2018.12.28
帰省・Uターンラッシュ支えます!JR東海&東日本の新幹線アップデート計画最前線
東海道新幹線で列車遅延の短縮を図る日本初の技術をJR東海が開発。JR東日本は超美麗な次世代車両を公開!
多頻度で大量輸送に優れる鉄道。今回、日本最大手の鉄道会社2社から、新幹線に関する注目の発表が立て続けに行われた。ことし最後のEMIRAトピックスでは、世界一運行が正確とも言われる日本の鉄道の、さらなる高みを目指す取り組み・未来に迫る。
大きなアーク(電気火花)の発生を抑えてパンタグラフの損傷を防ぐ新技術
JR東海(東海旅客鉄道株式会社)は12月5日、冬季の天候不順による運行トラブルのリスクを低減する新技術の開発を発表した。
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リアルタイムでの着氷霜検知を実現するパンタグラフ状態監視システム
画像提供:JR東海
通常、電車はパンタグラフが架線(かせん)と接触することで走行に必要な電力を取り入れている。この時、架線に氷や霜が付着(着氷霜)していると架線とパンタグラフが一時的に離れ、アークという火花を伴う放電現象が発生することがある。
アークが発生しても電力供給は継続されるが、加速のために架線から大きな電流・エネルギーを取り込もうとすると、その分発生するアークも大きくなるため、パンタグラフが損傷する恐れがあるのだ。
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架線に付着した着氷霜(写真上)とその影響によって発生したアーク(写真下)
画像提供:JR東海
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画像提供:JR東海
そのため、東海道新幹線では冬季期間、係員による始発前点検で着氷霜が確認された場合は、あらかじめ定められた区間で運転士の操作によって加速制限を行っていた。
しかし、まれに発生する点検後の着氷霜については状況把握が難しく、またその区間を挟む長い区間で加速制限するため、列車遅延につながってしまうという課題があった。特に、米原~京都間は豪雪地帯である関ヶ原地区を通過するため、ダイヤ乱れがたびたび発生しているのが現状だ。
そこで今回、JR東海ではパンタグラフに電流センサーと状態を監視するカメラを設置し、パンタグラフの異常を早期に発見するシステム(パンタグラフ状態監視システム)を開発した。
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開発された新技術の概要図
画像提供:JR東海
電流センサーによってパンタグラフが架線から取り入れる電流を常時測定し、着氷霜によって生じる電流の乱れの有無をリアルタイムで監視。もし乱れを検知した場合は、自動的に車両が加速を制限し、架線から取り入れる電流を低減させることができるという。
これによりパンタグラフの損傷リスク低減が期待できる上、加速を制限するのは着氷霜区間に絞って行えるため、列車の遅延を防ぎ、円滑な運行が可能になる。
JR東海では、今月から2019年3月まで最新のN700Aタイプ10編成で、着氷霜が発生しやすい条件を満たす(気温・風速が一定以下、かつ、湿度が一定以上)早朝の列車にて試行を実施し、2020年度の本格導入を目指していく考えだ。
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雪の関ヶ原付近を走行するN700Aタイプ。JR東海によると、運転士の手動による加速制限の場合、2017年度の最大遅延時分はおよそ6分(雪害に伴う規制の遅れを含む場合は除く)だった
(c)YkK1 / PIXTA(ピクスタ)
年末年始も帰省&Uターンラッシュによる混雑と過密ダイヤが予想される東海道新幹線。
将来、この新技術が運行の遅延を減少させるはずだ。
将来の車両開発技術の礎を担う試験車両が完成間近!
一方、JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)からは12月12日、次世代新幹線の開発のための新型試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」が川崎重工業株式会社 兵庫工場において報道陣に公開された。
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約16mのロングノーズ、メタリックカラーが際立つ「ALFA-X」の先頭車両
画像提供:JR東日本
東京寄り1号車の先頭車両の長さはE5系とほぼ同じ約16m、新青森寄りの10号車は約22mと前後の先頭車両はそれぞれ異なるエクステリアデザインを採用。
この2種類の形状によってトンネル突入時の圧力波、風圧によるエネルギーの抑制を狙うという。
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1号車(上)には“削ぎ”“うねり”“広がり”といった風の流れによって作られる要素を取り込み、10号車(下)は“台車部を覆うせり出した造形”“運転士を包み込む造形”“後方に向けて滑らかにつなぐ造形”という3つの造形で構成される
画像提供:JR東日本
また、安全・安定性の向上を追求し、新たな構造や最新技術が搭載される予定。
例えば、車輪に向かって緩やかなカーブを描き、台車部(車両下部)に雪が吹き込み着雪するという問題を抱える現行車両の形状を山型へと変更。これにより台車部へ吹き込む雪量の削減を目指している。
ブレーキシステムにおいては、空力抵抗板ユニットを屋根上に搭載するとともにリニア式減速度増加装置の開発も進められる。これは電磁石によりレールに渦電流を発生させてブレーキ力を得る仕組みで、ドイツ鉄道の高速鉄道車両「ICE」で常用されているシステムだ。
ちなみに、ドイツ鉄道とJR東日本は1990年代から技術交流を行う友好関係にあり、過去にICE用台車を試作したこともある。
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抵抗板を2枚備える縦約56cm、横約102cmの空力抵抗板ユニットを車両上部に複数設置。動作時には抵抗板が開いて空気抵抗を活用し、減速力を得る仕組みだ
画像提供:JR東日本
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リニア式減速度増加装置は、台車部にコイル(電機子)を設置。コイルをレールへと近づけることで、電磁力を得て減速させる
画像提供:JR東日本
その他、動揺防止制御と装置上下制振装置の組み合わせや、2種類の低騒音パンタグラフの装着によって快適性や環境性能の向上も推し進めていく考えを表明している。
「ALFA-X」は2019年5月の完成を予定。その後は将来の自動運転を見据え、出発から停車までに必要な車両制御の実現を目指して基礎的な研究開発を行う見込みだ。
なお、EMIRAではトップランナーにて技術開発者にインタビューを予定、2019年1月下旬~2月上旬の公開を予定しているので乞うご期待!
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text:安藤康之