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リチウムイオンの次はこれ!? 低コスト化が期待できるカリウムイオン電池の実用化に前進

新たな正極材開発に成功し、大型蓄電池の本格普及に備えた資源の制約がないカリウムイオン電池の実現可能性も見えてきた

自動車や電化製品業界で新たなエネルギー源として期待が寄せられ、ことしワードが頻出している全固体リチウムイオン電池。しかし、材料となるリチウム(アルカリ金属元素の一つ)は資源が偏在し、安定供給とともに埋蔵量に課題があるといわれる。そのため、資源的に余裕があり、低コストとなる他のアルカリイオンをキャリアとする蓄電池が注目を集めている。その一つがカリウムイオン電池だ。その実用化に向けて研究に取り組む日本企業の最新情報をご紹介する。

理論計算で事前の候補化合物の絞り込みに成功

携帯電話やノートパソコンの充電池として使用されるなど、私たちの暮らしと切っても切れない存在であるリチウムイオン電池。

現在使用されている他の二次電池であるニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル水素電池と比べて、エネルギー密度が高く、大きな出力を得ることができる上、寿命も長いなどメリットが多い。

しかし問題もある。その一つが資源の枯渇だ。

原料のリチウムは、南米大陸のアンデス山脈沿いに偏在しており、世界の埋蔵量は現在、推定で1300万tといわれている。近年、自動車業界のEV(電気自動車)化の流れもあり、リチウムの需要は年々上昇。2020年には29万~40万tのリチウム需要が見込まれている。

仮にこのまま需要に応えるペースでリチウムの産出が続いた場合、あっという間に枯渇してしまう恐れもあるのだ。また、リチウム価格の高騰も懸念材料に挙げられている。

そのため、大型蓄電池の本格的な普及には、リチウムイオン電池と同等の性能を持ち、かつ資源量や価格面の課題をクリアした新たな蓄電池の誕生が不可欠となる。そこで注目されているものの一つがカリウムイオン電池だ。

強い反応性のため自然界からは単体として産出されないカリウムだが、化合物であるK2O(酸化カリウム)換算での年間生産量は3500万t、推定埋蔵量は180億tといわれる。カナダやロシア、ベラルーシなど北半球を中心に豊富に存在するため、生産の低コスト化も期待できるなど、リチウムイオンに続く次世代蓄電池素材なのだ。

そうした中、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)と立命館大学、中国の南京郵電大学らの研究グループが、9月下旬にカリウムイオン電池用の4V級酸化物正極材料を新たに開発したことを発表。大きなトピックとなった。





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※ソフトバンクが参入し、2025年の実用化を目指す究極の二次電池「リチウム空気電池」に関する記事はこちら

研究グループが合成した材料の一例(左)とカリウムイオン電池の原理図(右)

画像提供:産業技術総合研究所

カリウムイオン電池用正極材料の作動電位は、現在までに金属錯体(さくたい/分子の中心に金属、金属イオンが存在し、それを取り囲むように非共有電子対を持つ配位子と呼ばれるものからなる化合物)や配位高分子と呼ばれる物質群の一種であるプルシアンブルー系で4Vを達成している。

しかし熱安定性に優れる、より信頼性の高い酸化物材料では3V程度にとどまっており、今後、さらなる高い作動電位を示す新しい酸化物材料が求められていた。

そこで研究グループは、これまでに産総研が発見した120を超えるカリウム含有複合酸化物について精密な結晶構造解析を行い、酸化物の結晶構造を決定。その構造からカリウムイオンの拡散障壁(拡散過程を妨げるポテンシャルの最低値)のエネルギーを計算した。

さらに拡散障壁が低い化合物群については理論計算によって、リチウムイオン電池に使われる正極材料と同等となる4V程度の作動電位を示す複合酸化物群を導き出した。

今回開発した新たな正極材料が持つ層状構造の結晶構造とカリウムイオン拡散経路を示したモデル図

画像提供:産業技術総合研究所

高い作動電圧を有する複合酸化物群の仕組みが確認できた意義は大きい。

なぜならば、他の化合物に置き換えた上で、より良い組み合わせを目指してさらなる検証が進められるためだ。

新規正極材料K2/3M2/3Te1/3O2の作動電位の実測値。既存の正極材料と比べて作動電位が高いことが一目瞭然だ

画像提供:産業技術総合研究所

その中で考えられる一つの可能性が、電解液に代わる固体電解質として全固体電池へ流用すること。

もしも作動温度が室温に近い材料を開発できれば、全固体カリウムイオン電池の誕生も夢ではない。

カリウムがリチウムにとって代わるポテンシャルを示したことで、資源の制約がないカリウムイオン電池も現実味を帯びてきた。

近い将来、大型蓄電池が本格的に普及する時代が訪れたとしても、備えあれば憂いなし。私たちが安定してエネルギーを享受できる未来に向けて、今後の研究加速に期待したい。

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