未来シティ予想図

“みどり×イノベーション”をキーワードに新たな価値を創出する未来創造型都市へ

都心に残された最後の一等地を大革新!海外も注目の大阪市『うめきたプロジェクト』2期開発【前編】

1日に約250万人が乗降する西日本最大のターミナル、大阪駅周辺地域。その北~北西に位置する「うめきた」エリアでは、日本の都市の在り方を変えるかもしれない2つのプロジェクトが進行している。その中核、「みどり」の創出と都市開発を目的とした『うめきたプロジェクト』2期開発について、2回にわたりレポート。前編では、プロジェクトの概要に関して、大阪市都市計画局の西江誠氏に話を聞いた。

都心に残された最後の一等地を再開発せよ

JR大阪駅のすぐ隣に、甲子園球場約4個分に相当する広大な土地が存在する──。

これは都市伝説ではなく、れっきとした事実だ。JR大阪駅の北~北西部の約24haにも及ぶ土地は、旧国鉄時代から貨物線のターミナル駅として利用されてきた。このエリアは流通拠点として最適だったが、その反面、都心部の、しかも大阪駅に隣接しているという抜群の立地を生かせていなかった。

『うめきたプロジェクト』2期エリア。写真向かって右手のJR大阪駅、グランフロント大阪、左手の新梅田シティに挟まれた区画となる

画像提供:大阪市

俯瞰した地図がこちら。JRや私鉄各線がひしめく超都心にありながら、いかに広大な土地かが分かる

資料提供:UR都市再生機構

その状況を動かしたのは、2002年6月に施行された都市再生特別措置法だった。国際競争力のある魅力的な都市拠点の形成を目的に、このエリアは都市再生緊急整備地域に指定され、再開発の動きが一気に加速した。

その後、2011年には、公募によってエリア名称を『うめきた(梅北)』に決定。そして、2013年に約7haの先行開発区域に新たなランドマーク「グランフロント大阪」が誕生。開業から4年弱の間に来場者が2億人を突破するなど、『うめきた』に新たな人の流れが生まれている。

『うめきたプロジェクト』2期開発を担当している大阪市の都市計画局企画振興部うめきた企画担当課長の西江氏。UR都市再生機構にて、2期開発エリアの現場と模型と共に

現在、進行中の『うめきたプロジェクト』2期の開発面積は、約17haと先行開発区域の2倍以上の規模となる。

「近年、都市部でこれほどの大きな土地の開発は、全国的にもそう例がありません。そのため、2011年に2期エリアの基盤整備にかかる都市計画を決定した後も、より良いまちづくりを実現するため、民間の自由な発送をできるだけ取り入れようと工夫してきました」と西江氏は語る。この都市計画はインフラ整備を中心としており、その内容だけでも、街の姿が大きく変わることがうかがえる。

「まず、『うめきた』の地下に新駅を建設して、2期エリアの西側を走るJR東海道線支線を移設、地下化します。現在、東海道線支線を利用して、京都方面から関西国際空港に至る『特急はるか』が通っていますが、東海道線支線には駅がなく、大阪駅には停車できません。東海道線支線を移設・地下化し、新駅を設置することで、世界との玄関口である関西国際空港から『うめきた』へのアクセスが格段に良くなります」

地上でも大きな区画整理が行われる。これまで分断されていた地域を結ぶ幅約40mの道路を東西に整備。地上の交通アクセスが格段にアップする予定だ。また、この東西道路では幅約14mもの高幅員の歩道が整備され、沿道の都市公園と一体的な「みどり」の空間が形成されるだろう。

また、防災機能と環境整備を含めた計画として、豊富な緑やオープンスペースを取り入れた公園設置が予定されている。とはいえ、インフラ整備は、いわば都市のハードウェア。ソフトウェアを含めると、どのような形になるのだろうか。

「2期まちづくりの方向性を議論するために、2013年に1回目となる民間提案を募集し、2014年に20者を選定しました。そして、この1次提案を受けて、2015年に『うめきた2期区域まちづくりの方針』を都市再生緊急整備協議会の大阪駅周辺地域部会において策定しています。

今後実施する2次提案は、この街づくりを実現するためのコンペティションとなります。そこで具体的なプランと事業者を決定します。全体的な予定としては、2023年の春に新駅の開業を予定していますので、そのあたりから順次、街びらきを進めていき、2026年度をめどに基盤整備を完了したいと考えています」

今後のロードマップ。2次提案によって、いよいよ本格的な民間事業者の選定へと進み、5~6年後には新駅開業から街びらきへと進んでいく見込み

資料提供:UR都市再生機構

開発着手までの間、当地では、にぎわい創出などを目的とした暫定事業を実施しており、民間から募集した植育や食、音楽などのイベントに数万人規模の市民が訪れている。上写真は、暫定利用としてことしの9月まで開催している「うめきたガーデンII」の様子

