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「洋上風力発電」を3分解説!

陸から海へ。世界が投資する期待の再生可能エネルギー

エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第9回のテーマは「洋上風力発電」。カーボンニュートラル実現の具体的な手段の一つとして、2050年に向け大きく成長することが見込まれている期待の産業とは? 最低限知っておきたい「洋上風力発電」のポイントを解説します。

世界で急拡大する洋上風力発電

海の上に風車を設置し、洋上の風の力で発電する洋上風力発電が世界で急成長しており、日本でもその展開が期待されています。

2018年段階の導入容量は世界で23GW(ギガワット)。国際エネルギー機関(IEA)は、2040年に342GW(現在の政策の方向性や目標を組み込んだ公表政策シナリオより)の洋上風力発電が世界で導入されると見込んでおり、さらに、パリ協定の目標を達成するための道筋(持続可能な開発シナリオ)としては、562GWにも達すると予測しています。

今後、急速に拡大していくことになり、特にEUや中国で大きく伸びると考えられています。

陸上と比較して、洋上の風力発電所には次のようなメリットがあります。

①風況が良く風の乱れが小さい
②土地や道路の制約がなく大型風車の導入が比較的容易
③景観や騒音への影響が小さい

その一方で、次のような点で陸上の風力発電所よりもコストがかかります。

①洋上風車の基礎構造
②洋上での風車建設費や維持管理費
③洋上変電設備や海底ケーブルの敷設

洋上風力発電で先行する欧州では、風車の大規模化や量産投資を行うことで急速なコスト低減が進んでおり、国の補助金に頼らないプロジェクトも登場しています。

「再エネ海域利用法」に基づく日本の洋上風力発電開発

日本でも、洋上風力発電の開発は進められています。

とはいえまだまだ始まったばかりで、産業化するにあたり、まずは国内外からの投資を呼び込み、国内での市場創出が必要となっています。

日本では、2019年4月に施行された「再エネ海域利用法(正式には、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)」で、洋上風力発電を目的とした海洋利用のルールが初めて明確になりました。

同法に基づき、2019年12月に長崎県五島市沖が開発のための促進区域に指定され、同区域で洋上風力発電事業を行う事業者選定の公募が行われました。

さらに、2020年7月には秋田県の能代市・三種町・男鹿市沖、同県由利本荘市沖(北側・南側)、千葉県銚子市沖も促進区域に指定され、11月から公募が開始されています。

こうした国が主導するプロジェクトを着実に進めることが国内市場創出のきっかけとなるため、今後はさらなるプロセスの迅速化が求められます。

そして、国内外からの投資を呼び込むには、政府が導入目標を提示することが大きな役割を果たします。

日本は2020年12月に「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を策定し、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWのプロジェクトを形にするという目標を示しました。

同ビジョンでは、送電線の運用ルールや風車建設・管理のための基地港湾といった、洋上風力産業を支えるインフラの整備計画についても言及しています。

さらに、同年同月に公表された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においても、洋上風力産業は重要分野の一つとして位置付けられ、実行計画として先述した洋上風力産業ビジョンの内容が反映されています。

洋上風力産業の育成には技術開発が不可欠

今後、洋上風力発電を産業として育成していくとなれば、国内にサプライチェーンを確保することが重要になります。

今のところ日本は、陸上を含め風車設備を海外からの輸入に依存しており、国内部品サプライヤーを十分に活用できていません。

そこで、産業界によって示されたのが国内調達率とコスト低減の目標です。

国内調達率は2040年までに60%まで引き上げ、発電コスト(着床式)は2030~2035年までに8~9円/kWh(キロワット時)まで低減させると掲げられました。

日本における洋上風力発電の発電コストは約200ドル/MWh(=約22円/kWh)と、他国に比べてかなり高いのが現状です。

もちろん、先行する欧州とは気象条件や海洋条件が異なりますが、同レベルにコストを低減させるとなれば、欧州とは違った革新的な技術の導入が不可欠となります。

各国で主流とされている着床式設備(風車の基礎を海底に設置する建設方式)だけでなく、世界でもまだ数の少ない浮体式設備(海上に浮かべる方式)の技術開発と量産化を進め、設備コストを大幅に下げられれば、国内調達率の向上と共に実現の可能性が見えてきます。

再エネ海域利用法に基づいて複数のプロジェクトが実際に動きだし、それらの経験を踏まえて開発スピードをどれだけ上げられるか。日本での洋上風力産業の飛躍が期待されます。

洋上と陸上の風力発電の発電コストを国別で比較したグラフ。洋上、陸上共に日本は高い

資料:OECD/NEA, “Projected Costs of Generating Electricity: 2020 Edition” を加工して作成

参考:
・国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)特集WEBサイト「国内初!沖合における洋上風力発電への挑戦~プロジェクト現場レポート~
・経済産業省 資源エネルギー庁WEBサイト「なっとく!再生可能エネルギー 洋上風力発電関連制度
・経済産業省 資源エネルギー庁『洋上風力産業ビジョン(第1次)』(2020年12月15日)
・経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』(2020年12月25日)
※参照:2021年3月26日

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