp
この背景には米国で1990年に制定されたADA(米国障害者法)という法律がある。これを基に米国の建築基準は改訂され、現在さまざまな建物や施設においてこの基準に準拠した製品を採用。障害がある人や高齢者であっても健常者と同様に、社会で活躍できる環境が整っているのだ。加えて、病院や公共施設などでは防火や防煙などの防火区画となる間仕切りを目的としたドアも多く設置されている。そのため、設置されたドアが非常災害時でも稼働できるよう、日々の点検・修理は欠かすことができない。
このように、多くの人が利用することになる自動ドアの開閉用のスイッチには、省施工性(配線工事不要)と省メンテナンス性(電池交換不要)が求められてきた。
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オプテックスが開発した自動ドアの開閉用スイッチ(プッシュプレート)
これまでのスイッチが持っていた特性、つまり配線工事は不要だけど電池交換が必要、反対に電池交換は不要だけど配線工事が必要といった課題に対して、オプテックスでは押す力を利用して自ら発電する=エナジーハーベスティング技術に着目して、スイッチ開発をスタートさせた。
同時に耐久性も追求し、従来のスイッチと比べて2倍以上の耐久性を確保。同社の検証では、1000回/日の使用した場合でも、およそ7年間はメンテナンスは不要とのこと。さらに今回、同社が開発したスイッチはワイヤレスで自動ドアの開閉を行うため、施工が簡単かつ電池交換が不要。これによりメンテナンスや保守点検への作業負担の劇的な軽減が期待できるという。
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オプテックス社製の自動ドア開閉スイッチの仕組み
ドアを開閉させる仕組みは次の通り。
まず、プレートを押すことで無線通信器に必要な電力を発電し、電波を発信。自動ドアコントローラーに配線された専用受信機が電波を受信し、自動ドアに信号を出力して開閉させる。仕組み自体はシンプルだが、そこには今後の社会を見据えた開発者の思いが込められている。
同社エントランス事業本部プロダクトマネージャーの島田博史氏は、「エナジーハーベスティング技術の課題である発電効率や耐久性を追求することにより、配線や電池交換が難しい現場での活用が期待できます。世の中の“押す”力を利用して、さまざまな機器に信号を伝え、これまでにない新しい価値を生み出し、社会に貢献していきたいと考えています」と語っている。
今後、北米を皮切りに日本や欧州に向けて普及を促進させるとともに、高い耐久性のあるスイッチを駐車場のガレージドアオープンスイッチやバスの停車ボタンをはじめとする交通インフラなど、他の用途への利用を目論む。そして、バッテリーレス化による節電や資材削減で環境への貢献と、電池交換レスによる人的手間の削減で利便性の向上に寄与していきたいと展望を描く同社。
高齢化が進む日本においても導入が待ち望まれるアイテムの登場ではないだろうか。
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text:安藤康之