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従来比1/50以下! 東京大学が超小型電池でリチウムイオン電池の熱暴走の検出に成功

物質・材料研究機構との共同研究で、安全な蓄電池開発を加速する中核技術を実証

東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の山田淳夫教授らの研究グループは、リチウムイオン電池の発火や爆発を引き起こす「熱暴走」を効率的に評価する革新的な手法を開発。熱暴走の検出感度を高め、従来の1/50以下の超小型電池での評価を可能にした。安全かつ信頼性の高い高性能蓄電池の開発を促進し、カーボンニュートラル社会の実現の後押しとなる本研究の詳細を解説する。

安全性を高めたリチウムイオン電池開発に立ち塞がる障壁

繰り返し充電して使用できるリチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコン、EV(電気自動車)、電力貯蔵システムなど幅広い分野に導入が進み、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、さらなる高エネルギー密度化と大規模化が求められている。

その一方で、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池はエネルギー蓄積量が増すことで過熱、衝撃などの異常発生時に制御不能な急激な温度上昇=熱暴走を起こし、発火や爆発事故のリスクが高まってしまう。

※蓄電池に関する山田教授の解説記事:今、蓄電技術が注目される理由
※山田教授が開発に成功した超高エネルギー密度リチウムイオン電池に関する記事:世界初! 東京大学が従来比1.6倍の高エネルギー密度の電池開発に成功

電池が異常な状況にさらされると、負極保護被膜(電池表面を覆い電解液の分解を抑制、電池を安全に動作させる膜)、の分解、負極材(電池内でエネルギーを蓄えたり放出したりする役割を担う材料)と電解液の直接反応、正極材(+極に用いる材料。電池の性能を左右する)の熱分解による酸素放出といった連続的な発熱性化学反応が起き、電池の温度が急激に上昇する

資料提供:東京大学大学院工学系研究科

熱暴走に対しては材料技術、電池設計技術、電池制御技術など総合的な対策が必要であると同時に、効果的な抑制には効率的かつ高精度な安全性評価技術の確立が不可欠だ。

しかし、技術の確立には大量の原材料や高価な製造設備が必要であり、加えて大型防爆設備を含む厳格な安全基準が求められる。こうした制約が電池の安全性向上を目指した研究・開発にとって大きな障壁となっていた。

そんな状況を打破するべく、東京大学大学院の山田教授とコ・ソンジェ講師、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)エネルギー・環境材料研究センターの増田卓也センター長、山口祥司特別専門職、大塚裕美エンジニアらによる先進蓄電池研究開発拠点の研究チームは、独自研究により極めて小さい電池での熱暴走挙動の定量的な解析を実証、発表に到った。

従来の1/50サイズの電池で熱暴走の挙動を検出・解析

研究チームは、発熱検出感度を高めるべくリチウムイオン電池の形状を独自に最適化。従来比1/50ほどのサイズの小型電池を用い、熱暴走挙動の定量的な解析に成功した。

高感度安全性(熱暴走)評価に用いられた対象電池の重量・容量比較。1/50程度のサイズの電池での簡便な熱暴走検出が可能になり、さまざまな因子による安全性への影響を高速かつ低コストで評価できるようになる

資料提供:東京大学大学院工学系研究科

この研究により、数百mgの正極材や負極材、数百μl(マイクロリットル)の電解液など、極少量の原材料を使用した安全性評価が可能となった。

同時に定量データの収集が大幅に効率化・簡便化され、安全性に関わるさまざまな設計因子や使用条件による影響のスクリーニングが高速かつ低コストで行えるようになる。

安全性は、あらゆる性能指標に優先される最重要事項である。

今回の研究は、その安全性が高度に担保されたリチウムイオン電池の実現に向けた中核技術として、製品開発、新材料探索、設計初期における安全性定量情報の効率的収集・フィードバックなど電池開発プロセスの大幅な低コスト化・高速化に活用されることが期待される。

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