2018.6.14
天然ガス由来のクリーンエネルギーで走行する新型トラックがイタリアから上陸!
LNG(液化天然ガス)でCO2削減&長距離走行を可能に
脱ガソリン車や脱ディーゼル車が積極的にアナウンスされている欧州の自動車情勢。次世代自動車エネルギーといえば電気や水素などが挙げられるが、今、それと同様に熱い視線が注がれているのが天然ガスだ。そんな中、イタリアの商用車メーカーIVECO(イベコ)が長距離輸送を想定、開発したLNG大型トラック「ストラリス NP 400」の日本市場投入を発表した。今後、日本の物流にどんなインパクトをもたらすか注目だ。
天然ガストラックがクリーンエネルギーで流通網を形成
去る5月10~12日にかけてパシフィコ横浜で開催された「ジャパントラックショー2018」。2016年に初開催され2回目となる今回は、129社が出展。3日間で延べ5万人を超える来場者を集める日本最大級のトラック関連総合展示会だ。
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国内初公開となった「ストラリス NP 400」。車名の「NP」は“ナチュラルパワー”を指す
同ショーで、長距離輸送向けに特別設計された業界初の天然ガストラック「ストラリス NP 400」の実車を日本初披露したIVECO。
産業機械や特殊車両の製造、販売を手掛ける大規模なグローバル企業、CNHインダストリアルグループの一つであるIVECOは、天然ガスのサステナビリティ(持続可能性)に早くから着目し、20年以上にわたって天然ガスエンジンを開発。現在では、中型車から大型バスやトラックまで、さまざまなサイズの天然ガス商用車を製造しているメーカーだ。
天然ガス自動車は、ガソリン車やディーゼル車などと比べてCO2排出量を2割程度削減することができ、かつ、窒素酸化物(NOx)や炭化水素(HC)の排出量が少なく、黒煙や粒子状物質(PM)をほとんど排出しないという特徴を持つ。そのため、環境に優しい低公害車として年間150万台以上の規模で増加し、現在は欧州を中心に2000万台以上が走行。大型バスやトラックのほか、乗用車やごみ収集車(塵芥車)にも用いられるなど、世界で普及が進んでいる。
加えて、天然ガスは燃料をロスなく利用できるのもメリット。
さらに「ストラリス NP 400」は、同クラスのディーゼル車より約15%の燃費向上を実現している上、欧州は天然ガス価格が安いことも相まってディーゼル車との比較で40%以上のコスト削減もできるという。ちなみに天然ガスは、発電に利用しても60~80%以上とされる高い発電効率となっており、今後、低炭素社会のエネルギーを担う存在として期待されている。
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LNGを注入するタンク。液化した状態で天然ガスを保存するため、魔法瓶のような仕組みとなっている
天然ガス自動車の燃料にはCNG(圧縮天然ガス)とLNGの2種類がある。
現在の主流であるCNGは、体積を200分の1に圧縮した天然ガスを用いるのに対し、LNGは天然ガスを-162℃まで冷却して液体化させ、600分の1にまで体積を減縮した液化天然ガスを使用する。同容量の容器であれば、LNGの方が約3倍積載できるので、長距離走行に断然向いていることが分かる。
今回発表された「ストラリス NP 400」は、LNGのみ、LNGとCNGの組み合わせ、CNGのみを使用する3タイプをラインアップ。気になる連続航続距離は、LNGのみタイプの場合、1回の充填(じゅうてん)で約1500kmの走行を実現した。これは盛岡(岩手県)─下関(山口県)間を追加充填なしで走行できる計算だ。LNGとCNGの組み合わせは1035km(750km+285km)、CNGのみでは570kmとなるが、いずれもクラス最高の航続距離だという。
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欧州でディーゼルエンジンより約40%の燃料コストの削減に成功したカーソル9天然ガスエンジン
搭載するエンジンは、天然ガス自動車専用に設計された直列6気筒、排気量8.7Lのカーソル9天然ガスエンジンだ。最大出力400PS(馬力)、最大トルク1700N・m/1200rpmとなるこのエンジンは、同サイズのディーゼルエンジンと比較しても、同等レベルのパワー&トルクを発揮する。
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国内での実証実験に用いられる「ストラリス NP 400 LNG」の実車も展示
IVECOは、この日本初のLNGトラック「ストラリス NP 400」の販売について富士運輸株式会社との契約締結を5月8日に発表。6月には東京─大阪間で実証実験を行い、実際の輸送条件下における性能を分析する予定だ。
環境配慮型の次世代トラックの日本市場投入をきっかけに、今後、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)に加え、天然ガス自動車という新たな選択肢が加わるかもしれない。
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text:安藤康之