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道路の維持管理システムを横展開!伊豆急行線で日本初「鉄道版インフラドクター」の実証実験スタート

社会インフラの管理効率化とコスト削減に期待

建築から50年を経過する建造物が増加し、レッドゾーンへと突入するのも時間の問題となっている日本の社会インフラ。より効率的、効果的な社会インフラの維持管理方法の確立が期待される中、鉄道と高速道路を管理・運営する4社がタッグを組み、新たなシステムの構築に挑んでいる。

道路管理システムを鉄道に応用

現在、日本では高度経済成長期に建設された道路やトンネルをはじめとする社会インフラが寿命を迎えつつある。国土交通省が国内の道路トンネル約1万本を対象に調査した結果、今後、建設から50年以上経過する施設の割合は急激に増加し、2023年には34%、2033年は全体の50%が該当すると試算されている。

本来であれば、大掛かりなインフラの維持管理に着手しなければならないが、人口減少による労働力不足や昨今の財政問題が大きな壁になっているのが現状だ。

そこで近年では、これまで人の手で行っていた社会インフラの維持管理を、システム化し効率的に管理する新たな技術開発が多方面で進められている。首都高速道路の高架橋やトンネルなどの構造物メンテナンスのため活躍する「インフラドクター」も、首都高技術株式会社など首都高グループによって誕生した道路維持管理システムだ。



※老朽化した道路トンネルを点検する新手法のシステムに関する記事はこちら

首都高速道路の道路・構造物の維持管理支援に用いられる「インフラドクター」の移動計測車両MMS(モービル マッピング システム)。地理情報システム(GIS:Geographic Information System)と3次元点群データを駆使し、道路・構造物の維持管理を支援する

首都高技術株式会社がアップしている「インフラドクター」の動画

今回、東京急行電鉄株式会社と伊豆急行株式会社は、首都高速道路株式会社・首都高技術株式会社と共同で「鉄道版インフラドクター」の開発着手を発表。道路維持管理システムを鉄道に採用する事例は日本でも初めての取り組みで、すでに伊豆急行線全線で実証実験がスタートしている。

東急グループの伊豆急行線は、1961(昭和36)年12月に全線が開業。同線内にはトンネルが31カ所、橋梁(きょうりょう)が173カ所と構造物が多く、かつ開業から50年以上たっていることもあり施設の老朽化も著しい。また、都心部を運行する東急線と比べて終電から始発までの時間に余裕があることから、実証実験の地に選ばれたという。

実証実験が行われている伊豆急行線全線(伊東─伊豆急下田間45.7km)の対象区間

実証実験では、レーザースキャナや全方位カメラを搭載した移動計測車両 MMS(モービル マッピング システム)を鉄道台車に装着。軌道を走りながら、レールの形状やトンネルの内面形状、橋梁の上部形状、レール周辺の斜面、プラットフォームの形状などをレーザー計測していく。

鉄道版インフラドクターで行われる実証実験イメージ

鉄道版インフラドクターは従来タイプと同様、レーザースキャナで取得した3次元点群データと、同時に取得する映像などをクラウド上で一元管理できることが特徴。また、全方位動画の閲覧や3次元での寸法計測など必要に応じて切り替えられるため、現場の状況を離れた場所からでも瞬時に確認できる。

これにより、異常箇所の早期発見につながるとともに、構造物の3次元図面作成や個別台帳で管理してきた図面、各種点検・補修データの一元管理が可能に。加えて、構造物点検の作業、維持補修計画の立案などにかかる人的コストも削減でき、維持管理効率の大幅向上に期待が寄せられている。

なお、東急・首都高の両グループは、今年度中に伊豆急行全線に加えて東急線内でも実証実験を予定。さらに、実験を通じて計測・運用方法や精度をさらに向上させ、鉄道の新技術として事業化を目指すとともに、空港など他分野でのインフラ管理技術開発にも乗り出す構えだ。

本格的な超高齢化社会を迎える日本では、今後より多くの分野で人に代わり一元管理されたシステムが作業を担うケースが増えると考えられる。効率的かつ安全面の向上につながる技術の早期確立に向けた企業の取り組みに期待したい。

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