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運用コストを7割も削減!岐阜大学が地中熱の有効活用を促進させる実証実験に成功

地中熱利用に適したエリアの特定&新システム採用で、普及のハードルが下がる可能性大

日本中で活用できる豊富なエネルギー源である“地中熱”。省エネやCO2削減効果が高い一方で、運用コストやより条件の良い設置場所の特定方法など、普及に向けて克服すべき課題も多い。そうした中、岐阜大学をはじめとする研究グループは2月7日、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業において、これらの課題克服に期待が高まる実証実験結果を発表した。既設システムに比べ、大幅な運用コスト削減を実現させる取り組みをご紹介する。

地下水の影響で地下温度が変動する条件有利地域初の実証実験

太陽光や風力などと並び、再生可能エネルギーの一つとされる地中熱。浅い地盤に存在する低温の熱エネルギーである地中熱は日本中の至るところで利用できる自然エネルギーだ。地中熱は地下10m以深では、地下温度が年間を通じてその地域の平均気温とおおよそ一致するという特徴がある。

地中熱の一般的な利用方法として、地中熱交換器が取り出した熱をヒートポンプで移動させて、室内の冷暖房に使用する地中熱利用空調システムがある。このシステムは、他の再生可能エネルギーと比べてシステム機器の設置場所に対する制約が少なく、安定供給を見込めるのが大きなメリットだ。

従来、地中熱利用空調システムに採用されている吸収式冷温水機の原理。“蒸発”“吸収”“再生”“凝縮”の4サイクルで冷水および温水を得る仕組み

現在運用されているシステムは、地中熱交換器を地中に埋め込み、水や不凍液を循環させるクローズドループ方式と呼ばれるものがスタンダード。これは地中熱交換器と周囲の地層との間の熱伝導による熱交換を行う方式であり、設置や維持管理に多額のコストがかかるという問題が存在する。そのため、広く普及が進んでいるとは言い難い状況といえる。

一方で、場所によっては地表とは反対に、夏季は低く、冬季は高い地下温度を示すエリアが存在する。これは、夏季の温かい河川の水や冬季の冷たい河川の水が地下に浸透し、温水塊(かい)や冷水塊が時間をおいて地下水路が到達することに起因している。

このような地下温度に影響を与えるほどの地下水脈を持つ“条件有利地域”においては、より高効率な熱利用が期待できる半面、複数の河川や旧河川が入り乱れて地下水の流れも複雑になっていることが多い。そのため、高精度で条件有利地域を割り出すには、複数のボーリングを用いた密度の高い調査を複数地点で行う必要があり、条件有利地域の抽出は十分に行われていなかった。また、これまでに地中熱利用空調システムを導入して実証した事例もないのが現状だ。

これらの複合的な要因から、地中熱利用の促進にはシステムの高効率化などによるコスト削減と、より効果的に活用できる条件有利地域を正確に特定する新たな手法が求められていた。

岐阜市内の公民館建屋に導入された地中熱利用空調システム

こうした背景の中、岐阜大学はNEDOの事業において、東邦地水(株)やゼネラルヒートポンプ工業(株)、(株)テイコクと共に、岐阜県・長良川扇状地の条件有利地域を特定。

同地の地下水を直接活用するオープンループ型地中熱利用空調システムを岐阜市内の公民館建屋に導入し、実証運転を実施した。

今回、実証実験が行われた長良川扇状地。多数のボーリングを用いて地下水の流れを正確に把握するとともに、図中の丸印の地点で実証実験を行った

実証実験のポイントは2つ。
 
まず一つが、地中熱利用空調システムにくみ上げた地下水の熱を地表にあるヒートポンプで空調熱源として活用するオープンループ方式を採用したこと。これは地下に埋設した熱交換器から間接的に取り出した熱を活用するクローズドループ方式とは異なり、地下水熱を直接活用するのが大きな違いとなる。

加えて、研究グループのメンバーである東邦地水とゼネラルヒートポンプ工業が、システムに組み込まれる地下水逆洗運転システム(くみ上げた地下水の流れの方向を変え、くみ上げ配管内部のストレーナ周囲に付着したゴミなどを除去しながら運転する仕組み)や地下水熱交換ユニットを新たに開発し、効率化が図られた。

もう一つが、浸透ますによる適地選定技術の確立。テイコクが、地盤条件によってはさらに安価なシステムの構築を実現するため、浸透ますによる適地選定技術を開発。地表に設置し、水を地下に浸透させる設備である浸透ますは、一般的に雨水に対して用いられる技術なのだが、これを熱交換後の地下水還元に応用することで、より低コストでのシステム構築に成功した。

オープンループ型地中熱利用空調システムを活用した条件有利地域(長良川扇状地)での地下水特性利用イメージ

この結果、既設の吸収式冷温水機による空調システムと比べて、ヒートポンプの高効率化で31%、地下水熱交換ユニットによるポンプ動力削減の効果で42%、合計73%という大幅な運用コストの削減に成功した。これにより、今後は複数の河川や旧河川が存在する地域であっても正確に条件有利地域を特定し、地中熱を効果的に利用できるようになる見込みだ。

岐阜大学とNEDOは引き続き、条件有利地域におけるオープンループ型地中熱利用空調システムの稼働データモニタリングおよびシステム効率など検証を行っていく。併せて、同システムの普及に向けて、条件有利地域マップの作成を進め、将来的な地中熱の効率活用を目指していく計画だ。

私たちの周りに存在する未利用のエネルギー資源。持続可能な社会の実現に向けて、今後もまだ見ぬエネルギーの可能性を見いだす研究のさらなる発展に期待したい。

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