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空想未来研究所2.0

ドラマ見るなら11匹ゲットだぜ!ピカチュウ発電所の作り方

「ポケットモンスター」のピカチュウの発電力を考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「発電力」。今やハリウッドで実写&CG映画化されるほどに、発電キャラクター界のトップを走る「ポケットモンスター」のピカチュウが、実際どれくらいの発電力を持っているのか、考えてみました。

ピカチュウ発電所計画が発表

火力、水力、風力……と、発電の方法にはさまざまあるが、そのエネルギーの源流をたどっていくと、実はたったの3つしかない。

1つ目は「太陽」。太陽光発電はもちろん、風も雨も太陽の熱で生まれ、波も風で起きるから、風力発電、水力発電、波で電気を生む波力発電の源は、太陽のエネルギーだ。

また、火力発電に使われる石炭は、太古の植物が地中で炭化したもので、植物は太陽の光で光合成をして成長する。石油は太古の動物の脂であり、天然ガスは石油から揮発したガス。動物は植物を食べて成長するから、火力発電の源も太陽と言える。バイオマス発電も同じだ。

2つ目は、月と太陽の「引力」。潮の満ち引きは、3分の2が月の引力、3分の1が太陽の引力で起きる。干潮と満潮の差で電気をつくる潮力発電は、この2つの天体の引力によって可能になっている。

3つ目は、はるか昔から地中に蓄えられている「放射性物質」。これを源にするのは、パッと思い付く原子力発電だけではない。地球が、生まれてから46億年もたつのに冷え切っていないのは、地下の放射性物質が放つ放射線のエネルギーが熱に変わっているから。地熱発電の源泉もこれだ。

こうして見渡すと、自然界にはエネルギーがあふれ、人間はそれをさまざまな手段で利用していることが分かる。

それは空想の世界でも同様で、実にいろいろな発電が行われている。中でも最もユニークなのが「ポケモン(ポケットモンスター)」だ。ニンテンドー3DS「ポケットモンスター サン・ムーン」の公式サイトにあるポケモン図鑑(サン版)に、こんな記述がある。

たくさんのピカチュウで発電所を造る計画。

なんと!? ピカチュウは10万V(ボルト)の電撃を放つ。現実の自然界にも電気を放つ生物はいて、最強はデンキウナギの800V。その125倍はすごいけれど、一体何匹集めれば、実用的な発電所が造れるのだろうか。

ピカチュウの「電力」と「電力量」

発電所を造るとなると、ピカチュウが放つ電撃の「電力」と「電力量」を明らかにする必要がある。

電力は「1秒間にどれほどの電気エネルギーを作れるか」という、いわば瞬発力のようなもので、「電力=電圧(V)×電流(A:アンペア)」で求められる。単位は「W(ワット)」や「kW(キロワット)」。実際の発電所の発電能力も電力で表されている。

電力量は「ある期間内に作った電気エネルギーの総量」のことなので、「電力量=電力×時間」。だから必ず「年間」や「1日当たり」など期間を限定する言葉が冠せられる。単位は、科学では「J(ジュール)」が使われ、「1W・1秒」で1J。電気の事業では「kW時」が用いられ、「1kW・1時間」で1kW時だ。1時間は3600秒だから、1kW時=360万Jの関係がある。

まず、ピカチュウの電力を明らかにしよう。これには、電圧と電流を知る必要がある。電圧は10万Vだが、電流は?

