2019.4.5
500台の車を自動で駐車!フランスの巨大空港に屋外型パーキング・ロボットが世界初登場
駐車場の空きスペース探しに終息!完全自動の駐車システムが確立
観光大国フランスの空の玄関口、リヨン・サンテグジュペリ国際空港(以下、リヨン空港)。ヨーロッパを中心に数多くの就航先を結び、ここ2年で約40の路線が新設された同国で3番目に大きな空港だ。車社会だけに、利用者増加に伴う駐車場不足が叫ばれていたが、その問題に終止符を打つシステムがこのほど発表された。スタートアップ企業のStanley Roboticsが開発したロボットを使うと、既存の駐車スペースのままで止められる台数を1.5倍以上にすることができるという。最先端を行く、未来型駐車システムのメカニズムを解明する。
INDEX
環境保護の観点から生み出された駐車ロボット
車で出かける機会が増えるこれからの行楽シーズン、ドライバー共通の悩みといっても過言でないのが駐車場問題だ。サービスエリアや巨大レジャー施設など、空いている駐車スペースを探して右往左往した経験を持つ人も少なくないのではないだろうか。
そんな悩みは万国共通。
フランス第2の都市圏・リヨンにあるリヨン空港でも数年前からその問題が表面化していたという。
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駐車ターミナルが5つも存在するリヨン空港の駐車場。どこに止めるかを探すだけでなく、止めた場所を覚えておくのもひと苦労だ
一方で、リヨン空港は2017年5月にACAのレベル3+を取得。ACAとはAirport Carbon Accreditationの略で、空港において排出される二酸化炭素の管理や削減を目的とした国際的な空港カーボン認証制度だ。3+は最もレベルが高く、空港管理者が排出した二酸化炭素をオフセットし、カーボン・ニュートラルの達成が求められている。
日本では成田国際空港や関西国際空港、大阪国際(伊丹)空港が2018年11月と12月にそれぞれレベル3を取得しているが、同レベルでは二酸化炭素排出量の削減に向けた計画の策定までにとどめられている。
エネルギーを管理し、継続的改善を図ることを目的としたISO50001(エネルギーマネジメントシステム)も取得しているリヨン空港。そこで環境への配慮と駐車場問題の解決を両立するために導入されたのが、自動駐車ロボット「Stan」だ。
ロボットが荷物のように車ごと持ち上げて移動し、駐車スペースに隙間なく置いていくこのシステム。人が乗降せず、出し入れの動線を確保しなくていい置き方をするため、スペースを有効に活用できる。
フランス・パリに本社を構えるStanley Robotics。
パリのシャルル・ド・ゴール国際空港でも試験導入されたStanの実績を買われ、2017年7月にリヨン空港とプロジェクトを締結。以来、さまざまな実証実験が繰り返され、ことしの3月14日に運用の様子が公開された。
まず、空港ホームページからStanが導入されている駐車場予約からスタート。空港到着後は12機用意されている専用キャビンのいずれかに車を止め、予約時にスマートフォンに送られてきた各種情報を専用端末に読み込ませるだけ。
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ユーザーは自宅のガレージのようなStan専用キャビンに車を入れるだけでOK。これなら運転が苦手な人でも気軽に利用できる
ユーザーが駐車場を離れ、空港内シャトルバスでターミナルへの移動を開始すると、ここからがStanの出番だ。
今回稼働しているStanは全部で4機。すべてコンピューター制御されており、利用者のフライト・スケジュールによって駐車する場所や順番をコントロールしているという。
キャビンの裏口で車をピックアップしたStanは、無駄のない動きでそれぞれの車に適した駐車スペースへと運んでいく。例えば、長期間駐車する車は奥に、短期間の車は手前にといった具合だ。
また、ユーザーの帰着便に合わせて駐車スペースから再びキャビンへと車を運搬もしてくれるので、受け取りまでとてもスムーズだ。
気になる利用料金も1週間で約7520円(60.00ユーロ)からと比較的リーズナブルな設定となっている。※4月5日現在、1ユーロ=125.41円
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車をフォークリフトの要領で持ち上げて運搬するStan。シャルル・ド・ゴール国際空港では屋内での試験導入だったため、屋外ではリヨン空港が世界初だ
一方、ユーザーが駐車場の空きスペースを探す手間が省けることはもちろんだが、空港側にも数多くのメリットがある。
まず、導入のきっかけとなった環境やエネルギーに配慮できる点。
Stanを利用すると同一面積に駐車できる台数が50%以上アップするため、新たに駐車場を建設する必要がなくなる。空港敷地内の自然を一切壊すことなく駐車台数を増やせるため、カーボン・ニュートラルを掲げるリヨン空港にぴったりのシステムなのだ。
また、空いている駐車スペースを探し回る車が減ることで、排気ガス削減にもつながるという。ちなみに、Stanのエネルギー源は電気なため、昼夜問わず動き回っていても排気ガスの心配は一切ない。
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人間がドアを開閉する必要がないため、従来に比べて狭い間隔に車を並べることができる。これが同一面積で駐車台数50%アップを実現する秘策となる
次に、安全面。
キャビンの裏は人間が立ち入り禁止となっているため、これまでのような人為的な運転ミスが発生しなくなる。さらに、車を探し回るふりをして車上荒らしを狙うケースも減るため、空港への信頼度が高まる目論見だ。
現在は駐車ターミナルの1区画500台がStanの対象だが、最終的には12倍の6000台を管理するまでに増やしていく計画だという。
リヨン空港を運営するVinci Airportは世界中の国際空港運営に携わる名手だけに、リヨン空港でのStan運用が評価されれば、世界中の空港に波及していく可能性が高い。
将来的には空港パーキングの枠を飛び越え、身近なレジャー施設や大型ホテルの駐車スペースなどでStanの雄姿を見られる日がすぐそこまできているのかもしれない。
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text:佐藤和紀