2018.1.12
「エネルギー基本計画」に見るエネルギーのこれから
エネルキーワード 第24回「エネルギー基本計画」
「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第24回は「エネルギー基本計画」。国の中長期的なエネルギー政策の方針のことで、経済産業省は有識者からなる審議会で議論を続けています。3年に1度見直すことになっている基本計画、その議論のポイントは何でしょうか。
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TOP写真:イメージ画像
出典:Pixta
エネルギー基本計画とは
「エネルギー基本計画」(以下、「基本計画」)というものがあります。
国の中長期的なエネルギー政策の方針のことで、直近では2014年の6月に策定されています。その中で原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付けました。その「基本計画」に基づき経済産業省が決定した「長期需給エネルギー見通し」で、2030年度の電源構成に占める原子力発電の比率を20~22%としました。
「基本計画」は3年に1度見直すことになっており、経済産業省は有識者からなる審議会で議論を続けています。中心となっているのはやはり「原子力発電の在り方」です。
さて、日本の原子力発電の現状を見てみましょう。これまでに再稼働した原子力発電所は5基、廃炉が決まった原子力発電所は14基となっています。
こうした現状を皆さんはどう思われるでしょうか?
先日、筆者の会社(株式会社安倍宏行)で行った街頭インタビュー「原子力発電は必要だと思うか?」(2017年10月に東京都内数カ所で実施)では、「必要だと思う」「どちらかというと必要だと思う」と答えた人が回答者の53%となり、「必要だとは思わない」「どちらかというと必要だと思わない」と答えた人たちを上回りました。
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写真:東京・渋谷
(C)安倍宏行
「原子力発電は心配だ」という声はもちろんありましたが、一方で学生さん、主婦、中年のサラリーマンの人たちなど幅広い年齢層の人たちから、「今のままでは日本が必要な電力がまかなえないのではないか」という声を多く聞きました。多くの人が原子力発電の必要性について具体的に考えている人がかなりいるのだな、と感じました。
さて、前述の審議会ですが、12月26日開催の回では、委員から再生可能エネルギーの普及を優先すべきだ、との意見や、原子力発電所の新設や建て替えを求める意見などが出たということです。さて皆さんはこの原子力発電所の新設・建て替えについてどのようにお考えでしょうか?
とんでもない、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、原子力発電所の新設・建て替えが必要だという意見にはある理由があります。キーワードは「ベースロード電源」と「地球温暖化防止」です。
「ベースロード」電源としての原子力発電
まず現在の基本計画では、「ベースロード電源」としての原子力発電の電源構成比率22~24%(2030年)を達成することが必要ですが、現状その達成はほぼ不可能と言われています。
政府は東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、「原子力発電所の運転期間は原則40年」と定めました。この「40年ルール」を現存の原子力発電所に厳格に適用すると、2031年に設備容量が現在の半分に、2038年に現在の2割を切り、2064年にはゼロとなると経済産業省は試算しています。つまり「40年ルール」の変更が必要となってくるのです(図1)。
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(図1)40年運転制限制
実は法律上、40年の運転期間を20年延ばし、60年とすることが可能となっています。既に原子力規制委員会は、運転開始から40年を超えている福井県の関西電力高浜原子力発電所1、2号機について最長20年の運転延長を認めています。これは法律にも定められています。運転期間を60年に延長すれば、計算上は上記の目標は既存原子力発電だけで達成できる計算です。
「地球温暖化防止」の視点
問題は次の「地球温暖化防止」です。
実は、日本は2050年までに温室効果ガスを80%削減すると国際的に宣言しているのです。この目標を達成するためには、CO2を出さない原子力発電が必要となってくるのです。
しかし、いまある全原子力発電所を60年運転しても経過年数に従って徐々に廃炉が進みますから、2050年度ごろに全電源に占める比率は10%程度にまで低下してしまいます。このままでは温暖化目標達成の国際公約が達成できなくなります。再生可能エネルギーで対応しようと思っても、安定性やコストの課題がどうしても残ります。したがって、原子力発電所新設・建て替えによって原子力発電比率を維持すべきかどうかが論点となるわけです。
原子力発電の問題は多面的に考えねばなりません。「基本計画」にのっとって、安全性が確認された原子力発電所は再稼働し、運転期間を見直して「ベースロード電源」としての原子力発電を維持すること。そして日本の「地球温暖化防止」目標を達成することが重要なのでは、と筆者は考えています。
今回の「基本計画」の見直しにはそうした論点をきちんと反映させねばなりません。それが政府の国民に対する、そして国際社会に対する責任だと思うのです。私たちも当事者であり、現実的な議論に参加することが重要なのではないでしょうか。
【参考】日本の原子力発電所
北海道に3基、東北14基、関東甲信越9基、東海5基、北陸15基、中国2、四国3、九州に6、計57基、もんじゅ・常陽も含めると、全国に59基の原子力発電所がある(図2)。
※伊方3号機:運転停止中/大飯原発1号機2号機:廃炉決定
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(図2)我が国における原子力発電所の現状 ※平成29年10月4日時点
2017年12月現在稼働している原子力発電所は、鹿児島にある九州電力の川内原子力発電1・2号機、福井県にある関西電力の高浜原子力発電3・4号機の計4基。
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写真:川内原子力発電所
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写真:高浜発電所<Public domain>
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