その数値は明らかにされていないが、ピカチュウが体にためた電気を放電するところから推測できる。電気の量は「C(クーロン)」で表され、1秒間に1Cの電気が流れたときの電流が1A。すると、ピカチュウが体に何Cの電気をためていて、それを何秒で放つかが分かれば、電流も計算できることになる。

何かに電気をためるとき、たくさんの電気がコンパクトに集まるほど、電圧は高くなる。ポケモンは身長や体長が「高さ」という言葉で表され、ピカチュウの場合は0.4m。ここでは、話をシンプルにするために、ピカチュウの体を半径0.2mの球に置き換えよう。

その場合、電圧が10万Vに達するのは、体に0.32Cの電気がたまったときだ。数字は小さいものの、Cは大きな単位で、雷雲にたまる電気でさえ20Cだから、かなりの電気量だ。

では、これを何秒で放つのか。雷が地面に達してから流れ終わるまで平均10万分の8秒と言われる。ピカチュウの放電時間も同じと仮定すると、電流はこうなる。

電流=0.32C÷0.00008秒=4000A

家庭の分電盤には「40A」などと書かれているが、これは最大40Aまで流せるということだから、その100倍という大電流だ。すると、電力は次のように求められる。

電力=10万V×4000A=4億W=40万kW

中型の火力発電機に匹敵する。すごいぞ、ピカチュウ!

何匹いれば1時間ドラマが見られる?

だがこれは、電力=瞬発力の話。電力量=総エネルギーではどうか。

前述したように、「電力量=電力×時間」で、放電時間は「10万分の8秒=4500万分の1時間」だから、ピカチュウが一発の電撃で生み出す電力量はこうなる。

電力量=40万kW×4500万分の1時間=0.0089kW時

少ない!

ピカチュウは何度も続けて電撃を放つことはめったにないし、健康のためにも発電は1日1回に抑えた方がいいだろう。すると、1匹のピカチュウが1日に作れる電力量も0.0089kW時となる。

つまり、電力源としてのピカチュウは、瞬発力はものすごいけれど、放電時間が短いため、生み出す電気エネルギーはわずかということだ。

例えば、中型の液晶テレビの消費電力は100Wほど。これで1時間のドラマを見ると、0.1kW時の電力量になる。そのためだけに、ピカチュウが11匹必要!

消費電力800Wのエアコンを10時間使うには8kW時が必要なので、これには900匹!!

1kWの電子レンジでレトルトカレーを1分温める場合は0.000017kW時で済むが、これにさえ2匹! う~む、カレー1杯のためだけに……。

家庭で消費する電力量を全てピカチュウで賄おうとすると、どうなるのか。

一般財団法人 省エネルギーセンターの調査によると、一世帯当たりの年間消費電力量は4432kW時(2012年)。ピカチュウに換算するために1日当たりに直すと、12.1kW時。これを確保するには、各家庭が1362匹のピカチュウをゲットせねば!

ピカチュウと一緒なら発電所ビジネスは可能か

一般家庭でさえこれなのに、発電所を造ろうというポケモンの世界。一体何匹のピカチュウを結集させねばならんのか。

よし。どうせなら、わが国最大級の発電能力を誇る富津火力発電所と同じ規模のものを造る場合を考えよう。同発電所の最大出力は516万kW。フル稼働したときに1日で生み出す電力量はこうなる。

1日の電力量=516万kW×24時間=1億2384万kW時

これと同じ電力量を生み出すのに必要なピカチュウの数は、次の通り。

ピカチュウの数=1億2384万kW時÷0.0089kW時/匹=139億匹

ピカチュウって、そんな莫大にいるの!?

たとえいたとしても、これだけのピカチュウを1つの発電所に集めると、きっと大変なことになる。敷地面積が富津火力発電所と同じ116万m2なら、ピカチュウ人口密度は1 m2当たり1万1983匹。狭いよ~、キツイよ~!

やっぱりピカチュウは、自由に野原を駆け回り、バトルで活躍してほしい。

10万Vの電撃を放てる生物が棲息する世界。そこに住む人々は、その生物を集めて発電をしようとする。現実世界の人間も、鳥を見て空を飛びたいと思い、月を見てあそこに行きたいと思ったのだから、自然な発想だ。実現に至るには、数限りない失敗があったが、それを乗り越える原動力となったのは、最初に抱いた「夢」である。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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