2018.7.25
0-100km/hの加速は2秒切り!驚異の和製スーパーカー「OWL」間もなく受注開始
1台4億円超!限定50台のモンスターマシン登場
CO2や排ガスを出さず、大気汚染対策が期待されるEV(電気自動車)。現在、各国の自動車メーカーがいかにエネルギーを効率よく使い、利便性と快適性を向上させるかを目標にしのぎを削る中、“加速力”一点のみに焦点を当てた異色のEVが市場投入の時を待っている。ことしの10月2日(火)に開幕するパリモーターショー2018での受注開始を前に、一足早くその詳細をお届けする。
世界一の加速を目指して意外な日本企業がチャレンジ
昨秋行われたフランクフルトモーターショー2017に出展され、世界中の話題をさらったプレミアムEV「OWL(アウル)」。
出展当時、EVでは前人未到となる0-100km/hの加速がわずか2秒という驚異的な性能を秘めた和製スーパーカーだ。そして中でも最大のトピックが、コンセプトカーやレーシングカーではなく、公道を走行できる一般の自動車として2019年に限定50台、350万ユーロ(約4億6000万円)で販売を予定していることだ。
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フランクフルトモーターショー2017でアンベールした「OWL」
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「OWL」のコックピット。ステアリングおよびセンターコンソールにはさまざまなスイッチが配置される
開発したのは、大阪に本社を構え、エンジニアのアウトソーシングサービスをなりわいとする株式会社アスパーク。
アウトソーシング×車の製造という、一見、畑違いとも思える同社の取り組み。実は代表取締役の吉田眞教氏は無類の車好きで「いつか世界を驚かす車を造りたい」と考えていたという。そこでまずは車造りのノウハウや人材集めを目的に、エンジニアの人材派遣業をスタートさせたのだ。
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「OWL」を開発したアスパークとサプライヤーのイケヤフォーミュラの面々
こうして今から4年前の2014年に開発が開始されたこの「OWL」。
そのコンセプトはズバリ“速さ”。エネルギー効率やエコロジー、快適性を求める他メーカーのEVとは一線を画し、シンプルに車としての速さのみを追求しているのが最大の特徴だ。ガソリン車と比べて初期トルクが高いというEVの利点に着目し、世界最高加速を求めて開発のかじが切られた。
これまで誰も成し遂げたことのない0-100km/h加速が2秒という圧倒的な加速感。その夢に自動車メーカーでもないアスパークは挑戦した。
EVの常識を覆す新たな手法で圧倒的なエネルギーを生み出す
まず問題となったのは動力源。シミュレーションの結果、目標達成のためには、計算上320kwの出力が必要であることが分かった。
しかし、プロトタイプの「OWL」が搭載したモーターは、車重の軽量化と重心を下げるため定格65kwのモーター2基のみ。つまり、65kwのモーター1基あたりから160kwのエネルギーを生み出さなければならない。そのためには瞬間的に大きな電流を流す必要があり、多くのEVに搭載されている従来のリチウムイオンバッテリーではエネルギー密度が低過ぎ、賄うことができなかったのだ。
そこで、この課題を克服するため、通常、自動車に搭載されることがないタイプのスーパーキャパシタ(電気を蓄えることができる蓄電装置・コンデンサの一種)を採用する。
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「OWL」のPV動画
リチウムイオンバッテリーと比べて重量あたりのエネルギー密度が約10倍とも言われ、高出力を可能とするスーパーキャパシタが瞬間的に生み出すエネルギーはバッテリーの比ではない。いわばEVのターボチャージャーともいえるスーパーキャパシタを搭載したことで、動力源の問題はクリアされた。
しかし、これで万事解決といかないところが奥深いところ。
0-100km/h加速を2秒とは、距離にしておよそ27m。このわずかな間に、どれだけタイヤの空転を防ぎ、かつ効率よくエネルギーを地面に伝えることができるかがタイムを左右する。まさに手探り状態の中でアスパークは一から設計図面を引き、独自開発を続けた。その結果、「OWL」のコントロールユニットは10000分の1秒という単位で電流を制御し、4つのタイヤそれぞれに最適なエネルギーを与えることに成功した。
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性能テストに用いられた塗装前の「OWL」。全長4830×全幅1935×全高990、ホイールベース2757(各mm)、重量は約850kg
現在は市場投入に向けて、メインターゲットとなる欧州を中心に製造を委託するサプライヤー選定などの調整が進められている「OWL」。量産車へと開発プロセスが移行するにあたり、デザインコンセプトを維持しながら、モーターの仕様やタイヤなどは変更・改良される予定だ。
大手メーカーから部品供給を拒否されるなど、お世辞にもぜいたくなリソースがあるとはいえない中でスタートした「OWL」プロジェクト。責任者を務める吉田氏は、ここまでの道のりを振り返り「一緒に開発してくれるパートナー探しや、現状で買える部品をかき集め、その中でいかに開発を前に進めるかをメンバーとともに試行錯誤してきた結果が、今の成果に繋がっていると思います」と心境を語った。
世界が期待する和製スーパーカーの今後から目が離せない。
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text:安藤康之