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IHIが再エネ利用のグリーンアンモニア製造試験に成功

グリーン水素からアンモニアを製造するPower-to-X技術の確立へ

株式会社IHIは,再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来のグリーン水素を原料として二酸化炭素(CO2)フリーのアンモニア(NH3)を製造する装置を開発。福島県相馬市のそうまIHIグリーンエネルギーセンター(以下、SIGC)内にてラボスケールでの試験を実施し、目標とした効率でグリーンアンモニアを製造できることを確認した。エネルギー分野における脱炭素燃料として期待が寄せられるグリーンアンモニア利活用の浸透へ寄与する今回の研究について解説する。

燃料としてカーボンニュートラルをけん引するアンモニア

地球温暖化の主な原因であるCO2の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル社会の実現──。そのためにエネルギー分野では、火力発電時のCO2排出抑制が大きな課題となっている。アンモニアは燃焼させてもCO2を排出しないため、気候変動対策への貢献の観点からも水素(H2)と並びCO2排出を抑える次世代のクリーンエネルギーとして脚光を浴びている。

IHIは2021年、液体アンモニアと天然ガスの混焼、さらに技術的に困難だった100%液体アンモニア専焼でのガスタービン運転に成功。アンモニア発電の可能性を切り開き、2026年度の商用化を目指し燃焼技術・装置の研究を続けてきた。

※IHIの取り組みに関する記事:既存燃料との併用から100%アンモニアへ! IHIが見据える次世代火力発電ビジョン

IHI製アンモニア専焼2,000kW級ガスタービン「IM270」

画像提供:株式会社IHI

現在、アンモニアは天然ガスを改質して製造した水素と空気中の窒素(N2)をもとにした製造が主流であり、その製造過程で天然ガス由来のCO2が排出されている。燃料の製造から利用まで一貫した真のカーボンニュートラル実現には、製造時にCO2を排出しないグリーンアンモニアの製造法の開発と汎用が必須であり、同社はこの研究にも取り組んできた。

Power-to-X技術の確立から、グリーンアンモニア製造へ

IHIは、負荷変動を生じる再エネ由来の電気を熱や水素に変換し、さまざまなエネルギーキャリアや用途へ効率的に利用するPower-to-X技術(電力を何らかのエネルギーに変換して貯蔵・利用する技術のこと)の確立を推進。これまでに再エネから変換した熱を利用し、福島県相馬市における下水処理場の汚泥の乾燥による減容化・肥料化、水電解装置を用いてつくられた水素とCO2から合成メタンを製造し地域コミュニティバスへ燃料を供給する実証事業などを行ってきた。

そうした取り組みの流れから、SIGC内の水素研究棟「そうまラボ」にPower-to-X技術を用いたグリーンアンモニア製造試験装置を設置した。

Power-to-X技術によるエネルギー変換のイメージ図

資料提供:株式会社IHI

2018年開所のSIGCは、持続性のある地産地消型スマートコミュニティー事業により「水素を活用したCO2フリーの循環型地域社会創り」を実践する施設で、2020年開所の「そうまラボ」では余剰電力で製造した水素を使用し、水素利用・エネルギーキャリア転換技術を研究している。

今回、設置されたグリーンアンモニア製造試験装置により水素製造からアンモニア合成までの一連のプロセスを検証するための試験を実施。目標としていた効率でアンモニアが製造できることを確認した。

2020年に開所した水素利用の先進技術開発拠点「そうまラボ」

画像提供:株式会社IHI

「そうまラボ」に設置されたグリーンアンモニア製造試験装置。水素、窒素にFe系触媒(鉄系の触媒作用を利用した触媒)を用いてアンモニア1kg/日を製造する

画像提供:株式会社IHI

IHIでは今後さらに製造プラントの運転条件の最適化、反応器のデータ取得などを続け、グリーンアンモニア製造プロセス全体の検証を進めていく。

グリーンアンモニア製造手法の一つとして、Power-to-Xを使用した本技術の早期の大型化・商用化を目指し、研究はさらに加速する。

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