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日本初! “ギ酸”を燃料に発電する50W級新型燃料電池をジェイテクトが開発

最大出力密度は、メタノールを利用した燃料電池超えの290mW/cm2

低炭素社会の実現を目指し、世界中で新たなエネルギー資源の開発競争が行われている昨今。その中で、これまでエネルギー資源としては有効活用されていなかったギ酸を用いて発電する日本初の50W級新型燃料電池が開発された。今回は、いち早くギ酸の可能性に着目し、研究を推し進めた日本企業の取り組みをご紹介する。

エネルギー資源としてのギ酸の可能性

樹脂や酢酸製造時の副産物として生産されるギ酸──。

常温で液体、エネルギー密度が高い、燃焼・爆発しないなどを特徴とするこの有機酸が秘めるエネルギー資源としての可能性は、水素やアンモニア、メタノールといった他の発電用燃料をしのぐのではないか。

そう言われながら、現在の用途は主に家畜飼料の防腐剤など極めて限定的で、エネルギー資源としては未使用の状態。とても有効活用されているとは言い難い現状だった。

そうした中で、トヨタグループの一つである株式会社ジェイテクトは、ギ酸を燃料に用いる国内初の50W級機能実証機の開発を発表した。

直接ギ酸形燃料電池を用いた50W級機能実証機

かねてよりエネルギー資源としてのギ酸に着目していたジェイテクトは、2018年に金沢大学の辻口拓也准教授と「直接ギ酸形燃料電池(JTEKT-Direct Formic Acid Fuel Cell/以下、J-DFAFC)」の共同研究を開始した。

この産学連携により研究が加速したことで、今回の成果につながったという。

高出力密度と長時間発電を実現

開発された50W級機能実証機は、金沢大学の独自パラジウム触媒(Pd/C)技術をはじめ、ジェイテクトの既存事業で長年培ってきた材料・表面処理技術や解析技術、モノづくり技術などを駆使して発電効率を高めているのが特徴だ。

発電セルは、電池サイズを9cm角、セルを複数枚積層した構造を採用し、メタノールを利用した燃料電池よりも高い最大出力密度290mW/cm2を達成。

また、低騒音・低振動で稼働できる上、液体型燃料電池の特徴を生かして長時間の発電にも対応するという。

50W級機能実証機が搭載する発電セルの外観。J-DFAFCは、固体高分子形燃料電池(イオン伝導性を有する高分子膜を電解質として用いる燃料電池)の一種で、ギ酸水溶液と空気中の酸素を燃料に発電する

J-DFAFCは負極に供給されたギ酸水溶液が触媒によってCO2に分解される際、水素イオン(H+)と電子(e)を生成。

次に生成された電子は外部回路を、水素イオンは電解質膜を通って正極に達すると酸素と反応して水が生成されるというもの。

この一連の化学反応によって電力を発生させる仕組みだ。

J-DFAFCの発電原理を示したイラスト図

ジェイテクトは、すでに数百W級の燃料電池の開発に着手しており、今後は1kW級の燃料電池開発を目指すとしている。

完成すれば、安全かつクリーンなエネルギー源として、照明や通信用電子機器の電源をはじめ、非常用電源、遠隔地電源、住宅・施設での小型分散電源など幅広い用途で活躍が期待される。

持続可能な社会の実現のためにも、早期の社会実装を目指した出力密度の向上や電力安定化のさらなる技術革新に注目が集まる。

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