1. TOP
  2. トピックス
  3. 実は超効率的なスーパーフード! 昆虫食文化が世界で広まるワケ
トピックス

実は超効率的なスーパーフード! 昆虫食文化が世界で広まるワケ

ビールにラーメン、ハンバーガー! 次々に開発される昆虫食が未来の食を救うヒントになる

イナゴや蜂の子など、かつては貴重なタンパク源として日本に根付いていた昆虫を食べる文化。しかし、近年はその文化も廃れ、昆虫食=過去のものと考える傾向になりつつある。そうした中、新たな観点から昆虫食の存在に注目が集まり、世界中で新しいマーケットが開きつつあるという。昆虫食の魅力を探求する東京都のスタートアップ企業・ANTCICADA(アントシカダ)の取り組みとともに、新しい昆虫食の世界を紹介する。

新たな食材としての可能性

栗黒、瑠璃-Ruri-、インドの青鬼──。これらの名前にピンと来た人は、かなりの「通」ではないだろうか?

正解はクラフトビールだ。

ビール大手各社が軒並み苦戦する中、根強いファンによって出荷量が増加傾向にあるクラフトビール。東京商工リサーチの調査によると、全国主要地ビールメーカー70社の2019年1~8月の総出荷量は8966.8klで、前年同期比4.0%増だったという。

そうした中、世界初のクラフトビールが岩手県の「遠野醸造」で誕生した。その名も「コオロギビール/ Cricket Dark Ale」だ。

コーヒーやカカオ、カモミールのような香りに加え、苦味とコクのある味わいが特徴

コオロギビールには、福島県の「太陽グリーンエナジー」のファームで育てられたフタホシコオロギを使用する。

丁寧な洗浄と熱処理を加えて焙煎したものをローストモルトと共に麦汁に加え、コオロギの香りとうま味を存分に引き出しているという。

ローストされたフタホシコオロギとモルト。香ばしさとゆったりとした苦味が特徴的な味に仕上がる

渋谷PARCO内にある食のニューススタンド「COMING SOON」にて、3月15日(日)~18日(水)にお披露目される予定。また、同日から遠野醸造併設のビアレストラン「TAPROOM」でも飲むことができる。

一風変わったコオロギビールを仕掛けたのは、昆虫食をプロデュースするスタートアップ企業ANTCICADAだ。

2015年に東京都の「ラーメン凪」と共同開発したコオロギラーメンで注目を集め、昨年12月には愛知県の「桝塚味噌」と共にコオロギ醤油を作った企業としても知られている。

昆虫食という言葉を聞いただけで敬遠する人も少なからずいるだろうが、実は今にわかに注目されている分野だということをご存じだろうか?

きっかけは、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した「食用昆虫類:未来の食糧と飼料への展望」というレポートだ。

その内容は、さまざまな面から昆虫食を推奨する内容となっている。

エネルギーの観点から昆虫食を考察する

まず前提として触れられているのは、2030年に世界人口が90億人に達するという予測の中で、動物性のタンパク源が不足するということ。その埋め合わせとして、昆虫食が薦められているのだ。

現在、動物性のタンパク源としてポピュラーなのは、牛や豚、鶏などの家畜類。それらを飼育するには広大な敷地が必要になるわけだが、人口増加に伴って安易に規模を拡大してしまうと、森林破壊や環境汚染につながってしまうという問題がある。

一方、コオロギなどの昆虫を養殖する場合、その面積は家畜類に比べて格段に狭くて済む。養殖工場の中で大量に飼育できるためだ。

牛のおならやげっぷに含まれるメタンガスが、地球温暖化に多大なる影響を与えるという研究も盛ん。その点、昆虫の養殖が環境に与える負荷は小さい

また、飼料要求率という指標でもそのポテンシャルの高さを示している。飼料要求率とは、対象の生体を1kg増やすのにどれくらいの餌が必要かを示すエネルギー効率のようなものだ。

一般的に牛が10kg、豚が5kg、鶏が2.5kgという数字に対し、コオロギは1.7kgとかなり高効率。出荷までのスピードが速い点も特徴といえる。

さらに、可食部率というもう一つの指標を加えるとコオロギのすごさが見てとれる。

牛や豚、鶏などの可食部率は約40%とされているが、コオロギの場合は約100%。つまり、無駄がなく食べられる食材なのだ。

また、輸送の観点からみてもメリットは大きい。

家畜類を運搬するには多くの輸送エネルギーが必要だが、昆虫の場合はごくわずか。特にコオロギのように粉末にして使う場合、格段に小さなスペースとエネルギーで運搬することが可能だ。

豚を運ぶトラック。電化のトラックも増えつつあるが、まだまだ環境への負荷が大きいディーゼルエンジンが主流

こうした背景もあり、世界では昆虫食に対する動きが活発になっている。

2017年にはスイスの大手スーパーマーケットがミールワーム(甲虫の幼虫)を使ったハンバーガーとミートボールの販売を開始したほか、フィンランドの大手食品メーカーもコオロギの粉末を練り込んだパンを販売。チェコやアメリカでもコオロギを原料としたプロテインバーが注目を集めているという。

2018年にはEU全体で昆虫を食料として認める法律が制定され、食用昆虫の取引が自由化された。歴史上、昆虫を食べる文化のなかったヨーロッパでは革新的な動きだ。

今回コオロギビールを発表したANTCICADAも、ことし4月に東京・日本橋馬喰町で昆虫食が楽しめるレストランをオープンする予定だという。

ANTCICADAで提供される予定の料理の一例。だしやタレ、脂にもコオロギを使用したコオロギラーメン(上)とエゾシカのロース肉に3種類のスズメバチの蜂の子で作った味噌ベースのソースが添えられた一品(下)

世界各地で進められている新しい昆虫食の開発。

人口増加に伴うさまざまな問題点を解消する可能性を持った救世主として、また、新たな食の楽しみ方として、より身近な存在になる日も近いのかもしれない。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitterでフォローしよう

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • はてぶ!
  • LINE
  1. TOP
  2. トピックス
  3. 実は超効率的なスーパーフード! 昆虫食文化が世界で広まるワケ