トップランナー

水道・光熱費の無駄が一気に解消!? NB-IoTで日本の生活が変わる

ファーウェイ・ジャパン 技術戦略本部 部長 郭宇【後編】

今年、ソフトバンクが本格導入を開始したことで、注目を集めつつあるナローバンドIoT向け通信規格「NB-IoT」。前編では、世界の実用例と合わせて、そもそも「NB-IoT」とは何なのか、NB-IoTの商用化を推進するファーウェイの日本法人、ファーウェイ・ジャパン技術戦略本部の郭宇部長に話を聞いた。「NB-IoT」導入で変わる日本の未来の姿とは?

ナローバンドを水道メーターに活用するとどうなる?

「わずかなデータを定期的に低速かつ広範囲に、長い期間にわたり送ることができる」(郭氏)という特徴を持つ通信規格「NB-IoT」。一見、ロースペックに思えるが、前編で語られた世界的な通信機器メーカー、ファーウェイが各国で手掛ける活用事例から見える潜在能力の高さは目を見張るものがあった。
※【前編】の記事はこちら

では、日本ではどうか。2018年4月、ソフトバンクが「NB-IoT」の商用サービスを開始したことを発表しており、今年から順次、多くの分野で実際にNB-IoTの導入が進むと予想されている。

それら商用化の動きに先駆けて、NB-IoTの活用に積極的な日本の企業がある。水道メーターシェアトップの愛知時計電機だ。世界各地のモバイル事情を研究する携帯研究家の山根康宏氏は、ファーウェイの広報誌「HuaWave」(2018年4月発行号、Issue 29)に寄稿した記事「水道メーター最大手・愛知時計電機が目指すNB-IoTスマートメーターとその先」の中で、次のように指摘している。

<現在、日本国内には約5000万軒の家屋があり、商業施設も加えると1億台に上る水道メーターが稼働している。こうした水道メーターは、通常2か月に1度検針が行われる。電子式の自動検針システムも存在するが、一般家庭などの多くで利用されているのは旧来からのアナログ式のメーターで、検針員が巡回してメーターを読み取っている。しかし、人力では読み取りミスを100%なくすことは難しい。また、水道メーターは地中に埋まったボックス内や家の裏手の奥まったところなど検針しにくい場所に設置されている場合が多い。(中略)そこで注目を浴びているのが、水道メーターの自動検針化だ>(※原文ママ)

愛知時計電機は業界トップとして、その「水道メーターの自動検針化」、すなわち「IoT化」にいち早く取り組んでおり、ソフトバンクやファーフェイとも共同で実証実験を行ってきた。

愛知時計電機とファーウェイが共同開発に取り組んできた「感震センサー搭載光ピックアップ方式水道メーター」

なお、同社がNB-IoTを取り入れようとする大きな理由は、既存のLTEネットワークの広いカバレッジ(通信範囲)をそのまま利用でき、全国でサービスを提供できるからだ。また、NB-IoT は他のLPWA(ローパワー・ワイドエリア)規格に比べて、“カバレッジが深い”、つまり水道メーターが地中や雨水で水没した状態でも通信が可能なため採用を積極的に進めているのだそう。ファーウェイ・ジャパンの技術戦略本部の郭宇部長は言う。

「世界各国の実情を見ても、NB-IoTの導入が最も進んでいる分野はメーター類、特に水道です。ヨーロッパ、東南アジア、中国などでは、日本に先駆けて実用化・商用化が始まっています。日本では2016年に、官民が連携を取って自治体施設や公共施設を運用するコンセッション方式(所有権を公的機関に残したまま民間が運営する方式)が水道事業に導入される例が出てきました。もともと日本の水道は各自治体が運用してきましたが、今後は民間のノウハウを取り入れられる環境が整いつつあるということになります。

自治体が民間に求めているのは効率化です。NB-IoTベースのソリューションは一般に考えられている効率化を達成する上でも有益ですが、そこからもう一歩進んで、公共事業に付加価値を生むという側面もあります」

