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フランス発!世界初の水素電池自転車が日本上陸か?

2分以内の充てんで連続航続距離100kmを実現

クリーンエネルギーとして注目を集める水素を動力に用いた電動アシスト機能付き自転車がフランスで開発され、運用が始まった。私たちにとって身近な移動手段の一つ“自転車”の未来を示す最新アイテムを深掘りする。

「水素」が電動アシスト自転車の課題を解決

2月28日~3月2日にかけて東京ビッグサイトで開催された、太陽光発電・風力発電・バイオマス発電など、あらゆる分野の最新技術を持つトップ企業が集結した世界最大級の新エネルギーの総合展「スマートエネルギーweek 2018」。

その中の水素・燃料電池関連イベント「第14回[国際]水素・燃料電池展 -FC EXPO 2018-」に、フランスの水素燃料電池デベロッパーであるプラグマ・インダストリー社が量産型の水素自転車「Alpha Bike(アルファ・バイク)」を出展した。

日本初出展となるプラグマ・インダストリー社の「Alpha Bike」

水素を燃料に発電した電気を利用する電動アシスト自転車で、2017年にヨーロッパでの販売を開始。ヨーロッパにおける品質基準や安全認証を取得、量産された世界で初めての水素自転車で、現在、フランスの地方観光局やデンマークの大学などで約100台が使用されている。気になる値段だが、販売開始間もないこともあり、現状では1台7,000ユーロ、日本円でおよそ90万円するとのことだ。

また現在、フランス郵便局と共にラストマイル・デリバリー(都心部から遠く離れる場所や地形的に孤立している地域への配達)のための新型車を開発中でもある。

「Alpha Bike」は、自然・再生可能エネルギー、省エネルギー、廃棄物管理、土壌・大気汚染防止、騒音対策などを研究する、日本のNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)に該当するフランスの政府機関“ADEME(アデム)”の支援を受けて2013年に開発がスタート。

開発の背景には、既存の電動アシスト自転車が持つバッテリーの盗難などのセキュリティーと走行距離という問題が関係している。特に走行距離については、伸ばそうとするとバッテリーが大きくならざるを得ないというジレンマを抱えていた。これらの課題に対して、同社が持つ水素技術を用いて導き出した答えが「Alpha Bike」というわけだ。

しかし、その実現には2つの大きな壁があった。まず一つが、自転車というツールが野外で使用されるため、振動に耐えうるかなど物理的な難しさがあること。そしてもう一つが、燃料となる水素および燃料電池を非常に限られたスペースに積み込まなければならないことだ。

今回の出展に合わせて来日したピエール・フォルテ氏

同社CEOピエール・フォルテ氏は、「自転車は歩道に上がることもあるなど、車と比べてさまざまシチュエーションを想定しなければならず、考えなければいけないリスクと克服がこんなにも多岐にわたるとは思ってもみなかった」と語っている。

そこで完成した「Alpha Bike」を見てみると、フレーム上部には水素注入口が備えられ、その下に高圧水素タンクを格納。下部には同社が独自開発した燃料電池システムを搭載している。

ここで発生した電気を使って、ペダル内側の36V、最大トルク90N・mのモーターを駆動させる仕組みで、その最高速度は25km/hになるという。

出展された「Alpha Bike」はフレーム部分を公開。限られたスペースに無駄なく最新テクノロジーを収納している

水素を燃料にしたことで、これまでの電動アシスト自転車と大きく異なるのが充てん時間だ。「Alpha Bike」に備えられた高圧水素タンクは、空の状態であってもなんと2分以内という短時間で水素充てんが完了する。すぐに利用できるというのは利便性という点で大きなメリットだ。

加えて、完充てんの状態ではおよそ100kmの連続走行が可能だという。これは現在、日本で販売されている電動アシスト自転車と比べても高スペックである。

また、従来型のバッテリーを搭載した電動アシスト自転車では、電池残量が不正確で走行ルートによって大きく変化していた。しかし、水素を加圧式タンクにストックする「Alpha Bike」は、圧力計で電池残量を計測。“あとどれだけ走れるか”をkm単位で正確に測定し、ステム(フロントフォークとハンドルバーをつなぐパーツ)に備わるデジタルメーターに表示できるという。電動アシストがなくなってしまうとペダルの重い“ただの自転車”になってしまうことを考えれば、正確な走行距離が分かることは利用者の安心感にもつながるだろう。

「多くの人にカーボンフリーの乗り物の体験をしてほしい。幼少期に初体験し、そこから人々の身近に存在する自転車という乗り物に、水素エネルギーを使った『Alpha Bike』はその受け皿となることを期待している」と述べるピエール・フォルテ氏。今後はヨーロッパから日本、アメリア西海岸、日本以外のアジア地域の順に展開を計画している。

次世代エネルギーの本命と目される水素を使った電動アシスト自転車の誕生──。

社会インフラ整備の遅れが指摘されるなど、その実現に向けて厳しい現実に直面している水素社会だが、水素自転車「Alpha Bike」の普及が水素社会実現に向けた起爆剤となるか要注目だ。

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