画像提供:うめきたガーデン事務局

「みどり」と「イノベーション」による未来創造型都市を

1次提案によって決定した「うめきた2期区域まちづくりの方針」では、「『みどり』と『イノベーション』の融合拠点」というテーマが設定されている。

「具体的には、まず2期のエリアの中央部に約4.5haの都市公園を設置することが決定しています。この公園の周辺に建築物と一体化し地上と連続する『みどり』も取り入れます。結果、2期開発の土地の中に約8ha、甲子園球場2つ分の『みどり』が生まれることになります。この『みどり』には水面や緑豊かなオープンスペースも含まれ、街の風景も大きく変わると思いますよ」

「みどり」が触媒となるイノベーション拠点を目指す

資料提供:大阪市

うめきた2期に創り出す「みどり」は、地域の憩いの場所として機能するだけではない。人々を引きつける魅力的な「みどり」の空間と交通機能の強化によって、大阪はもちろん近隣府県、海外からも多くの人を呼び込む効果も期待される。そうした国際的な集客・交流を通じたイノベーションを生み出したいと西江氏は語る。

「梅田エリアは、もともと京都と神戸の中間にあり、アクセスの利便性が高い場所。2期開発によって、海外の人々もよりアクセスしやすくなるはずです。大阪の人々はもちろん、産業、学術、医療など多様な人々が集積し、2期エリアに整備される『みどり』を使った実証研究やビッグデータの活用、プレマーケティングなどを通じて、新しい産業を創出していく。世界をリードするイノベーションの拠点を目指しています」

イノベーションへの期待は、決して夢物語ではない。『うめきたプロジェクト』のうち、先行開発区域として2013年にオープンしたグランフロント大阪では、目玉施設である「ナレッジキャピタル」の企画・運営を行うため、株式会社KMOと一般社団法人ナレッジキャピタルを設立。

グランフロント大阪の北館内に、分野を超えた人々が交流し、新たな価値創造を目指す会員制サロン「ナレッジサロン」や、グローバルイノベーション創出支援拠点「Osaka Innovation Hub(大阪イノベーションハブ)」、企業や大学・研究機関と来場者をつなぐ「The Lab.(ザ・ラボ)みんなで世界一研究所」などを設置。ビジネスパーソン、研究者、学生、クリエイターなどが集まっている。

「グランフロント大阪でも、若者が集まっていろいろな取り組みが起こっています。個人的には、関西一円から“技術”と“人”が集まって新しいものを創り出す、そんな場所になってほしいですね。例えば、2期の『みどり』を活用した実証研究に、街を訪れた人に楽しく参加してもらい、そこから人々の健康に寄与する新しい製品やサービスを生み出す。そんな人の知と活動をエネルギーに、発展する街になってほしいと思います」

『うめきた』に誕生する未来創造型都市の姿とは

『うめきたプロジェクト』2期開発で創造される街とは、一体どのような姿になるのだろうか。そのヒントは、1次提案の内容にあるだろう。

1次民間提案では、国内23者、海外17者の計40者が応募。建築家の安藤忠雄氏を委員長に、同じく建築家の隈研吾氏や大学教授からなる6名の審査会が各案を吟味。「総合的に優秀な提案」10者と「プランニングやデザイン等が優秀な提案」10者の計20者が優秀提案として決定している。

これらの優秀提案者には、2次提案への応募資格が与えられる予定となっている。1次提案は、西江氏の語るとおり、あくまで街づくりの基本方針を決定するためのもの。2次審査が、まさに街づくりの姿を競うコンペティションとなる。

今回は、まず「総合的に優秀な提案」10者のプランと審査会の寸評を紹介。

【総合的に優秀な提案】10者

画像提供:すべて大阪市
※表記は上から受付順
※各提案名称は事務局が提案書から抜粋したもの
※「導入する都市機能」については、提案書の記述を尊重しており、統一されていない場合あり
※寸評は、大阪市HP内資料『総合的に優秀な提案の概要』より抜粋・要約

「先行開発区域と連動する『新都市文化創造拠点』を創出し大阪・関西全体の発展に寄与」
提案者:株式会社 竹中工務店
導入する都市機能:オフィス、ホテル、商業施設、アカデミー、サービスアパートメント、カンファレンス
寸評:防災機能と環境技術をネットワーク化し、土地利用計画と結びつけて具体的に提案している。「公のみどり」と「私のみどり」を広く連担させる管理運営が評価できる。