年間数千万円のコスト低減も実現

これまで、水道メーターをIoT化する、もしくは検針を自動化した場合、真先に思い浮かぶのは「人件費が削減できる」という意味での効率化だった。先に触れた通り、日本でもおおよそ2カ月に1回の頻度で検針員が水道メーターをチェックしていたが、人手不足が社会的な課題となる中、IoT化すればその課題解決にもつながる。

ただ、水道メーターのIoT化が自治体や水道局にもたらすメリットはそれだけにとどまらない。例えば、前編で言及した中国・江西省鷹潭(ようたん)市の場合、約95%の水道メーターがスマート化され、データが可視化されることで、毎日の送水量と用水量(使用量)の差が分かり、導入前に比べて漏水率が20%から12%まで低下。また、年間250万tもの水を節水することに成功したという。後者を日本円に換算すると、約5000万円のコスト削減になるそうだ。

東京・錦糸町には、NB-IoTを活用したアプリケーションの技術検証が可能なファーウェイ・ジャパンのオープンラボが開設されている。電波を漏らすことなく、実証実験を行うことが可能だ

当初は水道事業の効率化が念頭に置かれたが、結果的に水資源消費の無駄を省くことにつながった。郭氏はIoT接続が増えることで、こうした付加価値の創出がさらに可能なのではないかと予想している。

「鷹潭市のプロジェクトには浄水器メーカーも参入しています。NB-IoTと水質センサーを活用することで、浄水器の入口と出口での水質の差を可視化できるようにもなりました。水道の利用者から見れば、市やメーカーがどのように水質を管理しているかが明確になります。信頼を生むという意味で、それらも付加価値になりえるのではないでしょうか。

日本を含む世界各国で、水道に続き、ガスや電気のメーターもIoT化していく流れが生まれています。ガスに関して言えば、水道のように使用量を読み取るという使い方もできますが、さらには自然災害発生時、ガス漏れ、火の消し忘れなどがあった際に、遠隔操作で遮断することもできるようになるでしょう。つまり、利用者の皆さんに『安全』という付加価値を提供できるようになります。このように、実際にIoT化が進めば、新しい価値に着目する自治体・企業が増えるのではないでしょうか」

ライフライン×ナローバンドで社会が変わる

あらゆるものがIoT化するメリットは、「モノとモノ」「ヒトとモノ」の関係性が指数関数的に増えるということ。そしてそこから生まれる「実世界データ」を収集できるようになるということだ。人工知能などインサイトを発見できるツールさえあれば、それら「実世界データ」は“宝の山”になる。

「水道、ガス、電気メーターのIoT化で、これらの活用データを可視化できれば、生活パターンを予測し、それを基に一人暮らしの高齢者の見守りに生かせるとも言われています。もちろん、個人情報などさまざまな点をクリアした上での話となりますが、各家庭の適切な使用量を割り出し、限りある資源を最適な量で供給できるようになるかもしません。社会全体で見れば、膨大な量の浪費を抑えることができるはずです」

多くの日本企業ともコラボしていきたいと意気込みを話す郭宇氏

NB-IoTの普及を推進するファーウェイは、IoT社会の到来に備えて、常に最新技術を取り入れた機器を開発し、また多くの企業が連携できるプラットフォームを作り上げることをミッションに掲げていると郭氏は言う。

「日本の通信事業者が提供するNB-IoTの通信サービスやプラットフォーム上に、自治体や関連企業が参画すれば、これまで想像もできなかったような新しい価値が生まれてくるはずです。連携するかしないかは各自治体や企業次第ではありますが、いつでも連携を取れるようにオープンな仕組みを作りつつ、通信事業者による低価格な通信サービスの実現を支援していくことが、われわれの使命だと考えています」

NB-IoT は、あらゆるヒト・モノがつながるIoT時代に、ネットワーク技術界の主役となれるのか。日本における今後の動向にも注目していきたい。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitterでフォローしよう

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • はてぶ!
  • LINE