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道路の照明をネットワーク化!東京・杉並区で「スマート街路灯」の実証実験中

街路灯の光量や消費電力をフレキシブルに変化させて省エネ化を目指す

ITとモノをつなぐ「IoT」(モノのインターネット)は、今や街全体のスケールへと拡大し「スマートシティ」として発展し始めた。そのスマートシティの社会実装を目指し、東京都杉並区で総合精密部品メーカーのミネべアミツミ株式会社と電機メーカーの岩崎電気株式会社が共同し、「IoT街路灯実証実験」を進めている。

スマートシティ実現に向けた実証実験、開始

近年、「スマートシティ」という言葉を耳にする機会が増えている。

例えば、電気、ガス、水道、道路といったさまざまなインフラとITをつなぐと、これまで把握できていなかった子細な公共データを取得することができるようになる。

スマートシティはロボットやAI(人工知能)とも連携させれば、社会の超高齢化による労働力の減少、経済活動縮小の対策にもなる可能性がある

画像協力:ミネべアミツミ株式会社

現在、世界各国がスマートシティ化の取り組みを始めており、日本でも国を挙げて推進している。それは、都市部への人口集中、それに伴う交通渋滞・犯罪の増加、温室効果ガス・環境汚染物質の排出量増大など、多彩かつ膨大な社会課題が背景にある。スマートシティ化によって集められたデータを分析していけば、こうした社会課題が明確に可視化でき、解決のための手段を講じられると期待されているのだ。

そんなスマートシティ実現に向けて、かねてより意欲的だった東京都杉並区が場所を提供し、精密部品を製造・販売するミネべアミツミと照明機器を得意とする岩崎電気が、2019年秋から「IoT街路灯実証実験」を行っている。

街路灯をネットワークでつなぐメリット

実験場となっているのは、JR中央本線・西荻窪駅の北口。周辺約400mの範囲にネットワーク接続ができるスマート街路灯11灯、気象観測用の環境センサー1台が設置されている。

実証実験中のスマート街路灯は、LEDの劣化を抑制する技術、強度の高いポリカーボネート製のカバー、腐食を防ぐ特殊な塗装などが施されており、経年劣化にも強いという

画像協力:ミネべアミツミ株式会社

このスマート街路灯は、独自の無線技術によって構築されたネットワークにより、環境センサーと共に一元管理することができる。

一見、「街路灯をネットにつないだだけ」と思うかもしれないが、管理できるようになることは想像以上に幅広い。例えば、夜間に消えてしまっている、または昼間に点灯したままになっている街路灯があればすぐに特定でき、メンテナンス対応が従来より早くなる。また、季節や時間に合わせてあらかじめ調光設定をしておけば、光量を自動でコントロールできる。

加えて、点灯状況や消費電力量をリアルタイムでモニタリングできるため、運用管理の効率化と電力費削減を同時に図ることが可能。つまり、行政コストの削減にもつながっていく。

スマート街路灯のモニタリング画面。マップに設置点が示され、それぞれ調光レベルや消費電力量、点灯時間などが一目で分かる表示に

画像協力:ミネべアミツミ株式会社

また、併せて設置された環境センサーは、住民の住環境向上につながる可能性がある。

環境センサーは、主に温度、湿度、気圧、風速といったデータを観測し、収集する。街路灯が設置されるそう広くない範囲で局所的にデータを取得できれば、広域の天気予報よりも関係性の深い情報を地域住民に提供できるかもしれない。地元から自動送信されてくるのであれば、近所への買い物や洗濯などに使えるうれしいデータだろう。

「スマート街路灯の数は、1本でも1万本でもネットワーク内にあれば一括で管理できる」とミネべアミツミの担当者。実証実験は駅前の範囲だが、規模拡大は容易のようだ。

本格導入進む海外諸国。期待高まるスマート街路灯

海外に目を向けると、スマート街路灯は既に多くの国で稼働している。中でもカンボジアは、電気代削減と道路照明の安定管理を推進しようと、首都プノンペンに約2000本、アンコールワット周辺に約3500本が設置されている。他にも、米国、イタリア、スイス、スペインで導入済みだ。

同社が手掛けたカンボジアのスマート街路灯と実際の管理画面。あらかじめ調光設定されており、夕方と夜の光量が変えられている

画像協力:ミネべアミツミ株式会社

杉並区での実証実験は、いったん2020年7月31日に終了する。街路灯から取得されたデータは随時杉並区に共有されているものの、区民へのデータ提供は現時点では行われていない。

ただ、ミネベアミツミの担当者は、「実証実験後の検討にはなるものの、取得した数値データから、杉並区民に何らかのソリューションが提供できないか協議していく」と言う。現状で複数の自治体が興味を示しているとも言い、今夏以降の展開も気になるところだ。

また同社は、スマート街路灯以外にも、防犯カメラやパーキングセンサーといった連携技術の開発も手掛けている。今後、スマートシティ化促進に向けて、徐々に国内での実証実験や導入を進めていくとしている。

仕事からの帰り道、刻々と深まる夜と共に街の明るさが変わる。通りを歩けば、地元の商店街だけの天気予報がスマートフォンに届く。たとえ小さな街でも、スマートシティを実感できる日はきっと訪れるだろう。

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