「Living Green 世界と市民が出会う『みどり』」
提案者:株式会社 大林組
導入する都市機能:展示、業務、宿泊、商業、文化、住宅
寸評:公民一体でまとまった「みどり」を創出し、淀川~中之島をつなぐ「みどり」の空間づくりと、国際集客、都市環境、交通、インフラ、地域参加型防災を多層に形成する新しいマネジメントが評価できる。

「RESILIENCE GREEN 人を靭(しな)やかに、大阪を強くし、世界と相交わる」
提案者:大阪ガス株式会社
導入する都市機能:ホテル、オフィス、商業、病院、住宅、スポーツ関連、ナレッジ、エネルギープラント
寸評:平常時の環境配慮と災害時のレジリエンスを兼ね備えた「分散型エネルギーインフラ」として、中圧ガス導管を利用した高効率コージェネレーションシステムを土地利用計画と対応させて提案。高い実現性を持つ点が評価できる。

「うめきたから世界に示すサステイナブルな都市・大阪」
提案者:三菱地所株式会社
導入する都市機能:大学、店舗、事務所、住宅
寸評:組織体制、公共敷地と民間敷地との一体的管理運営、大阪市エリアマネジメント条例の実践とその後の制度展開、自主的な収益確保など確実な街の管理運営を提示している点が評価できる。

「大阪から世界を変える Convivial City」
提案者:オリックス不動産株式会社
導入する都市機能:大学、オフィス、交流拠点、展示場、店舗、ホテル、住宅
寸評:先行開発区域のナレッジ・キャピタルの理念を2期区域に導入し、具体的な方策も提案。多様性を生む構造と環境共生の仕組みを持ち、可変性の高い歩行者動線を張り巡らせ、偶発的な交流を促す空間として「みどり」を提案している点も評価できる。

「『医の知』と『生命』を育む国際健康医療公園『いのちの杜』」
提案者:阪急電鉄株式会社(提案者代表)、株式会社 新産業文化創出研究所、株式会社 地域・交通計画研究所
導入する都市機能:教育施設、研究施設、オフィス、病院、研修施設、商業施設、図書館、ホテル、住宅
寸評:先端医療を頂点とした健康医療をテーマとする国際ビジネスゾーン形成の具体的方策を提案。高層部は立体緑化、低層部は里山を形成する空間づくりも評価できる。

「クリエイティブ・フォレスト ─新しい大阪、世界へデビュー─」
提案者:住友不動産株式会社
導入する都市機能: 商業、オフィス、コンドミニアム、イベントホール、バスターミナル
寸評: 千本桜に代表される「みどり」と建物を棚田状に組み合わせた景観、歩いて楽しいグリーンベルトの形成を提案。管理運営としてバリューアップ事業とセキュリティマネジメント事業を想定し、ハイレベルでの「みどり」のマネジメント実現に向けた分担金の徴収方策について提案している点も評価できる。

「Green Generator みどり・安心・エネルギーをひろげるまち」
提案者:積水ハウス株式会社
導入する都市機能:住宅、文化施設、商業施設、電気・熱供給プラント、オフィス
寸評:環境共生都市のモデルを目指し、建物と公園がシームレスにつながる「みどり」や、環境インフラとしての水と緑の機能の最大化と造形を提案。非常時のエネルギー供給をインセンティブとしたBID(ビジネス活性化地区)の仕組みを提案している点も評価できる。

「未来都市型の森『世界健康の森・日本』」
提案者:株式会社 昭和設計(提案者代表)、有限会社SANAA事務所、一般社団法人 医療国際化推進機構、株式会社 健康都市デザイン研究所、株式会社 博報堂、学校法人 滋慶学園
導入する都市機能: 医療センター、サービスアパートメント、レジデンス、オフィス、コンベンションセンター、大学院、フードコート
寸評:「世界健康の森・日本」をテーマに、大地と融合した建物によって、「みどり」・水・建築が一体となった有機的都市空間を提案。津波浸水の状況に応じた高所避難が可能で、避難者へのサービス提供が容易と災害対応の面でも評価できる。

「GREEN CAPITAL OSAKA グリーンビジネス・ライフスタイルにおける、『みどり』のスマートシティ」
提案者:大和ハウス工業株式会社(提案者代表)、株式会社 フジタ、大和リース株式会社
導入する都市機能:ホテル、商業施設、医療施設、公的機関、教育施設、住居
寸評:グリーンビジネスのショールームとして、世界に情報を発信する「みどり」の機能を具体的に提案している点は特徴的であり評価できる。

『うめきたプロジェクト』では、現在、新しい都市型エネルギー技術の実験も行われているという。次回は、「プランニングやデザイン等が優秀な提案」10者と共に、同プロジェクトが育むエネルギー技術についてレポートする。

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